共通ルート03

あれ......?

オレは、いったい何をしていたんだっけ。

「ーーーー」

それに、ここはどこだろう?

なんだか、すごく暖かい。

しかも、かすかに良い匂いもする。

「......っほー」

というか、さっきから聞こえるのは......?



「やっほーーー!!!!!」



「うわああぁっっっっつ!?!?」

目を開くと同時に、オレはそう叫んでいた。

それもそのはず。

巫女服姿の少女が、息がかかるほどの距離でオレを覗き込んでいたのだから。

「えへへ、おはよ~~」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



年齢はオレと同じくらいか、もしくは下か。

顔立ちはまだ少しあどけない。

邪気のない目、赤子のような頬。

艶やかで健康的な桃色の唇は、白い肌によくえていた。

オレを覗き込むその仕草は、天衣無縫という言葉がよく似合っている。

......などと落ち着いて分析出来るほど、この時のオレは冷静ではありませんでした、残念!

「お前誰だ!? 何故オレを見てる!? どこから来た!? ここはどこだ!? ってか顔近い!! 超近い!!」

オレがそうまくしたてると、少女はぷくーっと頬を膨らませる。

「もう、いっぺんに聞かないでよ。私、耳二つしか付いてないんだから」

ほらほら、と少女は首を左右に振って、これ見よがしに両耳を見せつけてくる。

そのたびに肩まで伸びた茶色い髪が揺れて、オレの頬をくすぐった。

「分かった分かったから!!」

ふんわりと漂う石鹸の香り。

先程感じたいい匂いは、どうやらこの少女が発していたものらしい。

「(というか、別に耳の数は関係ないんじゃ......)」

「え? どうかした?」

「あ......いや、何も......」

少女の理論に基づいて計算するならば、一度に十人の言葉を聞き取れたことで有名な聖徳太子には、耳が二十個ついていたことになる。

教科書の飛鳥時代のページに「歴史上もっとも耳掃除に苦労した偉人」という欄があった記憶はない。

だがオレはそんな屁理屈を、少女の純真な瞳を前に言うことなどできなかった。

「えへへ、私はそら。この村に住んでるの」

「あ、え、ああ......」

意外と律儀な性格なのか、さっきの疑問にちゃんと答えてくれるみたいだ。

「なんだ、村の住人だったのか。......って村!?」

慌てて辺りを見回す。

そこはさっきまでいたはずの真っ暗な自室ではなく。

鬱蒼とした緑と澄んだ青空が広がる、ド田舎の村の......。


......古びた神社だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る