第678話 【ミンスティラリア強襲編・その15】第一次侵攻、完結!! 戦いの舞台は現世へ!!

 節子さんが魔王城の屋上に到着すると、そこにはよし恵さんの姿がなかった。


「ありゃあー。よし恵さん、テンション上がっちょるねぇー!!」


 呉の老人会はもう理屈では説明できない戦力をばあちゃんたちがそれぞれ保有しているが、よーく目を凝らすと欠点らしいものもあった。

 彼女たちは空を飛べない。


 呉の老人会は逆神みつ子が作り出した逆神亜流のさらに亜流であり、「ねぇ、これ良くないかぃね?」「あらぁー! ハイカラじゃねぇ!!」と、ノリでスキルを開発し、開発したのちにはそれが極大スキルに到達するまでせっせと育てる。


 ゆえに、彼女たちは使えるスキルの種類が少なく、また一般的なスキル使いが最初に覚える基礎もすっ飛ばしているため、Aランク探索員レベルになれば大半の者が使える「煌気オーラを足場にした空中移動」の存在を知らずに過ごしていた。


 かつてピースの初陣を飾ったハーパー部隊が派遣された際も、上空から襲い来る刺客たちの相手は遠距離攻撃に長けた節子さんがまず叩き落したのちに各個撃破するスタイルを採用している。

 というよりも、それ以外の戦い方を知らなかったのである。


 パウロとサンタナは知っていたが、恐れ多くて言い出せなかった。


 そこにひょっこり現れたのは、日本探索員協会所属の伊達男。

 雨宮順平上級監察官。


 定期的にピュグリバーへ行く彼は、帰りに老人会へ寄って交流するのも日課であり、ある日「皆さん、煌気オーラ運用の基礎をご存じない? あららー。じゃあ、私教えちゃいますよ!」と軽い気持ちで色々指南したところ、「あー。私、何かやっちゃったかもしれないねー」と楽天家なおじさんさえもちょっと後悔させる変化を見せた。


「……頑丈にできちょるねぇ。あんた。……けど、それだけに可哀想じゃね。……ただ大砲撃つだけじゃ歯がゆかろう。……万全な状態で戦いたかったねぇ」


 長槍の先端に煌気の刃を付けた『延滅ノビール死狂いデスサイズ』を使って、『血雨の輪舞曲ブラッドロンド』を発現中のよし恵さん。

 自在に足場を構築して、死に誘うダンスを披露していた。


「よし恵様はどうしてトドメを刺されないのですか? ええと、旦那様!」

「あららー! エヴァちゃんが私をもう後戻りできない感じで呼び始めてるー!! ダメだよ、エヴァちゃん? 戦場では基本的に、皆が認識できる名称を使わないと!」


「えー。そうなのですかー? ……雨宮様」

「不満そうな顔が可愛いのは困るねー!! さて、師匠らしく説明しよう! 飛んでる木原さん、いやいや、爆撃機だ! 明らかに積載量がまずいレベルの煌気オーラの動力を持ってるだろうねー。近接戦で注意しないといけないことは?」


「撃破後の対応ですか?」

「なんて優秀なエヴァちゃん! そう! 人によって色々あるけど、私が重視するのはそこだね! 相手が自爆狙ってたり、刺し違えようとしてたり。あとはトドメ刺した瞬間に周囲に被害が出そうな場合なんかは軽々に処理できないよねー」


 よし恵さんが脳筋ゴリラα型を翻弄しながら、しかめ面でクレームをいれる。


「……分かっちょるなら、早うしぃさん。……あと、言うちょくけどね。……あたしゃ若い頃、エヴァちゃんよりようけあったけぇね。乳が納まるブラジャーないけぇ、サラシ巻いて過ごしよったよ」


 節子さんが「キャー」とはしゃぐ。


「あのよし恵さんがデレちょる!! 雨宮くん、モテるっちゅうのは罪じゃねぇ!!」

「私もブラジャー外します、雨宮様!!」


 ヤメてください。

 超のつく年の差トライアングルラブコメとか、本当に困ります。



 処理できません。



「よーし。エヴァちゃん! 煌気オーラ感知してみようか! もう良いか! 木原さんの煌気オーラ総量を計測してごらん?」

「はい! むむむむ! ……250000呉人力バーチャムを超えています!!」


「うん。そうだね。よく分からないけど、大変な出力だよ。節子さーん! 準備、そろそろよろしいですかー?」

「やだよぉ! あたしまで落としに来るんかいね! うちのお父さん、何て言うかいねぇ!!」


 おちゃらけながら、節子さんの手には巨大な砲門が具現化済み。

 『狂襲滅殺大砲ギルティブラスター』という、呉の公民館で対侵入者殺害システムとして運用されているもの。


「オッケーですねー! では!! 『灰色の柔らかい灰ポヨンポヨングレー』!! 遠隔発現!!」

「戦場で大事なのは何をするかではなく何ができるか、ですね! 私、防壁張りますっ! 『桃色の弾力のある桃壁プリンプリンピーチ』!!」


 いつの間にか雨宮順平のオリジナルスキルを習得しているエヴァンジェリン。

 ひっそりと雨宮流が誕生していた。


「……ゴリちゃん、独りでようやったねぇ。……次はあたしを狙ってきぃさんや。……自然を破壊するのは良うないけぇね」


 よし恵さんが脳筋ゴリラα型と距離を取った瞬間に、雄たけびを上げる兵器の周りを灰が球状になってまとわりつく。


「雨宮くんのスキルを信じちょるけぇ! 一撃必中、全力で行くよ!! ほぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 『狂弾クレイジー紅い屍人の恐惶レッドデスイーター』!!!」


