第698話 【地上チーム・その6】お正月だよ! 逆神六駆のダウングレード!! ~働き過ぎた六駆くんに半端な大金を与えてしまったばっかりに~

 逆神六駆、ラッキー・サービスを退ける。

 彼にしては珍しく苦戦をしたものの、終わってみれば味方に被害を一切出さずに敵の総大将を無力化して見せた。

 限りなく理想的な展開と評して問題ないだろう。


 最強の名は折れず、譲らず。


 地上に降りた六駆くんの元へ、サーベイランスが飛んで来た。

 山根くんが喋る前に、興奮気味に報告する綺麗なおじさん。


「山根さん!! 見てました!?」

『見てたっすよ! さすがっすねー!!』



「あの!! これで1億もらえますか!? その場合、僕は仲間を連れて早退しますけど! 木原さん来たし!! で、もらえるんですか!? ねぇ! 1億円!!」


 おや。逆神六駆の様子が。



『ちょ、ちょっと待って欲しいっす! まだサービスの生体反応も煌気オーラ反応も余裕で検知されてるんで! というか、気絶すらしてないっすよ! 一時的に煌気オーラの揺らぎがものっすごく不安定になってるから、当分は出てこないっぽいっすけど』

「……つまり?」


『あー。少々お待ちくださいっす。楠木司令官!! ……はい。……いえ、それやると帰っちゃいますね。自分、結構付き合い長いんで。うっす。ちょっとだけ汚くなってきてるっす。うっす。いやー。大丈夫っすかね? 緊急時、ああ、はい。んー。相当怖いっすけど、了解っす』


 たった今、本部で極めて高度でセンシティブな議論が超スピードで行われました。


『逆神くん』

「とりあえず、親父置いて行きますから! 本部に戻って良いですか? 疲れちゃって! その後すぐに莉子たち回収して!」


『2千万! 2千万っす!! サービスの無力化、非常に評価されてるっす! とりあえず、2千万ゲットっすよ! いやー! おめでたいっすねー!!』

「……ちょっと待ってくださいね。考えます」


 綺麗になっていた影響で、頭の回転が速くなってしまった六駆くん。

 莉子ちゃんやクララパイセンの力を借りずに脳内でそろばんが弾けるようになっていた。


 深刻な表情で六駆くんは言葉を絞り出す。


「山根さん。楠木さんに伝えて下さい。引き続き、僕は日本お金、いや、世界お金のために戦うと!! 愛する全てお金のために!! 愛してるんです!! ところで、サービスマンさんはデッドオアアライブですか?」

『……できれば、デッドを避けてもらえるっすか?』


「了解しました! では、仲間たちの治癒に向かいます!! うふふ!! 『瞬動しゅんどう』!!」


 元気に高速移動する六駆くん。

 敏腕オペレーター山根くんが呟いた。

 彼の分析力はワールドワイドな視野で評価しても相当に高い。


『なんでこんな時にいないんすか、南雲さん……!! 逆神くんが……!!!』


 砂時計は全ての砂が流れ落ちたあと、ひっくり返す必要がある。

 そしてひっくり返してから再度砂が落ち切ったらば、やはり同じことを繰り返す。


 人生は砂時計なのかもしれない。


 ひょっとすると、そろそろ綺麗な砂がなくなるのだろうか。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 すごい速さで駆け寄って来た六駆くん。

 全員の様子を見て、すぐに処置へと移る。


「クララ先輩! 消耗してますね!! 一発刺しときましょうか!! 大丈夫です、すぐ終わりますから!! 痛くないですよ?」

「にゃはー! 莉子ちゃんいなくて良かったにゃー!! そしてものっすごく久しぶりに六駆くんの煌気オーラぶち込まれるんだけどにゃ? つまり、まだまだ仕事させられるんだにゃ?」


 喋っている間に六駆くん印の新鮮な煌気オーラが『注入イジェクロン』でクララパイセンの太ももにぶっ刺された。


「あらやだ! 芽衣は深刻だ!! 見てたんですよ、さっきの『ダイナマイト』を! 僕が駆けつけられなかったせいで、無茶させちゃいましたねー。けど、芽衣は強くなったなぁ!」

「セリフだけだとすごくいい師匠なのに、無言で高1女子のショートパンツ捲って、両方の太ももに具現化したナイフ刺すとか、もう絵面がサイコパスのそれだにゃー! 木原さんもいなくて良かったぞなー!!」


 その木原さんはどこに行ったのかと言えば。


「あ! 逆神くん!! 良かった! 助かりました! 報告が、あぅ!」

「に゛ゃ゛-! もうやりたい放題!! 人妻にまで注射してるぞなー!! 事前に説明して、山根さんの許可取ってからにするべきだぞなぁー! あたしに常識語らせるとか、たいしたもんだにゃー!!」


 楠木司令官の判断はやむを得なかった。


 2千万と言う、少なくないけど思ってたよりは全然足りない金額が六駆くんの効率をより加速させ、もう不必要な事をカットするだけに飽き足らず、必要なマナーもカットし始める。


