第687話 【御滝ダンジョン争奪編・その9】これより部隊は二手に! 追跡チーム、ダンジョン突入!!

 戦艦・チクワの被害甚大。

 ナグモさんが帰りがけに放って行った新スキル『冥竜閃めいりゅうせん』によって、格納庫がぶっ飛ばされた。


 まだ出番を控えていた号泣アァァァΛ型が20体ほど「うぐえぇぇぇぇぇん」と泣きながら爆ぜる。

 彼らは量産型へと運用方針変更がされているので、かつてストウェアが壊滅的な被害を受けそうになった煌気オーラエンジンも大爆発が起きるほどの動力は持っていない。


 が、煌気オーラエンジンは搭載されているので、隣同士きっちり距離を詰めた上で座って待機していた号泣アァァァΛ型は順番に誘爆していく。

 だが、格納庫には数人の調律人バランサーがあり、先ほどフェルナンド・ハーパーを華麗に操って、激しい嫌悪感から持参した酒を飲んでいるのはクロエ・マッカーシー。


「……これですよ。嫌な仕事が終わったと思ったら、また嫌な仕事でしょ。私、そもそも戦闘は専門外なんですけど。……で。今度はこれ操れば良いんですか? 艦橋。応答願います」


 艦橋では格納庫が被弾した瞬間に隔壁を作動させて被害を最小限に押しとどめたエルメス上位調律人バランサーがいる。

 「最近の若者は有能な人材ほど自己主張が弱い」とは、アイスランドの実業家セヤカテ・イエノソト・サムイカラ氏の著書でも語られている。


 彼がまさにそのタイプで、極めて有能な指揮官としての適性と戦艦操縦技術、状況判断力も兼ね備えていた。



 なお、本名は既に誰も覚えていない。

 ここにその本名を記載しないのが世界の意思でもある。



「あー。こちら艦橋。残っているコピー戦士の確認なのですが。豊満ムチムチΘ型は全機出てますね?」

『格納庫。爆発してて分かりません。そっちでそうなら、そうなんじゃないですか?』


「はい。呼気から高いアルコールを検知。クロエ調律人バランサー、任務中にウォッカ飲まないでください」

『では、あなたがあのゴミを操縦したら良かったじゃないですか。戦艦動かせるなら、できますよね?』


「クロエ調律人バランサーの飲酒を承認。では、脳筋ゴリラα型を操縦して爆発の鎮火願います。そののち、脳筋ゴリラγ型と脳筋ゴリラΩ型の起動をお願いします」

『生理的に受け付けないんですが。というか、後者の2機は起動させるまでに1時間はかかりますよ? その間にチクワが落ちるのでは?』


「こちら艦橋。クロエ調律人バランサーに強めのウォッカの差し入れを」

『ポッサムさんと一緒が良かったな……。脳筋ゴリラα型、操縦システム起動。『ダイナマイト砲』で火災ごと吹き飛ばします』


 チクワはしばらく動きそうにないが、中身にはえらいことになりそうな火種がまだ健在である。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 地上では、愛の戦士によって戦力が一時的に拮抗状態から推移。

 日本チームが圧倒し始めていた。


「にゃはー。あたしがボコボコだにゃー」

「おっぱいがいっぱい落ちてくるよぉ」


 現在、豊満ムチムチΘ型の殲滅が完了しそうな気配を見せている。

 水戸監察官の『糸式・青山ガチコイ』スキルシリーズが上空に絶えず放たれており、落ちて来る豊満ムチムチΘ型のあられもないおっぱいで再び戦意高揚し、煌気オーラをチャージ。


 おっぱい永久機関が完成している。

 定期的に青山さんにビンタされて嬉しそうにおっぱいを撃ち落とす水戸くん。



 君、変わったね。



 地上に落ちてきてもまだ豊満ムチムチシリーズは戦えるのだが、そこはデキるお姉さんたちが迎撃。

 春香さんは格闘スキル特化のため、対空射程は短い。

 広範囲で、しかも多数の敵を相手にするのは骨が折れるものの、地上に降りて来れば話は変わる。骨は折るものに変わる。


 雷門監察官を模擬対人戦闘訓練でギャン泣きさせたり、『結晶外殻シルヴィスミガリア』を発現した阿久津浄汰特務探索員と殴り合いなら引けを取らない彼女の必殺技『春一番はるいちばん』が猛威を振るう。

 バラバラになる豊満Θ型を見て、クララパイセンは「よく考えたら芽衣ちゃんの『幻想身ファンタミオル』とか『分体身アバタミオル』でこんなの結構見てたにゃー」と既に他人事。


 莉子ちゃんは「おっぱいがバラバラに……!!」と、精神汚染が進行中。

 ノアちゃんがミルクティーを飲ませて「大丈夫です、莉子先輩! ボクたち、バラバラになるほどおっぱいないです!! ふんすっ!!」と応援中。


 本来ならば、ここで追い号泣アァァァΛ型が投入されるはずだったのだが、子持ちの竜になったナグモさんによって、同僚のコピーが全滅させられたため空白が生まれる。


「ほほう! これは悪くないですねー!! ふぅぅぅぅぅんっ!!」

「ふん。俺が逃がすと思うか。天に立つも」


「そぉい!! 『ドロップキック』!!」

「ずぁっ」


 今回の六駆くんは綺麗でクレバー。

 ちょっと前まで「うわぁ! 面白い戦い方ですねぇ!! もう少し見てみよう!!」とか言っていたのに、今は容赦がない。


 『ドロップキック』とは、ちょっとだけ煌気オーラで推進力をつけて放つドロップキック。

 ただのカッコつけたドロップキックである。


 スキルではないため、煌気オーラ攻撃に備えていたサービスの顔面には美しい靴跡が。

 本来このような戦い方は逆神大吾が得意としており、六駆くんの主義には反するのだが、今回は仲間の命を背負いながら、通信途絶中の母と祖父母を心配しつつ、凍結された資産と報奨金のために戦う最強の男。


