異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第672話 【ミンスティラリア強襲編・その9】追い詰められた玉ねぎ、パンドラの箱を開ける ~脳筋α型、二枚目β型、起動の時~
第672話 【ミンスティラリア強襲編・その9】追い詰められた玉ねぎ、パンドラの箱を開ける ~脳筋α型、二枚目β型、起動の時~
ペヒペヒエスの拠点、カマボコにポッサムが滑り込んでから叫ぶ。
「ババア!!」
ポッサムはすぐにペヒペヒエスの道具箱を抱えてきた。
この賢いワンコは最近2足歩行を覚えたので、前足を手のように使えます。
「た、助かるで。ポッサム……。あった。『
ペヒペヒエスのワクワク羽装備の中でもとびきり希少でリスキーなのがこちらの『
デトモルト人の若返りを超高速で行うプログラムが付与されており、体に密着させる事でそれは発動。
だが、本来は数週間かけて行う若返りを肉体の再生に転用する性質、そしてその効果が現れるまでがわずか数分であると言うチート性能にリスクがないはずもなく。
デトモルトの謎技術でも、過分な要求をすれば相応の対価が求められる。
「あぎゃぎゃぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ!! んんんんん! 痛い痛い!!」
まず、肉体の再生に極めて強い痛みが伴う。
ペヒペヒエスの場合は左半身がほぼなくなっていて「なんで生きとるんや、この玉ねぎ」状態であるため、その苦痛も格別。
まともな精神を持っていれば、ショックで死ぬレベル。
再生を試みてその過程で死ぬかもしれないという、効率重視のペヒやんが大嫌いなリスクを負う。
オマケに、急速な回復はデトモルト人の長い寿命までも縮めてしまうため、今回の重傷の程度から逆算するとペヒペヒエスの残った人生は激減。
だが、死ぬよりはましである。
十数分にわたる玉ねぎの叫びをポッサムは隣で見つめていた。
そして、紫色だった玉ねぎヘッドが真っ白になったペヒペヒエス、どうにか今生の土俵際で踏みとどまる。
「ババア!!」
「助かったで、ポッサム。あんたおらへんかったら5回は死にかけて、最終的に6回目で死んどったわ。ああ、なんちゅう体験や。いや、逆神家が化け物とは聞いとったで? せやけど、あそこまで頭おかしいレベルやとは思わへんやん? あれ、人じゃないやん?」
ペヒペヒエスはポッサムに寄りかかって、カマボコの操作端末の前に立つ。
「こりゃもうね、データ収集とか言うてられへん。生きて帰る事を目標にせな。おばちゃんは自業自得やけどね、ポッサムはちゃうもんな。コピー戦士は機械やけど、あんた生身やもん。命は大事にせなあかん」
「ババア! なんか綺麗になってる!!」
「死にかけるとか、デトモルト人が最も経験せぇへん事象やで? そら、価値観も変わるわ。ラッキーちゃんの言うとる平定に興味はあらへんけど、もう乗るしかないで。おばちゃんが噛みついたせいで、化け物ばあちゃんにデトモルト壊滅させられてまう。あかん、あかんで」
白い玉ねぎになったペヒやん。
好奇心が玉ねぎも殺す事を学び、完全に自業自得でもう弁解の余地すらないものの「これ復讐されたらおばちゃんの同胞全滅やで。さすがに後生悪いわ」と、研究よりも種の保存を優先する方針に舵を切る。
端末を操作して、解除キーを差し込むと2つの棺桶のようなカプセルが現れた。
さながら心境は17号と18号を起動させる時のドクターゲロ。
「ごめんなさいで済む状態やないしな。すまんけど、異世界ごと滅ぼすで。ポッサム、そっち頼むわ」
まずは「ごめんなさい」なのに、その過程を自己判断ですっ飛ばす倫理観はやはりデトモルト人であった。
「任せろ! ババア!!」
2人は同時にカプセルを解放。
中からは筋骨隆々の
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!」
ミンスティラリアの空へと飛び去って行った。
「うん。あかんやろなと思うとったで。オリジナルのデータ強すぎんねん。全部入れたら人格プログラムバグったし。すまんなぁ、この世界の子ら」
試作機の試作機であり、試作の段階で「ちょっと1回止めましょう!!」とロブ・ヘムリッツ
オリジナルは当然だが、木原久光監察官。
「ふっ。状況から察するに、私はオリジナルから作られた代替品か。まあ良かろう。記憶の同期はできていないようだが、戦闘力は本体と同等。武装により上回るか。マスター。私は戦局を変える事が可能だが? どこへ向かい、何を倒そう」
「いや、待って。むっちゃ綺麗な人格持っとるやん。どうなってんねん」
「ロブがなんか頑張ってた!!」
こちら、
口調からお察し頂けただろうか。
オリジナルはバニング・ミンガイル。
