15 spy
executer:
私はバスが来るのを待っている。そこに彼はやってきて言った。
主人公「相変わらず似合ってるね、衛理」
私は笑う。
衛理「あんたにはもう見慣れたんじゃないの」
いつものようにランニングウェアを身に纏い、ラケットバックを抱えているその姿を自分で見回しながら。
主人公「言えるうちに言っとかなきゃって思ってね」
そういいながら隣に座る彼に、私は言う。
衛理「明日も明後日も、あんたはそれを言える。そのために私は、
主人公「心強いな」
不安そうでもなく、そう朗らかに笑う彼を見て、私は言っていた。
衛理「聞けるうちに聞きたいんだけど」
なに、と促す彼に、私は訊ねる。
衛理「なんであんたは、こんな仕事を……」
彼は微笑む。
主人公「もうすでに、死んでいるから?」
私はため息をつく。
衛理「私の言ったこと、まだ根に持ってる?」
主人公「まさか」
衛理「じゃあ、金儲けのため?」
主人公「その逆さ。間違った金儲けを、終わらせるためだ。君のご両親の、
呆然と、私はつぶやく。
衛理「知ってたんだ……」
主人公「いや、君の反応で気づいた。まさか君のご両親が、公安だったなんて」
私は座り直し、
衛理「隠密行動は、スパイの鉄則でしょ?」
主人公「僕はスパイ一年生だからよくわからないけれど」
衛理「あんたや未冷のほうが、よっぽどスパイらしいよ。
私は遠くの船たちを見つめながら言った。
衛理「私も、あんたのように未冷に雇われた。パパとママが死んだ、そのあとにね」
彼は少し驚いたあと、こう訊ねてくる。
主人公「それが、こんな仕事をはじめた理由?」
衛理「ううん、よくわからない。実はね、私もあんたと同じで、パパやママがいなくなっても特に何か思ったことがあったわけじゃなかったんだ」
それじゃどうして、とおもむろに訊ねる彼に、私は答えた。
衛理「未冷が寂しそうだって、思ったから」
未冷を思い出す。どこかいつも寂しげな彼女を。
主人公「彼女の両親も、すでにいないのか」
衛理「いいえ、その逆。どうも距離を置いているみたいで」
彼は遠くをみやる。
主人公「なんだか、わかるよ。僕たちの先生、だからなのかな……」
私は笑う。
衛理「迷惑だよね。自己投影なんて」
彼はおもむろに、こう答えた。
主人公「君の自己投影は、未冷先生や僕を助けてくれたと思う」
やがて私は笑った。
衛理「あんたたちがそんなんだから、私は戦うんだろうね」
彼は微笑んでくれる。
主人公「迷惑をかけるよ」
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