第93話 レオンの責任 1

(オズワルドが牢から出る少し前ぐらいです。)


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エルサは魔法使いだった。

こんな事態を引き起こし、バーンズ公爵がエルサのことを打ち明けるように白状した。

エルサはバーンズ公爵家の娘ではなく、ウィンター公爵の私生子だった。

オズワルドのブラッドフォード家が闇の魔力を司っている家系なら、ウィンター公爵家は風の魔力を司っている魔法使いの家系だ。


ウィンター公爵家が私生子がいることを公にしたくなく、親戚の、子がいないバーンズ公爵家へと養子に出したらしい。

親戚なら髪の色がウィンター公爵家と同じでも、親戚ならと言い訳が出来る。

そして、魔力が生まれつき高いエルサをウィンター公爵家の娘と知られないように、幼い頃から魔力を抑える魔法薬を服用させていたらしい。

フェリシア様に盛った魔法薬もエルサが自分自身で使っていたものだった。

そして、お茶の差し入れだと、使用人に出させていたらしい。

使用人は何も知らず、私の婚約者だからと信用して出していたらしい。


そして、エルサが魔法使いの素養があるにも関わらず、ウィンター公爵家の私生子とバレないように魔法を習わせなかったようだが、エルサは人知れず、独学で魔法を学んでいた。

それで転移魔法も行き先を特定出来ずどこか雑だったのだろう。


バーンズ公爵家はエルサを腫れ物のように扱い、ウィンター公爵家はエルサと関わりを持とうとしなかったが、私と婚約をしたことで初めて皆から期待されたようだった。

いつも強気の自慢や要求は自分自身を見てもらいたかった表れかもしれない。


それが私のあの婚約破棄の一言でエルサの何かが壊れたのだ。


…オズワルドの言うとおりだった。

エルサのことを何も知らないし、知ろうともしなかった。

婚約も適当に選び、そして一方的に破棄を突き付け話し合いもしようとしなかった。

普段エルサが何を考え、何をしていたのか一度も知ろうともしなかった。


リディアのこともそうだった。

自分がリディアの好きな物もリディアのことを何も知らないのに何故オズワルドではなく私のことを好きになってくれないのかと勝手に思ったのか。



こんな事件が起き、オズワルドや兄上に叱られるまで自分がこれ程身勝手だとも気付かなかった。


そして、母上は兄上に向かって殴り過ぎだ。と叱責している。

そして、オズワルドを罪に問うと。


「レオンを顔が腫れるまで殴るなんてやり過ぎです!」

「母上はレオンに甘過ぎです!今回の事件はレオンの甘さから出たものだ!オズもリディアも巻き込まれた被害者だ!」


兄上は負けじと言い返している。

私には兄上のようにこんなに言うことは出来なかった。

だが、それがダメなのだ。


「…母上、兄上の言うとおりです。責任は私にあります」

「オズワルドに殺されかけたと聞きましたよ」

「…オズワルドはそんなことをしていません。魔法騎士達の見間違いです。オズワルドには何の責もありません」


母上は怒っているままだ。

父上は無言で睨んで、私達の様子を見ている。

その父上に向きを変え、願った。


「…父上どうか、いえ、陛下どうかオズワルドを解放して下さい」


オズワルドを罪に問うことは出来ない。

せめてリディアのところに返してやりたい。

リディアに必要なのは私ではなく間違いなくオズワルドなのだ。

そして、やっと父上が口を開いた。


「レオンが訴えなければ、殺人未遂はなかったことにしよう。だが、アレクの宮はどうする?言い逃れは出来ん」


父上は私がどう責任を取るか問いただすように言った。


「オズとリディアがいなければフェリシアが危険でした。二人は俺達を助けたのです。罪に問うと言うなら俺は父上と対立します。」


兄上ならきっとそうするだろう。


「私が兄上の宮の弁償をします。私の責任です。エルサを止められませんでした」

「莫大な金が動くぞ」

「私の資産で足りなければ、給金から毎月引いて下さい」

「…それでいいのか?」

「構いません」


父上は悩んでいた。

また無言で頭を抱えていたのだ。

そして、兄上が提案をした。


「問題はエルサ・バーンズです。そして、ウィンター、バーンズ両公爵家にも責はあります。宮の修理は4等分にするべきです」



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