第692話 【地上チーム・その1】逆神六駆VSダイナマイト砲 ~どら猫、増える~

 戦艦・チクワの格納庫では鎮火作業が一段落。

 クロエ・マッカーシー調律人バランサーが新しいウォッカの栓を空けた。


「こちら格納庫。完全に消火活動終わりました。残存しているコピー戦士は遠隔操作タイプの脳筋ゴリラα型と、充填率70パーセントの脳筋ゴリラγ型。同じく50パーセントにギリギリ足りていない脳筋ゴリラΩ型です。艦橋、どうぞ」

『お疲れさまでした。クロエ調律人バランサー。敵の転移スキルはあの光っている門だと判明しています。先ほどのハーパーによって防御の壁が壊せましたので、好機ですね』


「あの。私、たった今ですよ? 服も来てないゴリラを操縦して消火作業してたの。嘘でしょう? 休憩もなしですか?」

『あー。こちらから、上位調律人バランサーの出撃が可能です。その前に、あの門に向かってフルチャージの砲撃を1度だけお願いします。ライアン様の私物に日本のワンワン写真集がありましたので、至急そちらに送ります。それ肴に、終わったらウォッカ飲んでいて結構ですので』



「……紀州犬は載っていますか? モフモフした冬毛の子が良いです」

『表紙です』



 クロエは立ち上がると、酒瓶を乱暴に置いてから端末を操作した。

 脳筋ゴリラα型の口に煌気オーラが充填され始める。


 プロトタイプがミンスティラリアを焦土と化したが、こちらはプロトタイプのバージョン3号。

 操縦される前提のものなので、暴走はしない。


 そう言う前提をすると、じゃあ残った型式は暴走するんですねと判断されるかもしれないが、私はクリスマスの朝に目を覚まして、枕元にプレゼントがあるかワクワクしていた頃の心を捨てない諸君が大好きである。


 蓋を開けるまで、中身の予想をしないでください。

 揺すったり、重さで「あ。これ、今年も図書カードだわ。なんでうちのサンタ、Google playカード買わねぇんだよ」などと冷めた対応をする人のところには、サンタクロースは来てくれません。


 何をしたって今年もサンタクロースは来なかったと言う声が聞こえます。

 では、一言だけ。



 私は休みのはずなのに一晩中仕事してました。



 クロエが照準を門に定めると、「ダイナマイト砲、発射します」と事務的な報告をしてから端末のボタンを2つ押した。

 「うぉぉぉぉぉぉぉん!!」と言う滅びの叫びと共に、圧倒的な煌気オーラ砲が放たれる。


 ボタン戦争。

 それは技術の発達ゆえ、やむを得ない進化なのかもしれない。


 だが、決して容認するべきではないものである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 豊満ムチムチΘ型を全て始末した地上チーム。

