第58話 悪巧みの回収

数日後、ノートン男爵が投資したことを確認し、フォーレ伯爵に二人で会う約束を取り付けた。


「フォーレ伯爵、ワイナリーの方はいかがです」


フォーレ伯爵は、疲れているのか取り繕うことなくあっさり白状した。

やはり、ワイナリーの事業の金に手をつけており、資金ぐりに苦労していたようだ。


「…実は俺のブラッドフォードはコルクガシの栽培もしてまして、自社でワイナリーも欲しいと思っているのです。自社ならコルクも安く卸せますしね。…単刀直入に言うと、フォーレ伯爵のワイナリーを買い取りたいのです」


フォーレ伯爵は驚いていたが、今のままでは乗りきれないこともわかっているのだろう。

ワインを出荷するにしても、ワインコルクは必要だ。

コルクがなければ、瓶では出せないし資金がなければコルクも買えない。

実際出荷量は減っているのを確認している。

フォーレ伯爵が事業の金に手を出し、出荷する為の必要な金が減り、その結果収入も減るのだ。


そして、こちらの条件を提示するとフォーレ伯爵は受け入れた。


条件には、ワイナリーは俺のものになるが管理人としてフォーレ伯爵を雇うことを提示している。

これからはワイナリーに関しては給金をフォーレ伯爵に渡すことになるが、今まで通りワイナリーには関われるのだから、悪い条件ではないと思う。


「それとフォーレ伯爵。恋人とは切って下さい。そのうち伯爵家の財産まで食い潰されますよ。ワイナリーにも手を出されると困りますし」

「しかし、一度付き合ったものを捨てるなんて…」


全く何を言っているんだ。

結婚前に浪費癖がわかっているのだから、さっさと切ればいいのに。

フォーレ伯爵の真面目さでは、あの女は抑えられんだろう。


「…では、条件に恋人と別れることを入れましょうか?」

「…そうして下さい。私からはできません…」

「では、条件にしますよ。…一つアドバイスですが、今までプレゼントしたドレスや宝石を持っていってもいいと言えば、あっさり引くと思いますよ」

「わかりました…」


そして、フォーレ伯爵はワイナリーの閉鎖をし、(まぁすぐに買い取るから一時的だが、)投資したノートン男爵はダメージを受けた。

ノートン男爵は投資した以上どころか半分も戻らなかった。

ノートン男爵は投資して戻る金も全額借金返済に当てる書類にもサインし、その書類は一括返済のことも書いてあった。

だからそのまま、ノートン男爵の手に戻さず俺が粛々と回収した。

まぁ、期限はとうに過ぎているからいつでも返済を迫れるが、爵位返上まで破産してもらわねば、復活されては困るからな。




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