第44話魔王ごっこ
「寝言は寝てから言えよこの黒トカゲ。俺達は魔王様の命令でここに来てんだよ」
「ほう、それはおかしな話だな。魔王様は貴様等の身勝手な行動に怒り、自らこの場所へ表れているのだぞ?お主の言う魔王とやらはお主等の妄想じゃないのか?」
バハムートはそう言うと姿勢を低くくし、クロを掌に乗せるとゆっくりと降ろす。
周りを見渡せばドラニコやボストンが見える。
多分今まで最前線で戦って来たのだろう。
身に付けている甲冑や武器には数多の真新しい傷がついているのがここからでも分かる。
また、魔族側を見渡せば多種多様の魔族が見える。
そして魔族側の奥に空間の歪みが見られ、そこからノクタスとは違う世界が広がっておりその奥に数多の魔族と荒れた大地に厚い雲が見える。
「誰だお前? まさか黒トカゲが言う魔王様とやらはコイツじゃぁないよなぁ?」
そして周りを見渡しているクロの姿を見て五本角の赤鬼がバカにした顔を向けてくる。
「魔王か…………確かに魔王の称号は持っているが、俺以外に持っている奴がいてもおかしくはないだろう。 俺の他に魔王の称号を持つ者がいるらしいが、何故俺が貴様ごときに見下されなければならない?」
確かにクロはバハムートが言うように魔王の称号を持っている。
生前、ギルティブラッドの魔王決定戦というキャラクタータイプが魔族のキャラクターのみエントリーできる大会でほぼ課金アイテムのお陰でなんとか優勝することができ手にいれた称号なのだが。
「魔王軍少将が一人、赤鬼のガルムと知っての発言か? 小僧次はないぞ」
自らをガルムと名乗る赤鬼は今までの馬鹿にした目線と笑い顔をやめ、代わりに純度の高い殺気を放ち始める。
「たかだか黒トカゲ一匹従えただけで魔王気取りか?」
「誰がバハムート一人だといった?」
俺にとってバハムートはゲーム時代の大切なパートナーだったため一人称を『匹』ではなく『人』と数えたのだが、それに唯一気づいたバハムートから先程まで放っていた殺気を霧散させ、代わりに感極まった表情をしていた。
「お家に帰って妄想家臣と一緒に魔王ごっこしていれば死なずに済んだのになぁ小僧………なっ!?」
もう話す気も失せたのかガルムはクロに一歩近づき虫を潰すような感覚でクロの命を刈り取ろうとするのだが、その動きは途中でとまり、目の前に広がる光景に息を飲む。
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