第15話決闘
そのため向こうからは罵声を浴びせ神経を逆撫でするしか目立った事はできないというわけか。
「分かった」
「分かっていただけましたか」
ほっと胸を撫で下ろすメアとミイア。
「ではこれが冒険者登録した証の身分証になりま……あっ!」
「おいソコの雑魚、お前に決闘を申し込む」
冒険者の印である、鈍く光る銅色の金属でできた身分証をクロはミイアから強引に受けとるとさっそく決闘を申し込む。
クロはギルド職員に連れて来られたギルドが所有する修練場の中心まで来ていた。
そしてクロと向かい合うようにドラニコがクロをバカにしたような目線を先ほどから浴びせかけニヤニヤしている。
当然先ほどの件を見ていた野次馬や話を聞いて野次馬に来た者達もドラニコ同様同じ視線を向けてくる。
賭博が行われていないのを見ると条例か何かで禁止されているのか、クロが負けると全員考えているのかのどちらかだろう。
修練場の端にいるメアは心配そうにこちらを見ており、メアの隣にいるミイアは何故か頬を染め潤んだ瞳でクロを見つめていた。
「では、ルールを説明します。どちらかが敗けを認めるか、どちらかが気絶するまでお互いに実践形式で戦って良いものとする。ただし生死に直結する箇所、首、頭、心臓は狙わない事。以上のルールを守り戦って下さい。それでは初めます」
ギルド職員のルール説明を聞きながらクロはストレージから檜の木刀を取り出す。それを見て周りがさらにクロを笑い者にしはじめた。勿論目の前のドラニコも同様である。
そのドラニコの手には黒に塗りつぶされたハルバードがにぎられている。
お前程度木刀でひねり潰してこの試合が終われば笑いものは俺じゃなくてお前だ。などとは思っていませんよ? ええ。
この時完全にクロはメアの事が頭から抜けており、やはりどこかこの世界がゲームなのだと思っていた事に後で気づくのだが、今は目の前のドラニコに一泡吹かせる事で頭がいっぱいでそこまで頭が回らないほど興奮してしまっているのは前世の境遇故か、長年このゲームをプレイしてきたゲーマーとしてのプライドかその両方か。
「初め!」
「疾突!」
ギルド職員の掛け声と共に十メートルぐらい放れていた距離をランサーのスキル、疾突を発動させ一気につめるドラニコ。
このスキルの動きはギルティブラッドのランサーがプレイヤー同士で闘う時に良く使うスキル、疾突の動きと類似しているように感じる。
ゲームなら疾突をガードされると隙が生じるため当たる瞬間に疾突をキャンセルし、投げ技へと移行するのが基本的な立ち回りである。
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