第76話活力源




 ちなみにクロの家臣全員が同じパーティー登録するらしく、世界最強、最大規模のパーティーがあっと言う間に作られてしまったので受付以外のギルド職員はドタバタと走り回って忙しそうにしている。


 俺がもしギルド職員として働いている立場だった場合間違いなくテンションとやる気が下がる。


 忙しかろうが暇だろうが給料は変わらないというのはそういう事だと思うな俺。


 などと忙しそうにしている職員たちを見て思っていたりする。


しかし、近くで大規模な戦闘があっても逃げるどころかここの職員達は職場であるギルドに向かうとは、…心が痛むのはなぜだ?


 きっと俺が仕事意識が高い人間だからなのだろう…。


 そんな事を思いながらギルド職員を眺める。


 あわただしく働く職員達は仕事に対する気持ちの持ちようは兎も角、生前の自分を見ているようでもありつい見いってしまう。


 そしてクロはそんな職場風景から冒険者登録を済ませたセラ、ルシフェル、ウィンディーネに視線を向けると問いかける。


「しかし、他の者はともかくお前達は本当についていかなくても良いのか?」

「それは……付いていきたくないと言えば嘘になります。本当はクロ様と一緒にこの世界を旅して行きたいです。」


 クロの問いかけにセラが答えるのだが、一度言葉を止めると決意と覚悟、そして後悔と新たな目標を示した視線をクロに向ける。


 その視線を通じてセラの、セラ達の強い想いが伝わってくる。


 今何をしたいかではなく、今後どう在りたいかが重要であると。その為には今ある『付いていきたい』という感情は二の次であると。


「もうあんな思いをするのは嫌です。いつかクロ様が安心して背中を任せて頂ける存在になる為に私達は一度クロ様の元を離れて一から出直したく思います」

「……そうか」


 その想いは他の家臣達も同じらしく、いつの間にかギルドの受付フロアにいる家臣達が決意の籠った視線をクロへ向けてくる。


「そ、それまで今回のご褒美は我慢する。けどそれまでの活力源が欲しい」


 そんなルシフェルの発言にセラとウィンディーネが「ハァ!?」とルシフェルに睨みつけるのだが活力源が欲しいという内容を聞くと「そ、そうですね。今回のご褒美は我慢しようかな。れまでの活力源を……その」「なんなら身体に忘れられないほどの微熱と傷痕を付けてくださっても……」とクロに迫って来る。


 セラの求める内容はご褒美の時と全く同じピンク色をしているのだが気のせいだろう。


「活力源か…………」

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