第550話 【逆神家追放編・その11】チーム莉子VS復活したブタとマッドサイエンティスト

「てっめぇ!! なんだ、この野郎!! 人がビール飲んでたらよぉ!! いきなり撃って来るとか!! ついでに家族に助け求めたら追い返されたぞ!! ふざけんなよなぁ!!」


 逆神大吾はとっても前向き。

 家族全員に無言の拒絶をされてもすぐに立ちあがる。


「ふははははっ!! 哀れだな、逆神大吾!! 喜べ! 我らピースは、新生ハーパー部隊は!! 貴様を最初の獲物とすることにした!! 光栄に思い、死んでいくが良い!!」

「誰だてめぇは!! 親しげに話しかけてんじゃねぇぞ!! オレとお話したいならお金寄越せや!! レンタルおじさんって知らねぇのか!!」


 ハーパーは「なるほど。こいつ、煌気オーラ探知ができんのだな? ゆえに、若返った私を認識できんと見える」と、ちょっと優越感に浸ったのち、正体を明かす。



「ふはははははっ!! 私はフェルナンド・ハーパー!! こう名乗れば分かるな!?」

「いや、誰だよ!! 全然分からねぇ!! えっ!? オレ、君のこと知ってる!?」



 普通に忘れていたご様子。

 これにはハーパーもちょっとしょんぼり。


 代わりにイカれたメンバーたちが「久しぶり!」とご挨拶。


「んっふっふ! わたくしの事は分かりますか?」

「あっ! おめぇ! 名前は忘れたけど! 粘着科学おじさんじゃねぇか!! しつこいヤツ!!」


 続けて、元アトミルカナンバー4のロブ・ヘムリッツが「とりあえず覚えてもらえていた」という、敵としての免罪符をゲット。

 ハーパー、さらに落ち込む。


「ぶひひひっ!! ボクもいるんですよねぇ!! ついにウォーロストから出てきたんですよねぇ!! ぶひひひひっ!!」

「豚じゃん!! なに? 出て来たん? 言えよ!! 南雲さんの結婚式の余興撮影して以来じゃん!! マジかー!! 言えよ!! ビール飲む? オレの飲みかけだけど!!」


 下柳則夫元監察官。

 名前こそ大吾の口から出てこなかったものの、完全に認識される大金星を挙げる。

 何ならちょっと親し気に声をかけられる。



「お前たち!! なんだ! 普通に紹介を済ませおって!! 私が1番影薄い感じになっただろうが!! 身の程を弁えろ!! これ、私の部隊だぞ!! ふざけおって!!」

「こ、これは申し訳ありません。ハーパー殿。わたくしとしたことが……」

「ぶひっ。どうかお心を鎮めて欲しいですねぇ」



 敵としての格付けで勝手に評価を落としたハーパーくん。

 とりあえず部下に当たる。

 これでこそフェルナンド・ハーパー。


「隙ありぃ!! うぉぉぉぉらぁ!! 『銀玉打上花火ジャンバリスターマイン』!!!」


 そして、敵がやる行動はだいたい躊躇なくできる逆神大吾、迷わず不意を突く。

 それをヘムリッツが霧散した。


「お、おお! よくやった、ヘムリッツ!!」


「ご注意くださいませ。あの男、このようにクソみたいなスキルで油断させ、突然頭のおかしい攻撃を仕掛けてきます。能ある鷹は爪を隠すを地で行く男ですよ」

「ぶひひひっ。よく知ってるんですよねぇ。逆神の名を冠する男。やり方が狡猾なだけに、ボクは逆神六駆よりも強敵だと思っているんですよねぇ!!」


 ここは逆神大吾が過剰な評価を受ける空間。

 彼らの最終戦績に黒星を付けているのがこのお排泄物なおっさんなので、致し方ないと言えば致し方ない。



「い、今のが……。クソみたいなスキル……だと……? 普通に怖いのだが?」


 大吾のクソスキルを脅威に感じる実力差ギャップに悩まされていた。

 そんな彼はハーパーくん。



 そこに転移して来るのが、我らの画面浄化乙女たち。

 おっさんだらけの絵面よ、さらば。


「お義父さん! 助けに来ました!!」

「おおおっ! 莉子ちゃん!! マジか!! いやぁ! 信じてた!! やっぱ莉子ちゃんなんだよなぁ!! もうね、お父さん、抱きしめてあげたい!!」


「もぉぉぉ! ダメですよぉ! お義父さんでも、それは浮気になりますっ!!」

「そうかぁ! いやぁ!! その身持ちの固さ!! 良妻の素質満点だなぁ!!」


 莉子ちゃん、パジャマで登場。

 なお、残りのメンバーは門の入り口に引っ掛かって作戦会議中。


「みみみみみっ。莉子さん、師匠パパのセクハラに笑顔で対応してるです!!」

「にゃはー。これは愛がオーバードライブしてるぞなー」

「わたくし、愛する殿方のお父様がこれでしたら……。2週間は悩みますわよ……。きっと痩せますわ……。受け入れますけれど……」


 莉子ちゃんの見せる異常な懐の深さに怯える乙女たちが、控えめに登場するのは3分後の事だった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 莉子ちゃんを捕捉したハーパーくん。


