第二話 魔導キャリアと魔導モジュレータの1 両手にメダル

 今日からは次のステップだとカーマ先生から説明があった。

「初級メダルでのコントロールが問題なくできたので次のステップに進もう」

「中級ですか? もっと強力な魔法を使うんですか?」

 子供らしくワクワクテカテカな顔で質問してみた。本音はそれぞれの種別の魔法の違いとか他にはないのか聞きたいのだが。もしかしたらファンタジーでよくある収納魔法や時空間魔法とかはもっと上のクラスの特殊属性なのかと思って聞いてみた。


「中級以上は魔力や体力などをごっそり持っていかれることがあるからまだまだだ。先は長いぞ」

 なんだか先生の笑顔が怪しい。

「今日は種類の違うメダルを同時に使う魔法だ」

「同時に!」

 やった!

 風呂場で水魔法と火魔法を使ってみようとしたのだが、同時にやった経験がないのでどうにも難しかった。水魔法はもう難しくないので片手で出して、もう片方の手の火魔法の方に集中力を持っていくのだが、水魔法も火になって両手が火になってしまったりしたのだ。


「ではまず、右手に水魔法メダル、左手に火魔法メダルを握って、両手の人差し指だけ伸ばす」

「水魔法メダルに普通に魔力を込め、魔法にしないで留めたまま、火魔法メダルにも魔力を込める」

「はい。……あっ、水が少し出ちゃった」

「おもらしはダメだぞ」

 カーマ先生が妖しく笑う

「おもらしって言わないでくださいよ!」

「出しちゃいけないときに出てしまうのはおもらしだろう」

「留めようとすると火魔法メダルの方に行かなくて火魔法メダルにも魔力を込めると水魔法メダルの方にも行ってしまってあふれちゃいます」

「片方がおろそかになってはダメだ。出さずにもう一つにも魔力を込め、出す時をコントロールするのだ」

 先生の妖しい笑顔のせいで、体は5歳児だが中身は前世のオトナの男だから違う意味にとらえそうになる。


 なんとか水を出さずに火を出すことに成功すると、次は逆を練習し、その次に両手からそれぞれ水魔法と火魔法を同時に出すのを練習した。両手の人差し指をぴったりくっつけて、お湯を出すのも成功した。これは魔道具の魔導給湯器と同じ仕組みとのことだ。

 メダル二枚使用の練習のあとの疲労感はこれまでの魔術授業で一番だった。しかし自主鍛錬は怠らない。風呂場でメダルなしの同時発動を練習した。

 しかし、メダルなしで別の種類の魔法を同時に発動させるのは難しい。メダルだと属性が決まっているが、メダルなしだとどちらかに引きずられがちなのである。引きずられなくて出来たのは一度だけだが結局水魔法二つになってしまった。なので片手は魔力を込めて留めたままもう片方から魔法を出すのを練習した。

 何とか魔力を込めながらの発動制御を覚えたので、これで魔力のおねしょ、おもらしをやらかす失敗はもうしないと思う。魔力制御は上達して損はなさそうだ。

 火と水を同時に出すのが難しいまだまだ練習が必要だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る