【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第795話 しまった。もう、藍大の甘えさせ上手
第67章 大家さん、月に行く
第795話 しまった。もう、藍大の甘えさせ上手
5月13日の未明、藍大は宇宙を背景に地球を見下ろす白い螺旋階段の前に立っていた。
「創世神界の入口か。マキナ様に呼ばれたらしいな」
「今日はサクラもいるね」
「ここが私の生みの親の神域なんだ?」
『サクラとマキナ様の顔は確かに似てたよ』
藍大の他には舞とサクラ、リルがいた。
前回はまだサクラが神になっていなかったため、この中でサクラだけが創世神界に始めて来たことになる。
「リル、今日も頼んで良いか?」
『勿論! さあ、みんな僕の背中に乗って!』
「わかった」
「よろしくね~」
「よろしく」
リルは尻尾を振って早く背中に乗ってくれとアピールし、藍大達を背中に乗せて一気に階段を駆け上った。
「もう到着したの?」
「前回よりも早かったね~」
『ワフン、今回はご主人の力も借りたんだよ』
「よくわかったな。愛い奴め」
『クゥ~ン♪』
藍大はリルの背中から降りてわしゃわしゃとその頭を撫でた。
藍大は前回のメンバーにサクラが増えたから、リルの負担を考慮して好感度バフで強化したのだ。
それを感じ取ったリルは張り切って階段を駆け上ったので以前よりも早く頂上まで来れた訳である。
神聖で巨大な扉に藍大が触れようとしたところ、前回とは違ってロックが勝手に外れて扉が自動的に開かれた。
「勝手に開いたな」
「そうだね」
『マキナ様がご主人の接近に反応してロックが解除されるように調整したみたいだよ』
「創世神様の居住地すら顔パス。流石は主」
サクラは藍大がマキナに高く評価されていると知って機嫌が良くなった。
扉が開いて藍大達はその奥に進み、たくさんの映像が背景になった空間に入った。
「いらっしゃい」
「今日は俺達の後ろから登場しなかったな」
「おふざけすると今日の話の重要性が薄れそうだったからね。それはそれとして、初めましてだね、サクラ」
「初めまして。私は貴女をお母さんって呼ぶべき?」
サクラはマキナをなんと呼べばいいのかわからなくて訊ねてみた。
「うーん、お母さんと呼ばれるのも良いけど名前も呼んでもらいたい気持ちもある。よし、マキナ母さんと呼んでもらおうかな」
「マキナ母さんね。わかった」
「うんうん。サクラは素直で良い子だね」
「マキナ母さんは私をマネーバグに襲わせた悪い母親だけどね」
「うぐっ、そうだった。本当にごめんなさい。あれは完全に私が悪かったよ」
マキナはサクラに言い訳せずに謝った。
自分のミスを棚に上げることもなければ言い訳もしなかったので、サクラはよろしいと頷く。
「あれのせいで虫が大嫌いになったけど、マキナ母さんの謝罪は受け取った」
「まあまあ。マキナ様が言い訳せずに謝ってくれたんだしその辺にしてあげて」
「わかった。マキナ母さん、主に感謝すること」
「勿論だよ。藍大、サクラをここまで育ててくれてありがとう」
「別に俺はマキナ様のためにサクラを育てた訳じゃない。でも、お礼は受け取っておく」
藍大がサクラを今の実力まで育てたのは自分のためであり、サクラのためでもあった。
初めての従魔に思い入れがあるのはテイマー系冒険者として当然のことで、どの従魔よりも藍大の信頼が厚いのはサクラだ。
リル達も頼りにしているけれど、やはり一番の従魔はサクラである。
サクラは藍大が言外に訴えた意図を察して藍大の腕に抱き着いた。
それを見てマキナは安心したらしく微笑んだ。
「藍大がサクラと仲良くやれてるようで良かったよ」
「私も藍大と仲良しだよ~」
『僕も~』
舞が藍大の反対側の腕に抱き着き、リルは藍大の正面から藍大に頬擦りして甘えた。
「藍大達が仲良しなのはよくわかったよ。というか、それはいつもぼっちな私への当てつけかな?」
ムスッとした表情のマキナを見た時、藍大はマキナが甘える順番待ちをしている家族と重なって見えて自然と口が動いてしまった。
「おいで」
「え?」
「あっ、ごめん。今のなし」
「取り消しは認めないよ」
次の瞬間には藍大がマキナのいた場所で正座しており、マキナは藍大に膝枕されていた。
「むぅ、マキナ様が手強い」
「速過ぎて目で追うのがやっとだった」
『マキナ様、できるね』
藍大には何が起きたのかわからなかったけれど、舞達はそれを正確に理解していた。
