第16話 広がる噂



水城先輩から聞いたゲームの効率的な経験値の稼ぎ方は実に有効だった。

あの先輩、狩人モンスターをかなりやり込んでるようだ。

教えてくれた方法は攻略サイトにすら乗っていない方法だったので普通に驚いてしまった。

お陰で俺はこのサーバー内での総合ランキングがとうとう二桁の順位になり、俺は一人で盛り上がってしまった。その日は最高の一日となった。


けれどそれは昨日の話。


今日登校してみれば案の定、水城先輩の話でクラスメイトに詰問される。


「おい、村井。なんでお前なんかがあの水城先輩に呼び出されるんだよ!」


俺はとうとうクラスカースト1位の陽キャ、柳田にまで声を掛けられるようになってしまったようだ。

これまで柳田とはたいして話もしたことが無いのに「この俺だって先輩とはあんまり話をしたことが無いんだぞ!」と詰め寄ってくる。


まあ別に隠すことじゃないので柳田には事実を伝える。

「…いや、たまたま落とし物とか拾ったりとか助けた事があって、そのお礼がしたかっただけらしいよ」


柳田は苛立ったように髪を搔きむしってため息をつく。

「そんなことでわざわざ教室に来てお礼を渡してくれるのか?だったら俺だって落とし物拾いたいわ。お前一生分の運使い果たしたな」


なんでそれくらいで一生分の運なんて使い果たすことになるんだよ。

だいたい俺が助けた側なのに。

柳田は俺の冷たい視線に気が付かないようでそのまま話を続ける。


「お前は知らないのかもしれないが水城先輩と言えばこの学園のアイドル。成宮千紗、山本一花と並んで、この学園で3指に入る美人なんだぞ!そんな人にお前ごときが声をかけて貰えるなんて有り得ない事なんだよ」


そんなこと言われても知らんよ…。

と、いうか昨日も聞いたけど本当に学園のアイドルとか言われてるんだなあの先輩。

確かに顔が整っていて綺麗な人ではあったが…。

なんだろう。アイドルって言われるなら歌がうまかったりするのだろうか?


「おまえ、これを機に水城先輩を狙おうなんて考えてないだろうな?身の程はわきまえとけよ?水城先輩は男が嫌いだから、お前みたいな陰キャじゃ絶対なびかないからな?俺レベルだっていつも虫けらを見るような目で見られるんだからな」


…それお前が嫌われてるだけじゃないか?と思ったが面倒だから口に出さない。

俺は特に男嫌いって印象は受けなかったぞ?


「忠告どうも。お礼も終わったし先輩と関わることはもうないから安心してくれ。相手も俺に興味なんてないよ」


会話が不毛なので適当に切り上げることにする。

柳田は一応は納得したようだったが、いつから近くにいたのか篠崎が俺の事を見つめていることに気が付く。どうやら篠崎は先ほどの会話を聞いていたらしい。

篠崎が声を掛けてくる。



「ねえ、村井君のほうはどうなの?」

「どうって?」

「村井君は水城先輩に興味あるの?」


篠崎はいつになく真剣な顔をして話しかけてくる。

興味があるか無いかで言えば当然ある。だってあの人狩人モンスターしてるし。


でも興味あるなんていったらまた柳田がまた突っかかって来てしまいそうだ。

なんて答えようか考えていると悲しそうな声色で篠崎が先に口を開いてしまう。


「…私見たの。昨日村井君が水城先輩にデートに誘われている所。二人とも凄く楽しそうにしてた」


ざわっ!

どよめく周囲。そしてまた俺の席に戻ってくる柳田。


篠崎!お前なんて爆弾発言してくれるんだ!

適当な事を言うな!


「村井ぃぃぃ!どういうことだ!!」

叫ぶ柳田。


「いや、デートになんて誘われてないから!」

「でも水城先輩チケット渡してたよね?」

「そうだけど。チケットは受け取ってない!」

「…デートを断ったってこと?でもその後あんなに楽しそうにしてたのに??」

「だからそもそもデートに誘われてないんだって!」

「…でも水城先輩チケット渡してたよね?」

ループする篠崎。


「おい、村井!ちゃんと詳しく説明しろ!場合によってはただじゃ済まさないぞ!」

群がるクラスメイト。


ああ、面倒すぎる。なんでこうなるんだ…。


チケットはそもそも先輩が出る吹奏楽部の公演で、他の人を誘えるようにチケットを渡そうとしてくれたという話を馬鹿丁寧にする羽目になった。

それだけ丁寧に説明してやったにもかかわらず、クラスメイトは信じない。

何なんだよコイツら…。


彼らは自分たちの都合の良いように解釈し、あっという間に校内に噂を広げてくれた。

『水城先輩が村井をデートに誘っていた。水城先輩は村井と付き合っている。』


困ったことに水城先輩が俺にチケットを渡そうとしている所は篠崎以外にも目撃されており、その噂はそのたびに信ぴょう性を増していった。


そして、その噂は水城先輩に壁ドンしていたあのヤバい先輩の耳にも入ることになる。


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