第71話二人にはそれで十分すぎた
この魔術【ハルマゲドン】の威力は凄まじく敵味方関係なく全てに大ダメージを与える魔術である。さらに光の魔術のため敵対色魔術は闇しかないのだが、闇魔術もまた敵対色魔術は光の魔術のため結果敵対色魔術が無いのと同じであるため、強悪な魔術の筆頭である。
「マ、マジかあいつ…街一つ滅ぼすつもりなのか……っ!?」
ゲームならともかく広範囲かつ最高段位の魔術を人間が暮らしている街に何の躊躇いもなく放つアーシェに驚愕する。
そしてアーシェの攻撃に対抗すべくクロも魔術段位十の魔術を詠唱しようとした処でクロの目にアーシェが自ら放った魔術と共にこちらへ急接近して来るのが見える。
今ノクタスに落ちようとしているアーシェの攻撃は俺がたとえ罠だと分かっていても【ハルマゲドン】を防ぐと信じっきているからこその囮としての攻撃なのだろう。
そう思うと何故か幼い頃の懐かしい記憶が蘇り、その光景が今の光景と重なり少し嬉しくもある。
「まったく…世話のかかる妹だ。炎と闇の混合色魔術段位十【抹消】」
ノクタスの住人からすれば世話のかかる程度じゃすまないだろう攻撃にクロは緊張感なくそれに対抗出来得る魔術を詠唱し、放つと黒い炎がノクタスの街の上空を包む。
真上から落ちてくる光の塊がクロの黒い炎に触れた瞬間あたりは黒と白の光に飲み込まれ視界を奪われる。
そして徐々に光の奔流は収まり視界が開けてくると胸から背中にかけて熱を感じるのと同時にクロのサポートキャラクターだった家臣たちが顔を青ざめさせ、中には悲鳴を上げる者、泣き叫ぶ者、信じられない表情をしている者、様々な表情をこちらに向けてくる。
そして目の前には恍惚な表情を浮かべるアーシェがキスが出来る程の距離におり、次に自らの胸へ視線を下げるとアーシェが使っていた愛刀が自らの胸に根元まで刺さっているのが見える。
「俺に一勝もできなかったお前が……強くなったな」
「そりゃ沢山鍛錬したからね。誰にも負けないように、それこそ兄ちゃんおも超える事ぐらい強くなれるように…」
「…たっく、あんなに女の子らしかった手が今じゃ武芸者の手になってるじゃないか」
「このんなゴツゴツした剣ダコだらけの美しくない手は…嫌だよね」
「その手は努力して手に入れた手なんだろ? これはこれで綺麗だよ」
そして二人はまるで時間が巻き戻ったかのように会話をしだす。
会話こそ短いものだったのかも知れないのだが、二人にはそれで十分すぎた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます