第18話 挙動不審な先輩

楽しみにしてくださっていた方、しばらく投稿しておらず申し訳ありません。

詐欺にあったりとか色々ありまして、気力がなくてサボってしまいました。

ぼちぼち投稿を再開していきます( ´ ▽ ` )

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「…先輩?…ちょっと先輩、大丈夫ですか?」

「…えっ、はい!私は大丈夫ですよ!?」


飯塚に殴りかかられてからしばらく時間が経ったが、水城先輩はずっとこの調子である。

いまだに心あらずといった感じで様子がおかしい。


俺が飯塚を取り押さえた後、少しすると茶髪女子が先生を引き連れて来てくれた。

飯塚は教師が来たことがわかると逃げようと一層暴れたが、最終的に数人がかりで職員室へと連行されていった。


迷惑なことこの上ない。


俺と水城先輩も事情確認のために教師に色々と聞かれたが、やましいことは何もない。

ありのままに事情を話すとすんなりと解放された。


水城先輩はその間も顔を青くしたり赤くしたり終始落ち着きがなかった。

やはり、かなりショックを受けているようだ。


「…先輩、大丈夫だって。あいつには重い処分が下るって話だし。あれだけやらかしたんだから、学校側も先輩に危害が加わらないようにするって。絶対大丈夫だから」


流石に学校側もこのまま放置なんてするまい。

先輩を安心させようと話しかけると彼女は少し呆けた後、多少は安心してくれたのか小さく笑顔を見せてくれた。


「そう、ですね。お気遣いありがとうございます。それに村井君、今日は本当にありがとうございました。村井君がいなかったらどうなっていたことか」


そう言って水城先輩は頭を下げた。


飯塚が殴りかかったのは俺だし、先輩にお礼を言われることもない気もするが…。

まあ俺がいなくてもいつかは先輩に危害を加えていたか。

ここは無難に礼を受け取っておくか。


「気にしないでください。先輩が怪我しなくて良かったです」

「すみません。村井君に怪我もさせてしまって…本当に申し訳ありません」


怪我?俺怪我なんてしてないけど?

でも先輩から見たら俺が殴られて怪我をしたように見えたのかもな。


「先輩、俺怪我なんてしてないですよ?ほら、この通りです」


先輩が無駄に気を使わないように俺はニカっと笑って、サムズアップ。

無傷であることをアピールしておく。


「〜!」

すると何故か先輩は手で顔隠し、顔を伏せてしまった。


「え?どうしたんです??」

「す、すみません。何かこう、短期間で色々あって混乱していまして!」


よほど姿を見せたくないのかもう一方の手を俺の前に突き出し俺の視界を遮ってくる。

先輩が過呼吸気味になっているのもわかる。


…これ、大丈夫か??


「あのー先輩?保健室に行った方がいいのでは?」

「だ、大丈夫なので少しだけ待ってください」


何度か深呼吸して落ち着いたのか水城先輩は顔を上げるが、その顔は真っ赤だった。

うん。全然大丈夫そうではない。なんかダメそうだ。

これは帰って休んでもらった方がいいな。


「…あの、村井君。もし良ければ携帯の連絡先を交換してもらえませんか?」

「はぁ?」


何故、今連絡先の交換?


「え、そ、そのお嫌でしたか?今回はきっちり御礼させて欲しいですし!それにほら!狩人モンスターの話もっとしたいと思ってたんです!やってる方が少ないので!!」


やたら早口で喋る先輩。

別に嫌とかそういう問題ではない。もっと切実な問題だ。

俺は無言で先輩に携帯を見せる。


「…」


怪我はないが死人はでている。

俺のi電話は天国に召されてしまった。


考えないようにしてたんだから思い出させないでくれ…。


俺の携帯は液晶がバッキバキに割れてタップしても何の反応もしなくなってしまった。

幸い?なことに学校に友達がいないので連絡で困ることはないだろうが…。

あの野郎。マジで絶対、弁償してもらうからな!


「す、すみません!私のせいで。弁償します!?」

「いや、先輩が弁償するものではないから」


またもやあわあわし出す先輩。

いかんな。この人今情緒不安定すぎるぞ。


「別に連絡先の交換はいいんですよ。俺も狩人モンスターの話をしてみたいと思ってましたから。でも携帯がこれですから今交換はできないです」


「で、でしたら!」

先輩は慌てたようにカバンからメモ帳を取り出すと1ineのIDと携帯番号を書いて渡してきた。


「携帯が直ったら登録してください!」

「えっと」


別に携帯を直した後でいいんじゃないかと続けようと思ったが、先輩もそのことに気がついたのか連絡先を俺に握らせると「わ、私、急用を思い出しました!」と言って赤かった顔をさらに赤くして逃げるように帰っていった。


…いや挙動が不審すぎるだろ。

でも、まあ色々怖い思いをしていたから仕方ないか。


そう思い、今日の先輩の様子は忘れてあげることにした。

見ていてちょっと気の毒になるくらいだったからな。


さて、帰ってゲームの続きをするか。

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