カルケル局地戦でデータを全員分きっちりゲットしていたペヒやんによって作られたコピー戦士と、ロブ・ヘムリッツが「……バニング様だ、これぇ!?」と偶然の再会を果たし、「事情は分からない。もはや袂も。が、この方に対する忠義はまだありますよ!!」という信念の元、連日の徹夜におよぶ魔改造を施した結果。
なんか凄まじいコピー戦士が誕生していた。
「ええと。
「ふっ。マスター。私の名前はそのように無粋なものではない」
「あ。ほんまに? せやったら教えてくれへん?」
「ふっ。私の名前はマスクド・ダンディ!! 戦いに生きる事しかできぬ、不器用なダンディ。だが、ダンディと生まれたからにはダンディを全うするダンディ!!」
データ採ったのはマスクド・タイガーさんだった事実。
あと、ちょっと人格調整に不安がありますね。
とは言え、戦力としては極めて強大。
ペヒペヒエスは目標を指示する。
「了解した。このダンディ、命に代えてもダンディをこの世に残そう。ダンディとして生きたダンディを。ふっ」
そう言うと、
ペヒペヒエスは「まあ、ええか」と頷いて、すぐにカマボコの操作に戻る。
撤退はできずとも、強固なバリアを展開して籠城する用意はできる。
そもそも撤退が不可なのも通信が不能なのも自分で張った
「敵戦力に甚大な被害を与え、戦闘続行不可の状況を作り出す。膠着ののち、ピース本隊の侵攻を待つ」というのが、ペヒペヒエスの新しい行動指針である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「かっかっか! 強ぇなぁ、バニング!! おめぇ、なんで雲隠れしてやがった? 俺が現役の時に悪さしとけよ!!」
「黙れ! 気安く名を呼ぶな!!」
「隣の姉ちゃんが何度も親し気に呼ぶから覚えちまったんだよ! 文句言うなら姉ちゃんに言えや! うらぁぁぁ! 『
辻堂甲陽は空間を削り取って強制的に対象との距離を縮める斬撃でバニングさんを翻弄する。
ブランクはあるものの、猛者との戦いですぐに勘を取り戻した戦闘狂。
バニング・ミンガイルがそれだけ優れた戦士である事の証明なのが皮肉である。
「それは何度も見た!! ぬぅぅおぉぉ!! 『
「ぬおっ!? 今度は実態のねぇ壁かよ! ったく、多芸に秀でてんなぁ! おめぇも剣友と同じ万能タイプの使い手か!! おもしれぇ!!」
戦闘が長引いているのには理由があった。
バニングさんには決め手に欠けると言う致命的な事情があり、辻堂は「久しぶりの戦いがすぐに終わっちゃ色気がねぇやな!!」と、戦闘狂あるあるな思惑でお楽しみの真っ最中。
そのため、常にバニング・ミンガイルとサシ勝負にこだわり、アリナさんには攻撃を仕掛けていない。
「バニング! やはり妾も共に……!!」
「なりませぬ!! あの男、実に腹立たしいですが……! 戦士としての道は踏み外しておらぬようです。ですが、女に攻撃しないという騎士道精神とはまた違いますれば、アリナ様が脅威と判断した瞬間に迷わずあなた様の御身にも刃を向けるでしょう!!」
「そなた……!! 妾と共に生きると申したのに、妾を邪見にするか!?」
「お怒りはごもっとも!! ですが、私にも譲れぬものはございます!! アリナ様にはこれより先、ずっと幸せでおられる義務があると愚考する次第!! 私はあなた様の幸せを守るために戦って参ったのです! この生き方だけは、喩えアリナ様と言えど止められはいたしませぬぞ!!」
アリナさんは口論を諦めて、胸の前で手を組んだ。
「バニング……。好き。今すぐ抱かれたいのだが、どうすれば良いのだ?」
「おめぇら。定期的にいちゃつくのヤメねぇか? 興が醒めて仕方ねぇわ」
と言いつつも、ちゃんと待ってあげる辻堂甲陽。
そこに高速で飛んで来たのは、もちろんコピー戦士。
「辻堂甲陽と見た。貴様は友軍ダンディと識別されている。これより加勢する。敵の殲滅を最優先事項に」
「ほーん? なんか来たと思ったら、ペヒばあの人形か。腹のマークねぇと分からんとこだったぞ」
足が止まり、思考も停止するバニング&アリナ夫婦。
「……バニング」
「はい。私ですな。……カルケルで不覚を取っていたか!!」
ダンディの目が光り、2人をサーチする。
「ふっ。これは何の因果か。私の本体と遭遇戦とは。名乗っておこう。私の名前はマスクド・ダンディ!! ダンディに生き、ダンディをしゃぶり尽くす者! さあ、オリジナルダンディ!! 雌雄を決そうか!! レッツダンディ!!」
依然として固まったままの2人。
「……バニング」
「はっ。私の顔をした者が、何やら聞くに堪えない支離滅裂な言動を。恥ずかしくて死にたいと思ったのは初めてでございます」
マスクド・ダンディ。
初手の精神攻撃は効果バツグン。
ところでお前。マスク被ってないじゃないか。
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