「はぁああぁぁぁぁあぁ!? あ、ああああ! あのガキぃ!! じょ、冗談ではないぞ!! 日本の産んだ狂戦士ではないか!! 小学生なのに人を殺すのに躊躇もしない! 異常精神の持ち主だぞ!! お、おい! お前たち!! これはまずい!! まずいぞ!!」


 しっかりと体に苺色の恐怖が刻まれていた。

 作中時間でハーパーが莉子ちゃんにタコ殴りにされ、『苺光閃いちごこうせん』を2発ぶっこまれたのはつい半日ほど前の事であり、そのトラウマは出来立てほやほや。ほっかほか。


「チーム莉子が来ましたねぇ! 確かに、彼女たちもそこそこやりますがねぇ!! 所詮はただのBランクが中心になった監察官室子飼いの部隊! 恐れる事はないんですよねぇ!!」


 ちなみに下柳はウォーロストにぶち込まれた時の情報から更新がされていないため、脅威判定がかなり昔のものになっております。


「いや、下柳。2番様が警戒しておられた部隊だ。喩え、女子供だけの集まりだとしても、それなりの警戒はするべきだろうとわたくしは思いますがね」


 ヘムリッツの情報も古いが、ブタよりはマシ。

 しかし、彼はチーム莉子と直接対決をした事がなく、彼女たちの脅威についての造詣は浅い。


「どうするぞなー? 莉子ちゃんリーダー? やっちゃうかにゃー?」

「んー。どうしましょっかぁ。お義父さん回収してミンスティラリアに戻りたいけどぉ。六駆くんに怒られちゃうんですよねぇ。ふぇぇ」


「では、やはりあのお排泄物の皆様にお帰り頂く方向で動くべきですわね」

「みみみっ。現状、敵さんはお空の上なので遠距離攻撃主体になるです。みみっ」


 諸君。お気づきだろうか。

 実は、チーム莉子単体の作戦行動も相当に久しぶりの案件。


 六駆くんこそいないが、南雲監察官も含め男が帯同していない状態の戦闘となれば、無茶苦茶時を戻さなければ見つからない。

 乙女たちの戦い・パジャマパーティースタイルを見る事が出来て、何やら感慨深いものがある。


「おっしゃ!! みんな、おじさんと一緒に頑張ろうぜ!! 大丈夫!! オレが指示出すから!! 任せとけ!! これでもな、昔はブイブイ言わせてたんだよ!! 最近は嫁さんひぃひぃ言わせるくれぇしかしてねぇけど!! へへっ!!」



 こいつ。息を吐くように。早く消さなくっちゃ。よく考えたら男だ、こいつ。



 まず、口火を切ったのは下柳。

 彼の脂肪属性はかなりの汎用性を誇る。


 汚いが。


「ぶひひひひっ!! 『脂肪凶星ラードデススター』!!! ボクの初手で戦いが終わっても恨まないでくださいねぇ!! さぁ!! 遠隔操作するんですよねぇ!!」


 ベタベタした星が禍々しく輝く。

 かつては南雲修一監察官や五楼京華監察官を苦しめた下柳則夫の必殺技である。


 莉子ちゃんは慌てず、冷静な対処を心がけた。


「クララ先輩! 芽衣ちゃん!! 迎撃と粉砕をお願い!! 小鳩さんはその後で反撃を!!」


 パイセンが弓を。


「あ゛っ。部屋着で来たから、弓がないにゃー。にゃはー」


 持たなかった。このどら猫、武器の不携帯はここ最近だけでも2度目である。

 代わりに小鳩お姉さんが代打で登場。


「もう! クララさんは世話が焼けますわね!! 莉子さん! わたくしが先に迎撃に出ますわよ!! 『銀華ぎんか』!! 三十六枚咲き!! 『銀色解力花吹雪シルバーフラワーダンス』!!!」

「みみぃ!! すっごく触りたくないですっ!! 『分体身アバタミオル』!! 『単独特攻ソロプレイ』!! みみみぃ!! 『発破紅蓮拳ダイナマイトレッド』!!!」


 美しい連携で、脂肪の星を粉々に砕く乙女たち。

 続けて、クララパイセンが今度こそ参戦。


「にゃにゃー!! 『グラビティアロー』!! 『矢抜きエアプ』!!」


 重力属性を帯びた煌気オーラの塊を投げつけるだけの攻撃は、ヘムリッツの手で弾かれる。

 睨み合いを続ける両陣営。


 パジャマ乙女たちとおっさんたちの戦いは始まったばかりである。

 ちなみに、終わるのもすぐなので悲しみよこんにちは。

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