第46話 ノザレ王国は怒り狂ったシャラの前に消滅させられました。

その頃、ノザレの王宮ではエイベル・丿ザレ国王とその甥のマーマ王国第二王子のアーロン王子が、クローディアが誘拐されて連れてこられるのを今か今かと待っていた。


「遅いな」

アーロンが待ちきれないように言う。


「アーロン様。下心が丸わかりですぞ。少しは自重なさいませ」

「何を言うのだ。叔父上。私は作戦の成功を心待ちにしているだけだ」

「左様でございますか。鼻の下を伸ばされているように見えますが」

「何を言う」

「まあ、クローディアなる娘は絶世の美女らしいですからの。しかし、シャラを屈服させるまでは手出し無用に願いますぞ」

「ふんっ、それは判っておるわ」


つまらなそうにアーロンは言った。マーマ王国の王子で軍の司令官の一人であるアーロンは女など選り取り見取りだった。侯爵家出身の妻はいたが、それ以外に何人も女がいる。見た目が良ければ自分の女の一人にしても良いだろうとアーロンは楽しみにしていたのだ。



「しかし、ちとかかりますな」

国王も少し時間がかかり過ぎではないかと不安に思い出した。



その時だ。


ドカーン


という凄まじい音が王宮中に響き渡った。



「な、何事だ」

アーロンが言った。


誘拐に成功すれば王宮の中庭に転移してくるように魔導師らには指示していたはずだ。


しかし、あの音の方角が違うような気がした。


「も、申し上げます。王宮の城門が破壊されました」

「何だと」

エイベルは叫んでいた。


ドカーン


次の瞬間王宮全体が大きく揺れ、国王とアーロンの二人は地面に投げ出されていた。




シャラは配下の者約100名を引き連れてノザレの王宮の前に転移した。


そして、1撃で城門を弾き飛ばしていた。


「な、何奴だ」

壊れた城門の横から兵士たちがわらわらと飛び出してきた。


「ふんっ。雑魚どもに用はないわ」

シャラが手を一閃させた。


その手から爆裂魔術が放たれて兵士たちが一瞬で吹き飛ぶ。


「目標は国王の首だ。あとの雑魚はどうでも良い。チェレンチーは半数を率いて周りを固めろ」

「了解しました」

シャラは王宮の中に向かってゆっくりと歩き出した。


前から向かって来る兵士たちは剣でたたっき斬る。


そして、メインの建物を認識するとそれに向けて爆裂魔術を放った。


王宮の建物の正面に吸い込まれた魔術は中で爆発する。


爆風が消え去った時に、建物は半壊していた。


「やりすぎたか」

シャラは少し後悔した。下手したら今の爆発に巻き込まれてしまったかもしれない。



国王のエイベルは唖然としていた。


爆発の終わった後は建物が壊れていたのだ。


壁という壁がなくなっており、天井が消滅していた。



「貴様がノザレの国王か」

その動くエイベルを見てシャラが言った。


「貴様は何奴だ」

「貴様に名乗るつもりはない。良くも私の娘に手を出そうとしたな」

「貴様。我々に逆らうというのか」

エイベルは叫んでいた。



「それは私が言うセリフだな」

「我々に逆らってただで済むと思うなよ」

国王はなんとかして立っていた。しかし、その膝は恐怖で震えていた。こいつに逆らうとダメだと頭の中では警報が鳴り響いていた。


「そのセリフも聞き飽きた。そっくりそのまま返してやろう」

シャラは手を振り上げた。


「やってしまえ」

エイベルは周りにいた騎士たちに言う。

騎士たちは一斉にシャラに襲いかかった。


「死ねええ」

シャラが爆裂魔術を発した。それは騎士たちを一瞬で巻き込んで国王もろとも爆発させていた。


「ちっ」

シャラは舌打ちした。またやりすぎたのだ。あっさり殺してしまった。



「ヒィィィぃ」

その歩いてくるシャラを見て、一人生き残ったアーロンは後ずさった。


「何だ。まだ生きている雑魚が残っていたのか」

ニヤリと笑ってシャラが近づいた。


「まて、来るな。話せは判る」

「ふんっ、下らん。貴様も国王のもとに送ってやろう」

シャラはニヤリと笑った。


「な、何を言う。貴様、俺を殺して娘がただで済むと思うなよ。娘は今頃別働隊に捕まっている頃だぞ」

「な、何だと」

シャラは男の胸ぐらを捕まえて、持ち上げた。


「止めろ。俺はマーマ王国の第二王子だ。俺に何かあれば娘の命は無いぞ」

「そう言う戯言は地獄で言え」

シャラはその瞬間爆炎魔術を放っていた。


一瞬で王子もろとも火が王宮を包んだ。


ここに500年続いたノザレ王国は消滅した。

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