 全部の要素が混ざった結果「戦いは勝てば良い」と言う最強の理論を身に纏っている。


「水戸さん!! 僕が地上を引き受けるので、さっきダンジョンに入って行った人たち、叩き出して来てください!!」


 逆神六駆、ここで動く。

 当初の計画通り、部隊を2つに分けるのである。


 だが、本来であればダンジョンの方に六駆くんが向かうのがベターとされていた。

 今回は日本の御滝市が戦場であり、地上で戦っていればいずれ増援も可能。

 ならば、不確定なダンジョン追跡チームに戦力の比重を割くべきだろう。


 特に万が一際、転移スキルがある事は極めて大きい。

 が。


「申し訳ないんですけど、このサービスマンさんは僕がいなくなったらまずいので! 下手すると、出しっぱなしの『ゲート』に時間止めて不法侵入キメられて、本部にぶっこまれる可能性もあります!! かと言って、『ゲート』消した後に謎の妨害されると本部との連携が切れますし!! 僕がこっちに残ります!!」


 敢えてこれまでの考察を口に出す六駆くん。

 サービスへのけん制がその行動に含まれていることは、おっぱいジャンキーくんにもまだ理解できた。


「よし! 了解した!! 水戸信介、これより追跡チームの指揮を執る!!」


 水戸くんの煌気オーラはまだまだたっぷり。

 なにせ、ずっとおっぱいドーピングで戦っているのだ。

 戦意高揚状態の水戸くんは煌気オーラ総量が多くなるわけではなく、スキルの煌気オーラ使用量が省エネ化される。


 おっぱいがあれば戦えるのだ。


 ここで、乙女たちのロシアンルーレットが始まった。

 おっぱいがあれば戦える指揮官。

 当然、おっぱいが随行させられる。


 乙女たちは口に出さず、祈った。

 「私は行きたくないな!!」と。


「とりあえず、青山さん! お願いします!!」

「ぐぅぅぅ!! 分かってました、分かってましたよ!! 逆神くんが指示しなくたって! この人に付き合えるの、私くらいの忍耐力がないと無理ですもん!!」


 仁香さんの発言が極めてレッドゾーンに。

 ギャンブル依存症の彼氏にお小遣い上げる彼女感が充満しつつあった。


「あと3人くらい行って欲しいんだけど。あっ! まずい、サービスマンさんが復活する!! じゃあ、ええと! 莉子! ノア!! 莉子は敵さんの大将を相手に! 大丈夫、今の莉子なら勝てるよ!!」

「ふぇぇぇ。六駆くんから信頼されてる……!! 離れるのは寂しいけどぉ! 頑張る!!」


「ノアは元気に応援!! あと、万が一の時にはアレするから!!」

「それまでは自由に見ていて良いんですね!! 逆神先輩はさすがです!! 平山ノア、活きまぁす!!」


 誤字ではありません。


 この2人が選ばれることは、周りの乙女たちの想定内。

 「水戸さんが不用意に高揚しないもんね」と共通見解を抱いている。


 が、ここからはみんなそれなりに立派なものをお持ちである。


「あとは……。水戸さんは中距離、青山さんは近距離、莉子は砲弾。バランスのを考えると」


 小鳩さんが崩れ落ちた。

 お姉さんには分かっていたのだ。


 クララパイセンはダンジョンに入れる旨味が少なく、おっぱいだけが多い。

 芽衣ちゃんは間違って水戸監察官が戦意高揚すると、事案が起きる。

 春香さんは人妻。山根くんが精神崩壊で役に立たなくなるとサポートが滞る。


「……行きますわ」

「小鳩さん! 僕が何も言わなくても!! さすが!! お願いします!!」


 追跡チーム、緊急結成


 サービスが復活したのはその数秒後。


「ふん。面白いことをする。俺が行かせると思うか? 『サービス・タイム』!!」


 時間が停止した。

 サービスは手早く追跡チームに照準を合わせたが、すぐに取りやめて背後に向かってスキルを放った。


「……ふん。やはり、やる。『弾丸バレット』!!」


 放った煌気オーラ弾の先には、『空盾エアバックル』と『豪拳ごうけん』を同時発現してサービスに迫る六駆くん。

 サービスの時間停止を先読みして、『瞬動しゅんどう四重クアドラ』で超加速移動ののち、攻撃と防御を同時に繰り出していた。


 時間が動き出し、六駆くんが右の拳の煌気を加えて『空盾エアバックル三重トリプル』で『弾丸バレット』を防ぐ。


「おっと!! 10秒とか止められたらヤバいかなと思いましたが! まあ止められるんでしょうけど、さすがにデメリットもありそうですね!!」

「ふん。あの程度の戦力ならば問題ない。ライアンに任せればな」


 地上の戦いは逆神六駆が引き受けた。


 追跡チーム、いざ出動。

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