第101話 閉店出血大セール
「悪かったな!」
グラマディはマーカスたんをドグスに投げ返す。
「ホンマにこれで大丈夫なんかいな?」
自分の様子をキョロキョロと伺うキャンディは、どことなく不安そう。
「アリエーヌが言うんだから大丈夫に決まっているだろ!」
グラマディはそう言おわると、大穴の縁に転がるパイズリア―めがけて走り出していた。
「ちょい待ちや! うちも行くよって~!」
そんな大穴の中のアリエーヌ。
テコイの攻撃に手も足も出せずに防戦一方であった。
スキを見て蹴りを繰り出すも、テコイは瞬時にかわし切る。
ゴキブリ特有の瞬発力のせいなのか。
いや、理由はそれだけではない。
アリエーヌの中に恐れがあったのだ。
この戦いが終わったのち、自分は再びマーカスを愛せるのだろうか?
それどころか、マーカスに肌を許すことができるのだろうか?
魔王討伐以来、マーカスに触れられるたびに本能的に嫌悪を感じていた。
まるで汚いものにでも触れらたるかのように鳥肌が立つ。
そうそれは、ゴキブリが肌の上を歩くかのような感覚。
実は、アリエーヌはゴキブリが大っ嫌いだったのだ。
――ゴキブリを触るぐらいなら、死を選ぶのじゃ!
そんなアリエーヌが、今、目の前の豚ゴキブリと戦っているではないか。
しかも素手で!
その恐怖たるやいかなるものか。
拳を突き出す瞬間、アリエーヌの本能がそのスピードを緩めてしまうのは無理からぬこと。
だが、アリエーヌは逃げようとしない。
というのも背後でいまだうつ伏せるヒイロという男が、自分が逃げた瞬間に豚ゴキブリに食べられてしまうのを理解している。
それだけは何とか避けたい。
いや、この男だけは救いたい。
いかに嫌いなゴキブリに触られようとも、この男の盾にだけはなりたかった。
いまや、アリエーヌはその想いだけで必死に恐怖と戦っているのだ。
だがやはり、攻撃ができないのではジリ貧である。
そんな時、空から二人の声がした。
「アリエーヌはん! まいどぉぉぉぉ!」
「待たせたな! アリエーヌ!」
キャンディとグラマディの体がドスンと穴の底に降り立った。
というか、落ちてきた。
「あたたた……」
「おかしいな、俺ならこれぐらいの穴なら余裕だと思ったんだけどな……」
したたかに打ち付けた尻をさすりながら二人は頭を傾げた。
魔獣の力が戻っているのであれば、身体能力は格段にアップしているはずなのだ。
それが、着地すらできずに無様に尻餅をつくとは。
だが、落下のダメージは思ったほどない。
というか、ほとんど痛みがないのである。
もしかしたら、マーカスの血が魔獣を活性化させるには時間がかかるのかもしれない。
そう思った二人は、よいコラショと立ち上がった。
二人の尻の下から現れたのは押しつぶされたヒイロの体。
どうやらその二人は黒焦げのヒイロの上に落下したようである。
だが、動かぬヒイロ。
せっかく天から2個の美しい桃尻、いや
柔らかそうな二人のお尻。
そのお尻を包み込むスカートには、赤き液体がついていた。
それは、薄いスカートの膜を破って漏れ出した西瓜の赤き汁のよう。
スカートの上からでもくっきりと分かる尻の谷間にそって流れ落ちていく。
ああそれは、まるで破瓜の血。
愚かな虫を誘うかのようである!
あっ! ちなみに二人はまだ処女ですからね!
あくまでも比喩表現という奴ですよ! 比喩表現!
落ちた衝撃でたまたま立っていたテントで膜が破れたとかそんなギャグエロじゃないんだヨ!
だが、ヒイロのむっつりスケベ虫をしても、テントどころかタマひとつ動かすことができなかった。
打ち止め……
いや、もう、何一つ残っていない……
そう……ヒイロには、もうすでに何も残っていなかったのだ。
スッカラカンのオケラ様!
閉店出血大セールのごとく体内に残っていたなけなしの血液すらもその落下の衝撃によってすべて吐き出していた。
その姿はまさに、ホタルノヒカリが流れるパチンコ屋さんから放り出された一文無しの客のよう!
店の前で倒れ込み、もはやピクリとも動かない。
どうやらいまだ血がたれる焦げた体からは、既に魂が抜け出ているようだった。
というか、コイツ、死んでないよね……。
主人公が死んだらこの話、終わってしまうがな……
破瓜いや墓場の影で、どこぞの女神がナタの刃を研いでいるような音がしたのは、きっと気のせいなのだろう……
シュ! シュ! シュ! ドウテイはいねぇかぁ……ニタァ❤
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