第28話あれは大丈夫なのか?

 ここノクタス地域はノクタスの町を中心として、西にノクタス平原、東にノクタスの森、北にアルグヌス山脈が連なり、南にはナトレア国との国境線でもあるセルミア河が流れている。


 そして俺達はノクタス平原でムヌーという草食獣を狩っていた。


 ムヌーは体調二メートルと大柄だが身体はスレンダーで嫋かな動きながらも力強く疾走する。それに加え気性は荒く仲間以外の動くものはなんでも攻撃するため平原の殺し屋とも呼ばれている。


 しかしその肉は美味く、頭に生えた角は武器に加工できるためムヌー討伐依頼は後を立たず、また依頼料も割高なため毎年多くの冒険者が依頼に挑み命を落とす。


 しかし対処法が無いわけでじゃない。彼らは胡椒の匂いが苦手で、一度嗅ぐと絶対に近づこうとしないので商人達は安全に平原を渡り街から街、国から国へ商売ができるのである。


 逆に冒険者達は、この平原には主にムヌーしかいないため胡椒を所持できないので彼らには腕試しの場所でもあるのだ。


 そしてノクタス平原のさらに西に行くとトルテア海があり、その先に魔族が暮らしている大陸、ガリアン大陸があるのだとミイアに教えてもらった。


 そのノクタス平原に『ダンッ!』という音が響き渡る。


 「な、なんなんですか? その武器は。あのムヌーをいとも容易く一撃で倒すなんて!」


 そんな平原でミイアが目を輝かせながらクロに聞いてくるのだがその姿は想いをよせている先輩にタオルを渡す後輩のマネージャーのようである。


「これは魔弾銃と言い、自分の魔力を圧縮し射ち放つことができる武器だよ」


 クロの説明を聞き先ほどとは違う目の輝きを宿しながらクロが持つ魔弾銃を眺め始めた。触りたそうにしていたので貸してやると「良いんですか!?」と興奮気味にクロから魔弾銃を受け取り「だんっ! だんっ!」とどこか楽しげにクロが魔弾銃を使う仕草を真似しだすミイア。


「あれは大丈夫なのか? 魔弾とやらが暴発したりしないよな?」

「心配すんな、大丈夫だ。あれは俺以外使えないから。ミイアっ暴発の恐れもあるから銃口を人に向けないでくれ」

「す、すみませんっ」


 そしてミイアが銃口をうごかし少しでもこちらに向くと『ビックッ』っと反応し、さりげなくクロの袖を引っ張るメアは新鮮で可愛くもあるのでもう少し堪能したいのだが、銃口を他人に向けるもしくは銃口がすれ違う線上に人がいる動きはマナー違反なのでミイアにこちらに銃口を向けないように言う。

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