第695話 【地上チーム・その4】芽衣ちゃんの『ダイナマイト』!! 感動に打ち震えるオリジナルの脳筋!! ~芽衣ちゃんはログアウトしました~

 加賀美政宗Sランク探索員。


 まだ20代にして3人の子供を育てるイクメンであり、その実直で己に甘えを許さないストイックさと、一転して他者に惜しみなく与える慈悲深さは多くの探索員から信頼を集めており、月刊探索の「理想の旦那ランキング」では2年続けて1位を獲得。

 なお、南雲修一監察官が今年のランキングで上位に食い込む事が予想されている。


 自分の結婚式でうっかり無礼チャオった影響がどこまで票の喪失に影響するかが注目ポイントで、加賀美さんの3連覇に待ったをかけられるのか。

 未婚者も投票対象なので、あっくんや和泉さん辺りに負けそうな気もする。


 他にも「パパになって欲しい探索員」「厳しく指導されたい探索員」「早く監察官になって欲しい探索員」部門でも1位を獲得し、今年の月刊探索員・年末特大号を見たくないと言って隙をつけけると号泣する雷門監察官を介護する姿は、多くの女子探索員から好評を得ている。


「各員! 指揮官である土門佳純Aランク探索員の指示に従い、間違っても戦闘領域には立ち入らないようにして欲しい!! 君たちの仕事は一般人を守るため、大変重要な任務だ!! しかし、君たちの命を守る事が最重要任務と心得てくれ!! 有事の際には自分が出る!! ゆえに、無理はしない! 無理だと思えばすぐに撤退!! その判断で評価が下がる、あるいは罪に問われるような事には絶対にさせない!!」


 久しぶりに登場した加賀美さん。

 前よりも少し厳格になっており、前よりもさらにイケメンになっていた。


 同じ一人称のおっぱいジャンキーと差別化が進んで大変助かる。


「全員に【稀有転移黒石ブラックストーン】携帯の許可を出す! 自分が全責任を取るので、作業を終えた者、危険を感じた者、少しでも負傷した者は躊躇わず使うように! 既に煌気オーラは自分と雷門監察官によって込められているため、わずかな煌気オーラを反応させるだけで自動的に本部の転移座標へ帰還可能だ!! では、土門さん! 後を頼む!!」

「はい!! 任せてください!!」


 防衛部隊の数を割いたため、部隊派遣を見送った加賀美さん自身もイドクロア竹刀を用意して何かあればすぐに動ける準備を整える。


「……雷門さん。そろそろ落ち着きましたか?」

「う、うん。せやかてぇ、私がぁぁ、なんかぁ、たくさんお空を飛んでてぇ!! 私が使えない極大スキルでなんかぁ、空襲しててぇ!! あれ、絶対に私じゃないのにぃ! う、うぐっ、うっぐ」


「落ち着いてください! 自分もちゃんと証言しますから!!」

「う、うん。あと、御滝ダンジョンの方にいた私がさ、水戸くんに酷いこと言われててぇ! 私、彼と2回一緒に飲みに行ったことあるのにぃ! ストウェアに迎えに行ったこともあるのにぃ!! せやのに、水戸くん、全然絡みないとか言うとってぇ!! そんなんあんまりやと思うやんかぁ!! うぐ、うっぐ」


「雷門さん!! この戦いが終わったら、うちに遊びに来てください。上の子が幼稚園で探索員ごっこしているそうなんですよ。きっと、雷門さんはヒーローに見えますよ!!」

「加賀美くぅぅん!! 私、わた、うっふ、私はぁぁぁ!! なんか最近、扱いがあんまりにも酷くてぇぇぇぇ!! けど、君だけは優しいからぁ!! もう、もうこのまま君の部下になってもいいとかぁ! 本気で思っててぇぇ! 平山くんなんかは、前代未聞の抜け忍みたいなこと普通にするしぃぃぃ!! もう私ぃ、監察官やりたくなはあああんふぅぅぅぅ、うぐぶぅぅぅぅん、な゛っ!!」


 加賀美政宗監察官代理、お疲れさまです。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「に゛ゃ゛-!! まずい、まずいぞなぁー!! 『グラビティアロー・虹色七矢アルコバレーノ』!!! あ゛。ダメだにゃー。足止めにすらなってないにゃー」