 特に対空迎撃を1人で担当していたクララパイセンは疲労が見られる。


「みみみっ。クララ先輩、大丈夫です?」

「にゃはー。なんか自分を撃ってたら途中から楽しくなって、ついつい夢中になっちゃったにゃー。ちなみに弱点は左のおっぱいのちょっと下にあるホクロだったぞなー!!」


 精神的には余裕の元気。


「2人とも!! 敵戦艦から……!! いや、ちょっとこれ!! まずいかもです!!」


 普段はオペレーターをしている春香さん。

 煌気オーラ感知は芽衣ちゃんよりも優れており、すぐにダイナマイト砲発射を悟る。


 が、悟ったところで割とどうしようもない事実。


 ミンスティラリアで暴走した同型機と兵装は同じであるため、コントロールされたダイナマイト砲は驚異の脅威の絶望ヤベぇ超えてもうダリぃ

 分かっていてもどうする事もできない。


「と、とりあえず退避!! 3人で頑張っても無理です!!」


「にゃにゃー! でも『ゲート』を壊されると結局、あたしたち3人でこれから戦う必要に迫られるぞなー!? それはそれで詰んじゃうにゃー!!」

「みみっ。なんか腹立つ煌気オーラなのがとても腹立つです。み゛っ」


「クララちゃん冷静!! 芽衣ちゃんに至ってはなんか、立ち向かいそう!! ダメだよ、私が1番年上なんだから言うこと聞いてください!!」


 春香さんの説得は必死だった。

 そのため声が大きくなり、サーベイランスがそれを拾う。

 六駆くんの隣に浮遊していたのは幸運だった。


「はいはい! 了解!! ふぅぅぅぅぅぅんっ!!」

「ふん。もうその手は喰らわんぞ。知恵を持つ者よ」


「そぉい!! 『貸付逆神大吾煌気レンタラオハイセツブツ』!!! うわぁ! 僕も心にダメージ受けてる!! でも緊急事態!!」


 禁断のスキルを使った六駆くん。

 転がっている大吾から煌気オーラを『吸収スポイル』で吸い上げ、そのまま産地直送、新鮮な大吾煌気オハイセツブツをサービスの体内に打ち込んだ。


「ぐ、ぐ、ぐぁぁ!!」


 皮肉な事に、初めて確実にダメージを与えたと認識できた攻撃が親父由来であった。

 六駆くんは地上に向かう。


「よいしょー!! 『竜翼ドラグライダー二重ダブル』!!」


 4枚の翼を羽ばたかせ、3人の乙女の前に到着するも眼前にはたった今放たれたダイナマイト砲が迫っていた。


「みみっ! 師匠です!!」

「間に合った! 誰か、防壁スキルをお願いします!!」



「わ、私は使えません!」

「しょっぱいヤツなら出せるにゃー!!」

「みみみっ! 芽衣もです!!」


「ははっ! 僕、チーム編成ミスってるや!!」


 時々顔を出す、かつての六駆おじさん。



 彼は両手を組んでから、右手と左手に配分量の違う煌気オーラを溜めた。

 それを同時に放つ。


「じいちゃんと練習しといて良かった!! 弾幕張りますよー!! 『小竜砲コドラグーン』!! 9連!! 合わせてぇ!! 『多首大竜砲ヒュドラグーン』!!!」


 ヒュドラとは、首がいっぱいある神話のモンスターである。

 首の数は9だったり、50だったり、100だったりする。

 『多首大竜砲ヒュドラグーン』は細かい竜の咆哮を多数放つことで、複数の敵を同時に対処できる。


 今回は弾幕として運用。

 8発の『小竜砲コドラグーン』でダイナマイト砲を相殺し、残った1発は万が一の連発をけん制するためにチクワへ。


「にゃはー!! またとんでもないスキルが出たにゃー!! ガチった六駆くんは頼りになるにゃー!! 莉子ちゃんいないから大絶賛しちゃうにゃー!!」

「みみみぃ!! なんか不愉快な煌気オーラを船から感じるです! けど、師匠がいれば安心です!!」


 サービスは未だに上空でお腹を抑えて苦しそうである。

 六駆くんの強さは千のスキルと共に常に新しいスキルを産み出せる経験値がベースであり、緊急事態の対応力の高さもまた彼の魅力。

 煌気オーラの食あたりと言う新しい状態異常を開発して見せた。


 だが、チクワからひっそりと上位調律人バランサーが地上に降りて来た気配を、今の大爆撃でかき消してしまっていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 六駆くんは言った。


「思ったよりも敵さんの戦力が多いね。本部に救援要請出そうか。山根さーん!!」

『はいはい! 了解っす! 楠木さんに具申するっす……。あの、逆神くん?』


「なんですか?」

『椎名さんなんすけどね』


「はい。クララ先輩が?」

『なんか、増えてないっすか?』



「にゃははー! そんな訳ないぞなー!!」

「にゃっふっふー! まったくだにゃー!!」


 どら猫、増える。



『逆神くんは椎名さんにも『分体身アバタミオル』を教えたんすか? 生体反応、煌気オーラ反応、まったく同じなんすけど』

「教えてないですねー。……普通に考えると、どっちか偽物ですよね?」


 先ほどの爆撃の直後、サービスがよく分からないスキルで攻撃されたのを見届けたエルメス上位調律人バランサー

 「ダン・モンモニエール上位調律人バランサー。すぐに出撃お願いします」と言って、気配を消した刺客を送り込んでいた。


 ダン・モンモニエール上位調律人バランサー

 二か月前に「ピース主催・一発芸大会」にて、ライアンとペヒペヒエスに「お前……。それ一発芸じゃなくて普通に戦闘で応用しろ」「ほんまやで。上手に化けるやんかー」と高評価され、上等兵から上位調律人バランサーに二階級特進をキメた男である。


 あとサービス賞として練乳が1ダース贈られた。


 一芸特化のスキル使い。

 彼が使えるのは変身スキルのみ。


 しかも「彼女が欲し過ぎたので毎日15時間くらい女子になろうとしてたら、なんかスキルが発現しました!! げへへっ! この質感、声から中身まで完璧です!!」と言う、変態寄りというか変態そのもの。


 スキルはメンタル勝負が基本のこの世界。

 変態に振り切れたスキル使いは、1つの分野に際立った力を発揮することが結構ある。


「にゃはー!!」

「にゃはー!!」


 迷わずクララパイセンを選んだのは、当然おっぱい。

 ではなく、デトモルトでも格納庫でも豊満ムチムチΘ型をずっと凝視していて、準備ができていたから。



 おっぱいじゃないか。いい加減にしろ。

 今年も終わろうって言うのに、息を吐くようにおっぱいおっぱいって。



「……まずいな! 芽衣は知ってると思うけど、僕の煌気オーラ感知ってかなりガバガバなんですよ!! ははっ! どっちもクララ先輩にしか見えないや!!」


「うにゃー! 酷いにゃー!!」

「にゃはー。気にしなくていいにゃー!! 人には得手不得手があるぞなー!!」


「み゛み゛っ! どっちもクララ先輩のセリフっぽいです!!」

「サービスマンさんは……。あっ! ヤバい!! もう元気になりそう!! 僕、行きますね! 多分狙いは同士討ちというよりは、隙をついた『ゲート』の破壊だと思うので! あとお願いします! ふぅぅぅぅんっ!!」


 飛び去る六駆くん。

 実際のところ、こちらに彼が残っていてもあまり役に立てないだろう。


「みみみみみっ」

「安心して! 芽衣ちゃん!! 私にはもう、勝ちへの道筋が見えてますから!!」


「みみっ!? 春香さん、すごいです!!」

「ふふっ! 健斗さーん!!」


 サーベイランスが呼ばれる。


『なんすか?』

「健斗さんなら分かりますよね! 私のオペレーターの師匠で、自慢の旦那様ですもん! 仲間と敵の見分けなんて余裕ですよね!!」


『えっ!? ……え゛っ!?』


 山根くん、急に戦局を左右する局面にリモート参戦させられる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る