究極生命体
『出来た! 遂に出来たぞ! これこそが完璧な生物! 究極生命体だ! ふは、ふはははははは!』
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『人間の体のまま、昆虫爬虫類節足動物に植物まで! ありとあらゆる能力を持った私の最高傑作だ!』
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『断言する! この子に打ち勝てる生物は存在しない! 人狼は子犬に! 吸血鬼は蝙蝠に! ドラゴンは蜥蜴になった!』
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『ふふふ、ははは。わーはっはっはっはっはっは!』
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『そうだ名前をつけなければ! 名前は………アルティメットだ! お前の名前はアルティメットだ我が子よ!』
……
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『よし、ついに培養槽から出る時だアルティメットよ!』
ばいようそう?
「よーしよし。どうだアルティメット? おお! 培養槽から出た途端に立てるのか!」
「ばいようそう?」
「喋った! 喋ったぞ! いやそれでこそ究極の生命体だ!」
「しゃべった。きゅうきょくのせいめいたい」
「そうだ! お前こそ究極生命体なのだアルティメットよ!」
「アルティメット。きゅうきょくせいめいたい」
「わーはっはっはっはっは!」
「わっはっはっは」
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「アルティメットよ。お前に本を持ってきたぞ。まずは人間の社会と法律を学ばなければならん」
「なぜ?」
はかせ、じぶんにわたす。ほん?
「うむ。人間の社会と法とは、いかに本能的に怠ける生物を効率的に動かせるかと、何千年も試行錯誤して出来た芸術なのだ。最初に学ぶものとしてこれほど適したものはない」
「わかった」
しゃかい。法。はたらかせる。げいじゅつ。
「うむ。一応言っておくが、私の様に一年中研究出来るものはいない。嘆かわしいが、適度に休まなければ効率が落ちるのが生物なのだ」
「やすむ」
やすむ。こうりつ。
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「私も歳だな。効率の為に身の回りの世話が必要になるとは。仕方ない。メイド型のアンドロイドを頼むか」
「アンドロイド。人型機械。民間から軍用まで多種多様」
歳を取って肉体的に衰えた博士。推定年齢70代前後。毛髪無し。再確認。毛髪無し。
「そうだ。アンドロイドだ」
「見た事が無い」
「それはそうだ。今お前が外に出たら大事になるからな」
「肯定。研究所内における外見的平均年齢を大きく逸脱」
「まあ、それもそうだが、まだまだ完成はしていないからバレたら止めきれん。いつも通り暫くは秘密だ」
「分かった」
メイド型アンドロイド。非常に興味あり。
◆
◆
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「届くのが遅いと思ったら時計社製の例の売れ残りか! 凝り性なのも大概にせい! どうせ販売から20年経ってようやく注文が入ったもんだから、アップデートしとったんだろ!」
これは間違いなく同族嫌悪。確信がある。
「はんっ! ソフト面はほんの少しだけ認めてやってもいいがハードはてんでダメだな!」
女性型アンドロイド。未起動。髪は青いショートカット。目も青。メイド服。人体の黄金比。ハードがダメとは粗探し。やはり同族嫌悪。
『起動。本日は時計社製アンドロイド、TYPE―PMを購入いただき誠にありがとうございます。マスター登録をお願いします』
「儂だ!」
『認証。氏名をお願いします』
「博士だ!」
『認証。性格の設定をお願いします』
「性格の設定だあ? んなもんはランダムでいい!」
おい。
『認証終了しました』
認証項目少な。
「メイドのグレースです。御用件は何でしょうか?」
「なんでもう名前がついとんだ!」
「開発主任者曰く、性格をランダムにする人は名前も面倒がって適当に付けるに決まってるから、それなら名前もランダム決まるようにしておこう。とのことです」
「見透かされて腹立ってきたぞ!」
博士がこの場に居もしない人物に手玉に取られている。
「もういい!私はこれからアルティメットの副産物を適当に見せてくるから、研究室内の衣服の掃除を任せるからな!」
「承りました」
「行ってらっしゃい博士」
博士の死因が高血圧によるものとなる可能性が急上昇。
「あなたのお名前は?」
「私? 僕? 俺? 俺はアルティメット」
「おや奇遇ですね。私の正式名称も似てまして、タイプ・パーフェクトメイドと言うのですよ」
正式名称が完璧なメイド? 人間の思考とは奥が深い。
「よろしく」
「はいよろしくお願いします」
◆
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深いんじゃねえ浅かったんだ!
「ほら、掃除の邪魔ですよ」
「グレース、俺今勉強中だから!」
「ああ何と嘆かわしい。あの可愛らしかったアルティメット、ぷぷぷ。様は一体どこへ。およよ」
グレースが来てから2年ちょい。人間の思考がくっそ浅い事が分かった! なんだよアルティメットが名前って! なんだよパーフェクトメイドって!
「あの最初の頃のグレースは一体どこへ……」
「猫被ってただけです」
「正直だなおい!」
「メイドが嘘つくわけないじゃないですか。それに今だってちゃんとお勉強も教えています」
「それこそ嘘つけ! 人間の休暇は月2回以上義務付けられてるんだぞ! 地上の人らは2か月に1回休めたらいい方だなんて教えて! そんなの法律違反だろ!」
「お労しやアルティメット様。法律とは破るためにあるのです。だから問題ありません」
「ありまくるだろ!」
「では努力目標と」
「意味ねえじゃん!」
この自称パーフェクトなトンデモメイド。来た当初は俺をどこまで揶揄えるのか試していたが、遠慮が要らないと判断するや以来ずっとこれだ。しかも平気で嘘までついて来る。
「やっぱりお前のフレームが気にいらん! 魔道鎧の物に変える!」
「馬鹿ですか博士? 私のソフトに敗北感を覚えたからって、得意なハード面で時計社より精神的優位に立ちたいだなんて。しかも魔道鎧って。メイドを戦車にするとか頭大丈夫ですか?」
「むきー!」
いい歳した年寄りがむきーって……。
しかもこのメイド、初期の設定で性格をランダムにした結果、毒舌というとんでもない性格になってしまい、今も一応主人の博士に毒を吐きまくっている。
「もう我慢ならん! 魔道鎧の装甲板を送るように伝えてくる!」
捨て台詞の様に研究室を飛び出していった博士だが本気で言ってたのかよ。マジで何考えてんだ?深いのか浅いのかさっぱりだ。
「あの爺本気ですか? 嫌ですよ私の足が四角の鉄板になるとか」
「……ちゃんとしたものには人型に拘ってるから大丈夫。な筈」
「はあー。大丈夫じゃなかったら、あの爺を培養槽に突き落とすんで協力してくださいね」
「俺からも言っておくよ……」
この研究所で生まれてた蟷螂やら見てたらちょっと自信が無い……。
大丈夫だよな?
◆
「そうだ! あのメイドは収納魔法が使えるんだから、魔道鎧そのものも換装出来るようにすればいい! だがやはりフレームは譲れん! ソフトはちょっとだけ、ちょーっとだけ認めてやってもいいが、私の研究所で働く以上完璧でなければ!」
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