 ミンスティラリアにキノコ雲が出現した。

 脳筋ゴリラα型は極めて優れた殺戮兵器だったが、ばあちゃんたちは死神が来ても「まだ早い!!」と追い返す。


 相手が悪かったとはかくのごとし。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 しばらくして、パウロくんが門から現れた。


「報告です! いくつかの村に甚大な被害が出ていると、ライオンのお姉さんより言付かってきました!」

「ふぅむ。防衛体制の確立で手抜かりをしましたかの。どれ、ワシが行きましょうぞ」


「ボクも構築スキルであればお手伝いできるかと思います! まったく自信はありませんが!! けど、ネガティブな事を言うと懲罰訓練させられるので、自信はあります!! 嘘です!!」

「ほっほっほ! 自信なんぞは一摘まみで良いのですじゃ。慢心するよりも慎重な後ろ向きの方がワシは好きですぞ」


「……ボクの師匠はこのおじいさんだったのかもしれない!! 勉強させてください、四郎様!!」

「みつ子や、行ってきますぞ」


 戦力が整った以上、後顧の憂いなく後方支援に徹する逆神四郎。

 クレバーな判断である。


「ぐーっははは! 皆様! ばば殿たちがお好み焼きを作ってくださいましたぞ! 召し上がられませ!! 戦いに空腹は大敵でございまするぞ!!」


 特にツッコミはしません。


「アトミルカの子たちも消耗しちょるし、あたしらの詰めが甘いせいで被害も出ちょるねぇ。こりゃあ、しばらくはどっちも手ぇ出せんやろうから、みんなで休憩しよういね!!」

「ばば殿も休むのじゃ! シミリートに煌気オーラ維持装置を作らせたのじゃ! 『ゲート』の構築術式は妾がお手伝いしたのじゃ!」


 戦闘で役に立てないと判断すればすぐに裏方へ回る。

 ミンスティラリアは戦争の歴史と共に生きているので、魔王様も心得ております。


「あららー! あの子が逆神くんの言ってたロリっ子ちゃんだねー!! やだ、可愛い!」

「むー。聞き捨てなりません、旦那様!! エヴァンジェリンは本気を出せば、ロリっ子にも戻れますよ!!」

「ふんっ。……エヴァちゃん、青いねぇ。……男の火遊びは笑って許すくらいの度量を持てにゃあ、そのおっぱいは飾りも同然じゃけぇ」


 助っ人が余力を残し過ぎているため、恋バナに花が咲いております。


「バニング様! アリナ様! 照り焼きを作ってきました!! よろしければ!! ザールくんも!!」

「……バッツ。今はお前のその明るさに救われる。1つ、いや2つもらおう」


 第一次ミンスティラリア事変。

 全ての攻撃、侵攻を防ぎ切った魔王城チームだが、ピースは実質ペヒペヒエスと辻堂甲陽の2人いる最上位調律人バランサー

 そしてポッサム上位調律犬バランワン


 3名で強襲し、かなりの被害と半数の戦士に戦線離脱を余儀なくさせた。

 ピース本隊は既にこちらのカマボコによる強襲を陽動として考えているため、目論見としては悪くない。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃。

 デトモルトでは。


「チュッチュ。チュッチュ。ほう。ペヒペヒエスも気が利く。このコピー戦士たちを残していくとは。ヘムリッツ。調整は?」

「はっ。美少女ミミミミξ型。貧鬼姫ドンマイπ型。いずれも武装、長期起動に問題ありません。しかし、元人格が影響しまったく戦いたがらないのでペヒペヒエス様が調整し、狂戦士モードに。と言いますか、狂戦士モードでしか動きません! 試作機ですので!!」


「確認したい。起動してくれ」

「で、……」


「戦場はダンジョンだ。万が一にも暴走されては堪らん。先日、脳筋ゴリラα型の実験で私が作ったポッサムの小屋を焼かれた事は忘れていないぞ」

「はっ。では、一瞬だけ起動します」


 ヘムリッツが端末を操作すると、カプセルの中に入っている女型のコピー戦士が2人、目を開ける。

 と、同時に、凄まじい煌気オーラ爆発バーストを披露した。


「みみみみみみみみ!!」

「……ガルルルルル」


 サービスの吸っていた練乳が破裂する。


「あ゛! よ、よし、分かった! 止めろ!!」

「はっ! ははっ!!」


 サービスはペロリと頬の練乳を舐めて笑みを浮かべる。


「ふんっ。悪くない。明朝、現地時刻で午前5時。御滝ダンジョンの侵攻に移るぞ」

「あの、このコピー戦士たち、起動させると24時間で動力停止するのですが……」


「なんだと? なぜ言わない!?」

「申し訳ありません! ……の後で申し上げたのですが、尺の関係とかいう謎の力でまるまる消失いたしまして!!」


 サービスは新しい練乳をヘムリッツに放り投げてから言った。



「それはならば仕方がない。お前が悔むな。ライアン、すぐに出撃の用意をしろ。時間がどうとかそう言うのは良い。尺が足りん」

「はい。分かりました。練乳を吸われる擬音すらカットされている……」



 ピース侵攻、第二次作戦へ。

 前半でばあちゃんが喋り過ぎた事を咎めないラッキー・サービスが指揮を執る、初めての作戦である。


 分割するべきでした。

 けど、ミンスティラリア強襲編これで終わりだし。


 あ。すみませんでした。反省してます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る