第479話

「意識が戻ったのかっ!? クロっ!!」

「ぐえぇっ!? ちょっ、苦しいからっ!!」


 あの、ほんの一時ではあるものの異世界でのタラレバを思い口ずさんだ時首に、胸に、顔に何か柔らかい何かが覆いかぶさり首に絡まり苦しさで悶えてしまう。


 そして周囲を見渡せば俺の胸でこちらを覗き込むようにして泣きじゃくるフレイム、スフィア、ターニャの姿が視界に入ってくる。


「い、生きてた……のか?」


 今回はどうやら『しくった』みたいである。


「……心配かけたみたいで、すまなかった」


 正直謝って済む問題では無い事くらいは理解しているのだが、だからといって謝らなくて良いという事でも無いため開口一番彼女達の頭を交互に撫でながら心からの謝罪をする。


 それに、そうでもしないと俺自身の良心の呵責に耐えられそうにない事も正直なところ大きい。


「……三日間」

「へ……? たあ、アーシェ……?」


 そんな俺の謝罪を聞き、横からムスッとした声が聞こえて振り向いてみるとそこには「私、怒ってます!」と言いたげな表情で腕組みをしているアーシェの姿が目に入って来る。


 当然、心配してくれたのはありがたく思うし心配かけてしまった事は申し訳ないと思っているのだが、だからといってもアーシェを見てゾクっと感じてしまうのは仕方の無い事だと、俺は思う。


 異議申し立てがもしアーシェにあるのならば今までの所業を胸に手を当て思い出して欲しい所である。


「三日間も意識を失っていたのよ? お兄ちゃん。 それに蘇生したとは言え一度は死んでたのよ? そんな謝罪の言葉だけで足りるとでも思ってるんじゃないよね? お兄ちゃん」

「あ、当たり前だ。 もちろんみんなには後日ちゃんと心から謝罪という形で何かをしてあげたいと思っている」

「何かって、どんな事でも良いのかな? 私が選んでも良いのかな?

お兄ちゃん」


 そういうアーシェの目は将棋の終盤、あと一手で勝利が決まる、まるでそんな表情をしており思わず武者震いと同時に寒気を感じてしまう。


「そうだな、出来る限りお前達の意向は汲んでやりたいとは思ってはいるのだが俺に出来ない事や非常識な事などは流石に無理だぞ? それ以外、あくまでも一般の範囲内だったら、何だってしてやるさ」


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