 それだけだと思いたい。

 ただ、最善策をより最短ルートで選択するようになっただけだと。



 描いた夢はかなわない事の方が多い。

 平井堅さんが歌っていました。



 が、とりあえずメンバーの煌気オーラ補充が完了。

 続けて『気功大風膜メディラドーム』を発現。

 効果範囲を広げ、治療の速度も上昇させ、多人数の負傷を同時回復できる。


 最近覚えた、限りなく極大スキルに近い高等治癒スキル。


「あ。クララ先輩と芽衣は装備がちょっと裂けてますね。特にクララ先輩、胸のとこがざっくりいってますよ。これ、インナーなかったら胸が丸出しですよ! いやー! 良くないなぁ、若い子が!! 直しときます! 『修繕工房パッチワークル』!!」


 流れるように処置をしながら、1度として乙女たちの許可を取らず「やりますよ」と言うだけで事を済ませていく六駆くん。

 おじさんには「若い子に説明するより俺がやった方が速いから!」と何もかも時短する必殺技を習得するタイプが存在し、場合によっては助かるが、相手が異性でデリケートな部分に突っ込んでいくと令和のご時世、最悪ハラスメントとコンプライアンスに挟撃される。


「はい! 直った!! じいちゃんに教えてもらったんですよ! 装備の修復スキル! これ、構築スキルの亜種なんで! ただ、女の子の服ってね、なんかほら! 色々と生地厚くなってるとことかあるじゃないですか! そういうの把握しなくちゃいけないから、山ほど女物の服を観察しましたよー! 裏地とかね! ほら!!」

「うんうん、よく分かるにゃー。ちょっと待ってにゃー」


 クララパイセンも久しぶりに察知した。

 どら猫が鳴きます。



「莉子ちゃんいなくて、ほんっとーに良かったにゃー!!! だって! 女の子の服の裏地とか!! 莉子ちゃんの体形だとあんまり……ほぼ……全然必要ないもんにゃー!!! そうなると、誰の服を観察したのかとか、そもそもミンスティラリアにずっといたから確実にチーム莉子の誰かが被害受けるとか、色々アレだにゃー!!! 芽衣ちゃんは意識取り戻してるのに、薄目で様子伺ってるしにゃー!!! 小鳩さーん!! 助けてー!!」

「み゛っ……」


 これから忙しくなりそうですね、椎名クララAランク探索員。



 傍で黙って見ていた春香さんは「そろそろ良さそうです」と判断して、再度報告を試みる。


「あの! 木原監察官が独りでさっきから戦っているんですけど!! 拮抗状態です!! 逆神くん、援護してあげてくれませんか!!」

「えっ? 木原さんが? 敵ってそんな強いんですか? なんかロボっぽいヤツでしょ? さっき飛んでた雷門さんみたいなヤツ! あれにそんな苦戦します!? 雷門さんですよ? 攻撃方法の8割が石投げるとか言う、原始的な。えっ!?」


 六駆くんはサービスを相手に集中していたので、味方の煌気オーラには気を配りつつも敵に関してはほとんど無視しています。

 しかも味方の治癒優先で色々やっていたので、ちょっと首の角度変えたら色違いの木原コピーがはっちゃけているのに全然気づいていませんでした。


 どら猫、ちょんちょんと六駆くんの肩を叩いた後に指をさす。


「うわぁ! なんですか、あれ! どっちが木原さんですか? 僕が知らない間に緑色になりました?」

「そっちは敵です!! あと! あっちに倒れているヤツが爆発しそうなんです!!」



「えっ!? 木原さんって爆発するんですか!?」

「みみっ。さすがに寝たふりしてられなくなったです。六駆師匠、下手するとスカレグラーナに出張してた頃くらいまでアレしてるです。みみみみっ」


 優秀なツッコミ役が再ログインしました。



「うぉぉぉぉぉん!! やるじゃねぇのぉよぉ!! ダイナマイトォォォォォォ!!!」

煌気オーラ測定完了。出力上方修正ののち、ダイナマイトを左拳で発現」


 木原監察官とγ型、互角の戦いを繰り広げていた。

 加賀美監察官代理が編成した防壁部隊が頑張っているのでどうにか周囲への被害は出ていないが、爆風だけで豊満ムチムチΘ型の残骸が飛び散っている。


「あれ!? 木原さん、なんか理性的な喋り方になりましたね!!」

「み゛っ。マジでそれならどんなに良かったかよぉ、です。み゛っ」

「楠木さん! 六駆くんにお金あげるの早すぎだにゃー!! どうするんだにゃー!!」


 サービスとの激闘を経て、なんか汚くなってきた六駆おじさん。

 しかも、そろそろα型が爆発しそう。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 本部では楠木司令官が「私は、今回の戦いが終わったら全責任を負い退役しようかと思います……。取り返しのつかない過ちを……。日本探索員協会に現れた彗星を、私は……!!」と頭を抱える。


 続けて、後方総司令官はポンと手を叩く。


「妙案を閃きました。福田くん。ストロングゼロを頂けますか」

「かしこまりました」

「いや、かしこまっちゃまずいっすよ!? 南雲さん!! いつまで産婦人科で妻に親身チャオってるんすか……!!」


 逆神六駆、現在OSのダウングレードが進行中。

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