第47話目だけはまだ死んでいない
「落ち着け、バハムートよ」
「す、すみません魔王様。私の不手際で要らぬ仕事をさせてしまいました」
「解かればいい」
そしてクロは、【黒竜の息吹】の衝撃に吹き飛ばされながらも華麗に着地し、余裕な表情が消え去り警戒心を顕にし始めたキュートスとギルアを見据える。
「ギルア、あいつの存在は我ら魔王様にとって危険な存在です、本気で行きますよ!」
「調子に乗って痛い目みるとかお前らしくもない光景に笑いたいところだが、殺したいって気持ちは同じらしいから一口のってやるぜ」
そして彼らはバハムートの一撃を見て身体で威力を思い知ってなお牙を向け倒せる相手だと立ち向かってくる。
「あれほどの高密度なエネルギーの技です。黒竜とともにその技を無効化したクロとかいう奴もまず間違いなく次の技を出すまでインターバルが発生するはずですので今のうちに攻め込みますよ! 【闇の断罪】!」
「お前らもほうけてないで攻め込むぞ! 【嵐の牙】!」
多分キュートスが分析、作戦を練りあげギルアが軍の士気を上げるというのがこの二人本来の強みなのだろう。一瞬垣間見えたそのやり取りを見たクロは素直に関心する。
たったそれだけであの二人が向こうの魔王だけではなく下の者にも信頼され、そして数多の死線をくぐり抜けてきた猛者だという事がこの一連の流れからわかる。
「確かに信頼されるだけのことはあるな。しかし、初見の敵に対し撤退せずに予測だけで相手の力量を測り闇雲に突撃するその行動は愚かだぞ! ルシファー! セラ!」
「「はい!」」
「【影縫い】!」
「【影消し】!」
キュートスとギルア、互いに打てる最大級であるキュートスの段位四の魔術にギルアの上位スキルが放たれ、その攻撃がクロに届く寸前、二人の動きが急に止まり、身動きすらしなくなる。
それはキュートスとギルアだけでなく、士気を高め雄叫びと共に進軍しはじめた魔族側の軍も時を同じくして微動だにしなくなる。
まるで時が止まったかと思ってしまえるのだが、彼らの表情から時間が止まっているのではなく彼らが止まっているのだとわかる。
「どうやら俺たちの方が貴様らよりさらに上の死合を積み重ねて来たみたいだな」
そう言いながらクロはキュートスに近づくとその柔らかそうな頬を優しくなでる。まあ死合というか試合なのだが、と心で呟きながら。
「き、貴様、そこの天使に何をさせたのです……っ!?」
身動きが取れないほぼ全員が恐怖の顔に歪む中キュートスの目だけはまだ死んでいない。
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