第392話意味では勝利に等しい成果

 しかし成る程、こうも奴隷の証が浮き上がっていると例え何も咎められなかったとしてもこれでは日の本で暮らす事は出来ないであろう事が容易に想像出来る。


「言われてみれば……それもそうだな」


 クロはそう言うと自身の所持品の中から白の法衣をストレージから取り出すとそれをコーネリアに渡す。


「………これは?」

「それは着た者のステータスを一つ隠す事が出来る能力が付与されている。着込めば奴隷という事を隠す事ぐらい出来る」


 この装備品は課金アイテムでゲーム初期に出た物である。


 しかしこの『ステータスを一つ隠蔽出来る』という能力が余りにも強過ぎた為運営はやむなくインフレを余儀なくされたある意味思い出深い装備アイテムでもある。


 当時それを装備し職業を隠蔽するというのが流行ったものだ。


 装備で能力を向上させるよりも種族差を突いた方が優位に進める為である。


「こ……これはっ!?」


 しかしコーネリアはそれとは別の、白の法衣の能力向上具合に驚きを隠せないでいた。


 クロからすれば微々たる物でしか無いのだがコーネリアからすれば自身の着ている物よりも能力が上がるこの装備品は異常なのである。


「能力はインフレ前の装備アイテムだから余り上がらないがな……」

「はあ!? これで能力が余り上がらないだと!? ………はあ、何処までも規格外だな、貴様は………いや、ご主人様とお呼びした方が良いか?」

「………名称は変えなくていい。そして聖教国にコーネリアを国のトップから下ろせば問答無用で征服しに行くと正式に文面を送っておく。勿論何か刑罰を与えてもだ」


 クロにそのつもりは無くともそれは単に従属国にするという意味でしか無く、しかしコーネリアはクロのその言葉を聞き化け物か神の化身かと思ってしまうほどの規格外なクロの強さやアイテムの効果を目の当たりにした為、初めて人間らしい一面に少し安堵する。


「戦争に負けたんだ。取り込まれないだけでもありがたいと言うべきか」


 そしてコーネリアはクロの言葉を飲み込み受け入れる。


 戦争に負けて国が残るのならある意味では勝利に等しい成果であると言えよう。


 その事実に戦争にすらならなかった今回の敗戦と国が残るという結果にコーネリアは複雑な心境と共に安堵のため息を吐くのであった。




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