第375話世界屈指の冒険者パーティー騒然暮色よりも強い

「フランボワーズ御一行がいらしました」

「入りなさい」

「失礼します」


 部屋の中から凛と響くような声がわたくし達の入室の許可を許すと案内をしてくれたメイドが扉をスライドさせて開く。


 その開き方に物珍しさを感じつつもメイドと共に部屋の中に入ると見知った顔がちらほらいる事に気付く。


「お久しぶりです。フランボワーズ様」


 そのうちの一人がわたくしの処まで来るとその者にしては珍しく丁寧な素振りで恭しく挨拶をしてくる。


「あらアイシャ・ウィルソンではありませんか。という事は後ろに控えている貴女達は確かトリプルSランク冒険者パーティー騒然暮色のメンバーでお間違い無くて?」

「はい。間違いありません」


 わたくしの問いに一切の躊躇も無く答える騒然暮色のリーダーであるアイシャ・ウィルソン。


 このアイシャ・ウィルソンとは冒険者の中でも同性という事もあり付き合いが長いのは勿論少なからずわたくしは冒険者と皇族という垣根を超えた友情の様な物を感じている。


 そしてこの騒然暮色は拠点を持たず各国を転々としている為他国に拠点を置かれる前に手綱を付けようにもなかなか上手くいかず歯痒く思うメンバーでもある。


「しかし貴女だけでなく騒然暮色のメンバーまで顔を見せるとは珍しいですわね」

「外で待機させる事よりも中で待機した方が安全であると判断致しましたので」

「あら、貴女達でしたら待機できたのではなくて?」

「冗談はよしてくださいよ。転々と行動するのでしたらまだしもあんな場所に待機すれば獣や魔獣と闘うハメになり身を隠す事は不可能ですし、休憩無しであんな化け物犇めく場所にいれば数時間で御陀仏ですよ。潜む事も出来ない上に命も危ないのなら無理にやらないに限ります。命あっての物種ですから」


 ハハハと豪快に笑う彼女を少しはしたないとは思うもそこが彼女の良さでもある。


 しかし話は明るい彼女の態度と違い深刻さは深くなる。


 もし戦争をしようにもこの場所を攻め落とせなくては新首都であるノクタスを攻め落とせない可能性は非常に高くなってくるからである。


 更に言えば此処を守護しているメイド達は低く見積もっても此処にいる世界屈指の冒険者パーティー騒然暮色よりも強いと言う事になるのだ。

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