4 hotel

protagonist: architect - sentinel:


 僕は衛理と真依先輩を連れて、地下の武器庫にたどり着いた。そこの巨大な武器庫で、衛理は並べられた武器たちを確かめながら訊ねてくる。

衛理「なるほど、木を隠すなら森、人を隠すならホテルってわけね。それで?ここの従業員のみなさんに聞くわけにもいかないから、ここの武器のトレーサビリティでも使って未冷の商流でも追うつもり?」

 僕は首を振った。

主人公「本当はそうしたい。ただ、現状僕たちの抱える監視網のなかには通貨による取引情報トランザクションはあれど、物資そのものまでは含まれていない。あと、武器は基本的に国のなかでは移動を厳しく制限されているはずで、国の情報に入っていなかったからほとんど追跡は困難だ」

 真依先輩が銃のシリアルコードを確認しながら続く。

真依先輩「そういう密輸やってた暴力団も、あなたが軒並み捕まえちゃったからね」

 僕はため息をつく。

主人公「彼らを栗原さんが調べてくれたけど、自分たちが未冷先生に仕えていたことを把握しきれてはいなかった。依頼は細分化されて実行されている」

衛理「私たちへのかつての任務のように?」

 僕はどうにか頷く。

主人公「ああ……だから、はじめから疑うべきだったんだ。自分たちのしていることが、最終的にどこに行き着くのか」

 真依先輩も、衛理も俯く。

 その時、だれかがやってくる。振り返ると、やってきていたのはホテルのコンシェルジュのお姉さん、明穂さんだった。彼女は何か思い悩むように、あるいは祈るように両手を握り、そして言った。

明穂「あの、未冷様の居場所、私わかるかもしれません」

 僕は呆然としたけれど、すぐ訊ねる。

主人公「あなたがもし誘導する任務を先生から与えられているとしたら?」

 彼女は首を横にふる。

明穂「私はただ、未冷様にもう一度ここで暮らしてほしいだけ」

 僕は訊ねる。

主人公「なぜです」

明穂「教え子のあなたがきてから、彼女はすごく楽しそうだったから」

 僕は奥歯を噛み締める。彼女の笑顔を思い出す。あの楽しげな彼女は、嘘からは程遠かった。そんな追憶の中、明穂さんは言った。

明穂「みなさんの学校の制服は、私もよく知っています」

主人公「なぜ?」

明穂「私も、同じ高校に行っていたからです。そこの資本提携された大学を出て、武器庫とホテルの管理の仕事を遂行しながらここのコンシェルジュを務めてきました。私は未冷様のお父様達に選ばれたのです」

 僕は衛理に訊ねる。

主人公「学校は、いまどうなっているの」

衛理「どうなってるって、そりゃとっくに休校は終わって普通にやってるよ。私たちは国家公務員になるしかなかったから行けてなくて……」

 そして、衛理は何かに気づいたようだった。そして、真依先輩も。だから僕は振り返り、お姉さんに訊ねた。

主人公「未冷先生の居場所は、僕たちの通っていた高校ですか」

 彼女は頷いた。

明穂「おそらく」

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