第388話 アトミルカ、完全復活
逆神六駆。
そして逆神大吾と阿久津浄汰。
3人の
「……少々肝を冷やしたな。3番」
「はっ! 了解しております!! 『
ウォーロストからの脱獄者の数をカウントする前に、3番は大量のイドクロア加工物で異界の門に蓋をする。
この『
「3番。お前たちの報告書にあった、自在に転移する門を出すスキル。あれの使い手も、恐らく今の逆神と言う少年だろう。『時空を超える古龍の戦士・ナグモ』などというふざけた報告書を読まされた私の気持ちが分かるか?」
ナグモ。
本人の知らないところでアトミルカのナンバー2にまでディスられる。
「こ、これは……! 申し訳ございません! あまりにもナグモのインパクトが強く……!! ですが、ご安心ください! この『
「何度も聞いている。あの門のようなスキルを解析して、その
2番は「ヤツらに次はない」と断言した。
逆神六駆の実力が露見してしまったのはつい先ほどの事だが、逆神流のスキルについてはデスター急襲作戦の頃から3番に調査されていたのだ。
明らかに現世に存在するどのスキルとも違う異質の存在。
多くの異世界を移動するアトミルカが発足以来蓄積しているデータにも、それを見つける事は出来なかった。
だが、それは逆に言えば「このスキルのサンプルを採取して、研究すれば良い」とシンプルな答えに3番を導いていた。
デスターで敗走する途中、出しっぱなしにされていた『
「では、異界の門の処置は任せる。私は脱獄して来た同士諸君と話をしよう」
「かしこまりました。こちらは責任を持ってこの3番が承ります」
2番は「よし」と返事をして、脱獄チームの方に向き直った。
「久しいな。3……いや、Z3番。少し痩せたか?」
「これは2番様。よもや、再びお顔を拝する事ができるとは! わたくし、感動に打ち震えております! このように、2番様のお役に立ちたいという者を集めて参りました!!」
Z3番は跪く。
彼の後ろには、Z7番とZ5番。そしてZ10番台が3人。
さらには姫島幽星を先頭に、ウォーロストの重犯罪者が4人。
彼らは全員が監察官以上の実力を持っており、この瞬間をもってアトミルカは完全に力を取り戻す。
それどころか、更に強大な勢力を得たとも言える。
「まずは回復に努めろ。3番の用意したカプセル型の治療機がある。10番、用意してやれ。体力と
【
ならば、それで脱出をすれば良いのではないかと諸君は思われるかもしれないが、思い出していただきたい。
用意周到な2番の事。
煌気座標は定まっているとしても、この【
オマケに、一度使うと壊れる使い切りタイプと言う新情報もここでお披露目。
つまり、彼らの大半はこれから地道に監獄ダンジョン・カルケルを逆走して地上を目指す事になり、日の光をその身で浴びた瞬間こそが真なる脱獄、完遂の時。
「それでは、少しばかり失礼します」
「ああ。3番の話だと、1時間も入っていれば完全に回復するらしい。精々、今は心穏やかに休め」
Z3番たちアトミルカチームがまず『
まるで棺桶が並んでいるように見えて、10番は「なんだか嫌な光景だな」と感じた。
「どうした? お前も入れ。別に、毒ガスが噴き出す訳ではない。信用できんか?」
「いえ。某は結構。
姫島幽星だけは『
2番も無理強いはしない。
「酔狂な男だな。日本人だと聞いたが? 探索員協会と因縁はあるか?」
「結果として、
「なるほどな。言うだけの事はありそうだ。期待させてもらうぞ。……名は?」
「姫島。姫島幽星と申す」
「そうか。では、姫島。得物が必要なら10番に言うと良い。イドクロア装備であれば一通り揃っている」
「それはありがたい。では、刀を。どんなに
2番は姫島の様子を観察し、「これは思わぬ拾い物だな」と頷いた。
そんな悪意の胎動を目撃している者たちがいた。
お忘れだろうか。
第11層には、サーベイランスが飛んでいた事を。
◆◇◆◇◆◇◆◇
協会本部では。
余りにも予想だにしない状況に、南雲はもちろん五楼ですら言葉を失くしていた。
だが、彼らは優れた指揮官。
すぐに我を取り戻す。
「福田! 日引! 脱獄して来た者の情報を調べろ! 国際探索員協会のデータベースで照会! 全員は無理かもしれんが、一度収監されているのだから多くの者はヒットするはずだ!!」
「了解しました。福田弘道、国際探索員協会のデータを全て受け持ちます」
「では、日引春香は日本の協会に集中して検索をかけます」
まずは情報収集と事態の把握が先決。
五楼京華の判断は正しい。
南雲は山根と一緒になって、異界の門の様子を注意深く観察していた。
逆神六駆の力なしでは既にこの状況を打破するのは不可能だと言う考えに到達するのは難しい事ではなかった。
ならば、どうにかして協会のジョーカーを現世に取り戻さなければならない。
「どうだ。山根くん。
「やー。ヤバいっすね。いつもは1南雲とか言ってふざけるとこっすけど、これ木原監察官の
南雲はデスター急襲作戦を思い出し、拳を握り締める。
あの時、もっと注意を払って『
そんな迷える南雲を奮い立たせるのは、五楼の言葉だった。
「気を落としている暇はないぞ、南雲。現状、私たちだけで対処せねばならんのだ。……お前が頼りなのだから、しっかりしてくれ。でなければ、私が困る」
「……はい! まずは、逆神くんの救出に全力を注ぎます!!」
「うむ。現場の指揮は私が引き受けよう。日引、検索作業と並行して、現地の部隊と通信を開いてくれ。それから、楠木、雷門の両監察官に命令を伝えろ。できるな?」
「了解しました! ……まずは監察官への伝達を完了! 続いて、久坂さんとの回線、繋ぎます!」
サーベイランスが緑のランプを灯す。
通信状態は良好だが、それ以外は極めて色が悪い。
それでも戦う必要がある。
五楼はマイクに向かって、事実をありのまま告げるのであった。
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