22:00
昼飯を食べた後、買い物をしてから奏は家に帰っていった。
今日は母親の誕生日らしい。
プレゼントは仕事で使えるボールペンで、結構いい値段の物を買ってたからバイト頑張ったんだろうな。
楽しい誕生日を過ごしているんだろうなと考えながら俺は1人、駅前である人を待つ。
駅前の大きなスクリーンに映る星座占いを何度も見て暇を潰していると肩を叩かれ、振り向くと人差し指が俺の頬に当たる。
一「るあくん、遅い。」
るあ「ごめぇーん。寝てたぁ。」
るあくんはこの街で出会った遊び仲間。
俺のすべての憧れが詰まった人。
前髪を上げてエアリーなパーマを当てていて、今は溶けてしまいそうな淡いピンク色の髪をしている。
そして、薄くて少し上の所が尖った耳にはたくさんのピアス。
極めつけは、右の目尻にホクロのような小さい薔薇のタトゥーが入っていて、自分の
俺はまだ自分の身をいじる覚悟がなくて怖気ついてしまうから、周りにいる人がしている自分が好きな見た目を見て楽しんでる。
一「新しいピアスじゃん。いいね。」
るあ「わぁ…!いっくんって本当に俺のこと見てるよね。嬉しい♡」
るあくんはそのまま俺の隣に座ってタバコを取り出そうとする。
一「路上喫煙は禁止ですよー、お兄さん。」
るあ「いっくんのために走って来たんだからいいじゃん!頑張った今日の俺に初のご褒美だよ。」
俺はタバコを咥えようとする、るあくんの唇に俺の唇を当てる。
一「俺からのご褒美。病気の元は箱にしまって店入ろ。」
るあ「…うん!」
るあくんのご機嫌が戻ってよかった。
俺はタバコの匂いがすると父親を思い出すので、なんとか周りの喫煙を止めることが当たり前になっていた。
少し歩いて俺は、るあくんと一緒に1杯200円でカクテルが楽しめる店に入る。
今はピークの時間だからか席がなく、立って呑んでいる人が多い。
るあ「あぁん。座りたかった。」
一「席とってる女の子に話しかけよっか。」
るあ「そうしよー。」
るあくんとバーカウンターでドリンクを作ってもらってカードで精算する。
るあ「いつもご馳走してくれてありがとう。」
一「ううん。いつも俺のわがままに付き合ってくれてありがとう。」
俺はドリンクを持ってさっきから何度も目の合う女の元に行く。
一「こんばんは。お邪魔していい?」
「…いい?」
「んー…、どうぞ。」
いい友達を持ったね。
こんな見ず知らずの男と気安く話しちゃダメだよ。
俺はるあくんにいいお友達が座ってるソファー席に座ってもらい、ご機嫌をとる。
「座る?」
俺と何度も目が合っていた女がカウンターチェアから立ち上がろうとする。
一「大丈夫。それか君が俺に座る?」
「え?」
一「俺の脚、座り心地いいよー。」
冗談を言いながら女の様子を見る。
…まんざらでもないか?
でも出会ったばかりだからか、目が合ってたとは言え警戒しているのか戸惑うような顔をする。
一「俺、いちって言いまーす。この子はるあくん。2人は?」
俺はその女の椅子に手をかけて距離を縮めて、心の間合いを詰める。
「ミアとメイコ。」
一「へぇー、可愛い名前だね。」
俺の腕の中にいる女の顔を覗き込んで話す。
するととても恥ずかしそうに目を逸らし、頬を染めて愛想笑いをする。
すごい分かりやすくてめっちゃ楽。
るあ「2人は何繋がりー?」
メイコ「学校の友達。」
るあ「だからお肌綺麗なんだね。おじちゃんうらやまぁ。」
と、るあくんは自分の弾力がまだ残る頬を触って羨ましがる。
メイコ「るあさんは何歳なんですか?」
るあ「さん付け嫌い。タメでいいよ、敬語たるい。24ちゃいですぅ。」
るあくんは相変わらず酒弱いな。
まだ1杯も呑み切ってないのに甘えん坊タイムスタートかな?
メイコ「分かり…った。私たちとそんなに変わんないじゃん。」
ミア「いちくんも?」
一「俺はるあくんの2つ下だよー。」
るあ「みんな若ぇや!」
まあ本当は20歳なんだけど、るあくんと出会ったのが2年前だから辻褄を合わせないといけない。
一「2人は?」
ミア「私たちは20だよ。」
20歳か…。
未成年が言う歳No. 1。
今日は朝まで外コースだな。
るあ「ぴちぴちだねぇ!おちゃけ、おいちぃ?」
ミア「うん!」
メイコ「一番お兄さんが始めに酔っちゃってる…。」
一「るあくんの可愛いとこ。おじちゃんなのにお酒弱いの。」
少しめんどくさい女をなだめつつ、俺は酒を呑み進める。
るあ「おじちゃん肝臓弱いの。…嫌い?」
るあくんの甘えん坊が始まった。
この子たちはどう思うだろう…。
俺は1人酒を呑みながら静かに観察する。
メイコ「…なんでお酒呑むの?」
ミア「嫌いじゃないよ。」
るあ「俺の栄養剤だからだよ。ありがとう。」
るあくんは隣に座ってる女に顔を近づけて俺たち側には聞こえない声で隣にいる女に何かを耳打ちする。
すると女はそっかと言って1度頷き、るあくんを見る怪しむ目をやめて輝かせ始めた。
るあくんはおじちゃんのくせに、しっかり女の心掴まえるのうまいんだよな。
俺もそんな風に出来たらいけどまだ全然だ。
るあくんは女の輝く目を見ると満足そうに微笑み、女の肩に寄りかかり酒を呑み始める。
ああいうちょっとめんどくさい女も、るあくんは自分のペースに巻き込んでいく。
こんなにしっかりしてんだからきっと酔ってはないんだろう。
でもテーブルの向こうで座って酒を楽しむるあくんは酔ったおじちゃんにしか見てない。
るあくんの雰囲気がるあくんの存在を許すようにしてる感じ、俺もそんな風になれたらいいなと思いながら俺は
→ Mama
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