「マキナ様、気が付いたらマキナ様を膝枕してる状態ってのはいかがなものかな? 俺から言っといて変かもしれんけど、何か重要な話があったんじゃないの?」
「しまった。もう、藍大の甘えさせ上手」
「「『わかる』」」
「わかっちゃうのかよ」
マキナの言い分に舞達は納得したように頷いており、藍大だけが苦笑していた。
気持ちを切り替えてマキナが咳払いした瞬間、藍大はマキナを膝に乗せた状態から舞達の隣に戻っていた。
マキナが力を無駄遣いしているように思ったが、藍大はツッコんでこれ以上話の邪魔をしないようにした。
「さて、藍大達に来てもらったのは月にいる邪神が活発になったことを知らせるためだよ。月のダンジョンから感じられる邪気が増してるの」
「邪気って迦具土や菊理媛の体のコントロールを奪ったあれ?」
「それだよ。藍大達が菊理媛の体から邪気を消し飛ばしたのがスイッチになったみたい。自分に危害を加えられる敵がいるって認識したから、警備の強化と反撃に着手したって感じだね」
「警備の強化はダンジョンの難易度を上げるってことだろうからわかる。だけど反撃がわからない。月から何かできるのか?」
藍大は邪神がどんな反撃を仕掛けて来るのかわからずマキナに訊ねた。
警備の強化は容易に想像できるけれど、マキナが手を焼く邪神なら自分の予想を上回る反撃を仕掛けて来る可能性があるから素直に質問したのである。
「前回、邪神が地球の各地にダンジョンを創り出したことは話したよね? 簡単に言うと”アークダンジョンマスター”以下の称号の持ち主が管理するダンジョンが乗っ取られてスタンピードが起こる」
「ヤバくね? そんなのほぼ全ての国でスタンピードが起きるじゃん」
「そうだね。でも、藍大が神々を復活させてくれた国はそれらの神々の力で邪神の干渉を退けられるから、本当にヤバいのはまだ神が1柱も完全復活してない国だよ」
「日本がセーフなのは不幸中の幸いだな。今までの行動のおかげで助かった」
マキナの言う通りならば日本のダンジョンが邪神に乗っ取られることはない。
それを聞いて藍大は今までの自分達の行動が報われたとホッとした。
「藍大達は私が期待した以上によくやってくれてるよ。日本とCN国、I国、IN国、N国、G国、EG国はスタンピードにならないだろうね。でも、それ以外の国は危ないから藍大達は起きたらそれらの国に注意してあげてほしい」
「了解。あれ? CN国ってセドナ様を復活させたんだ?」
「リルの天敵達が頑張ったおかげだね。日付が変わる前にセドナは復活したよ」
『天敵・・・』
「よしよし、怖くない。怖くないぞ」
体を強張らせたリルを藍大は優しく撫でて落ち着かせた。
落ち着いたリルはマキナに抗議する。
『もう、マキナ様ってば酷いよ。僕は邪神なんかよりも天敵の方が怖いんだよ?』
「ごめんね。私の言葉選びが悪かったよ」
「邪神より畏れられるモフラーとはいかに」
「リル君からすれば邪悪な敵って得意分野だもんね~」
リルの抗議されて謝るマキナを見てサクラは真奈達を恐ろしく思い、舞はリルが邪神を恐れない理由に納得した。
藍大は話が脱線し始めたので軌道修正を行う。
「マキナ様、俺達は神の復活してない国に連絡を入れたら月に向かった方が良いか?」
「その方が良いと思う。邪神を相手に守りに入るのは危険だよ。だってこちらは守らなきゃいけないのに、あちらは壊すことだけを目的として好き勝手やれるんだから。攻撃は最大の防御だよ」
「そうか。月末まで時間があれば今見つけた神々を完全復活させたんだけど、そこまで待ってたら地球の大半の国が滅びそうだ。準備をしたら月へ行くよ」
「予想を外してしまってごめんね。邪神の負の感情は私が想像してたよりもずっと強いみたい。君達のように成功を積み重ねた者達がいる反面、それを妬む者達の感情が邪神の糧になって事態の進行を早めてるみたいなんだ」
「自分が上手くいかないことを他人のせいにするなよなぁ。とりあえず、今日起きて準備を終えたら月に向かうよ」
「お願い。私も問題にならない範囲で藍大に力を与えるから頑張ってね」
そのように言った後、マキナは人差し指と中指で藍大の額をトンと叩いた。
それによって藍大を中心に光に包み込まれ、そのまま藍大達は眠りから目覚めるのを感じた。
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