「ううん! よく見て下さい、クララちゃん!! ちょっとだけ歩きにくそうですよ!!」


「春香さんの慰めが最後に聞く言葉かもだにゃー。人妻なのにピチピチのスーツで戦うお姉さん、アリだにゃー!! 冷蔵庫のエビスビール飲んどけば良かったぞなぁー」

「ううーっ! 近距離じゃないと戦えないのに、私のレベルじゃ近づいても邪魔になるだけ……!! もっと鍛えておけば良かったです……って、芽衣ちゃん!?」


 脳筋が2機、『ゲート』に向かってゆっくりと距離を詰める。

 クララパイセンが必死の応戦中だが、さすがに相手との力量差が大きすぎた。


 極大スキル(まであと少し)を使う手もあるが、それが無意味だった場合はサポートすらできなくなるため、割と絶望しながらも煌気オーラ配分に関してクレバーなどら猫さん。


 2人の横では芽衣ちゃんが「み゛み゛み゛」と煌気オーラをチャージし続けていた。

 既に3分にも及ぶ蓄積で、女子高生の左手が光を放っている。

 芽衣ちゃんは煌気オーラ総量が多くないため、その全てを1点に集中させていた。


「み゛み゛み゛み゛み゛み゛み゛っ!!」

「落ち着くにゃー!! 芽衣ちゃん、突っ込んだらダメぞなー!! 六駆くんが来てくれるにゃー!!」


 実際、その六駆くんは既に向かっていた。

 が、背中を向けるとサービスが『サービス・セット』を放って来る。


 『サービス・タイム』と違い、『サービス・セット』は被弾しなければ効果が発現しないので回避すれば良い。

 が、言うは易く行うは難し。


 弾道と弾速を変化させ、しかも足の先や腕などの急所ではない部位を狙う狡猾なサービスはかなり厄介。

 既に六駆くんは太ももに一撃喰らっており、左足の付け根から先に煌気オーラが循環していないためスキル発現すら困難な状態。


 20秒ほどで効果は切れるが、サービスを止めないまま援護に向かうと、時間停止ものの薄い本みたいな事を練乳野郎にされてしまうため結果的に状況がより悪化する可能性の方が高い。


 全てが計算通りであるとすれば、ライアンの先見性と彼の残した指示書を適切に運用しているエルメスの有能さが際立つ。


「み゛み゛み゛み゛み゛み゛み゛み゛っ!! これは使いたくなかったです。イメージ最悪だからです。でも、この前、師匠に言われて試してみたら、できちゃったのです……。芽衣は、自分の好き嫌いと大事な仲間の命を天秤にかけるようなバカな子じゃないです!! そんなの比べる前に答えは分かってるです!! み゛み゛み゛み゛み゛み゛っ!!」


 ライアンに誤算があるとすれば、日本本部は想定を超えることにかけて高い信頼性を誇る事を知らない点か。

 芽衣ちゃんの左手が真っ赤な煌気オーラで満たされると、大きく振りかぶる。



「み゛っ!! みみぃ……。『ダイナマイトォォォ』!!! み゛み゛み゛み゛み゛っ!!」


 紛れもなく、木原久光監察官の放出型『ダイナマイト』であった。



 ついにおじ様の代名詞を習得してしまった芽衣ちゃん。

 チャージにかなりの時間を要する上に、1度撃つと煌気オーラは完全にガス欠。

 制限が多すぎて六駆くんからも「これは芽衣が使うには早すぎるね」と止められていた。


 その時の芽衣ちゃんは「み゛っ。じゃあ、なんでやらせたのか謎です。師匠、ついに芽衣にもハラスメントを!!」と思ったが、今、綺麗なおじさんの真意を理解する。


 「自分ができる事をできると認識していれば、いざという時に役立つよ」と六駆くんは親指を立てて、歯を光らせながら言っていた。

 ポーズがおじさんみに溢れていたためなんだか心には響かなかった芽衣ちゃんだが、ちゃんと言われた事は覚えていた優等生。


「あっ!? 艦橋! α型が! えっ!? 被弾! 煌気オーラエンジン破損!! どんどん出力落ちてます!! 嘘でしょ、なんなのあの小さい子。やだ、可愛いです……!!」

「必要のない感想が混じってます。γ型を先行させてください。α型は煌気オーラの流出を最小限にして後詰を」


 γ型、カッと目を開くと無言で走り始める。

 オリジナルのように叫びながら来られるのも怖いが、無言で高速移動して来る脳筋の恐怖も筆舌に尽くしがたいものがあった。


「にゃにゃー!! 芽衣ちゃん、しっかりだにゃー!! 死ぬときは一緒だにゃ。おっぱいでもお尻でも、好きなとこにくっ付いていいぞなー」

「ちょっと待って! クララちゃん! すっごい煌気オーラ反応が!!」


 門から脳筋が出現した。

 こっちのゴリラは喋るし考えるし、あと叫ぶ。


「うぉぉぉぉぉぉぉん!! うちの芽衣ちゃまがよぉぉぉぉぉ!! オレ様のスキルをよぉぉぉぉぉぉぉ! この喜びの邪魔すんじゃねぇぞぉぉぉ!!」

「……対象補足」


「イケボでクールに喋ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!! 『ミラクルゥゥゥ・ダイナマイトォォォォォォォォォ』!!!」



 木原久光監察官、愛する姪の芽衣ちゃまのピンチに馳せ参じる。



 芽衣ちゃまがダイナマイトを習得した事による感激がオリジナルゴリラの眠れる力を呼び起こした、『ミラクル・ダイナマイト』。

 γ型をチクワの真下まで吹き飛ばす。


「芽衣ちゃまぁぁぁ!! ごめんねぇぇぇ!! 怖かったねぇぇぇ!! 逆神ぃ、中継見てたぞぉぉ!! おめぇ、そんなヒョロイ野郎なんかへし折れよぉぉぉ!! おめぇはデキるヤツだろうがぁぁぁ!! 今なら、芽衣ちゃまの体育祭の写真を1枚やるぜぇぇぇ!! おめぇは違いの分かる男だもんなぁぁぁ!! 一緒に見ようぜぇぇ!!」


 黙っていれば芽衣ちゃまのおじ様評価が上がったかもしれないのに。


「み゛。うぜーです……。み゛……み゛……」

「うにゃー!! 芽衣ちゃん!! しっかりだにゃー!! あ゛っ、いたた! ちょ、なんであたしのおっぱい握りしめて気を失うんだぞなー!? いた゛っ! 起きてにゃー!!」


 木原芽衣Bランク探索員。

 きっちりとチームの危機を救い、ストレスがマックスになったので精神安定のためにログアウトする。


 しばらくゆっくりとおっぱい掴んで休んで欲しい。

 だってパイセン、さっき好きなところにくっ付いて良いって言ったし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る