第5話 目を開くと

目を開くと、私は見覚えのある噴水の前に立っていた。

しかも、噴水の上の縁に!


どうやって上がったの私!?

しかも、どうやって降りるの!?


噴水の上の縁に立っているのもおかしいけど、私控室にいましたよね!?

そして、アリシアが飛び出して来て…。


腰辺りの背中に何か当たりましたよね?

まさか刺された?

でも、なんともないし??


背中を見るように、体をねじると、急に危ない!と聞き覚えのある声に言われた。


考え事しているのに、うるさいですわね。

そう思いながら、見ると声の主はやはりオズワルド様だった。


「あなたは何をしているんだ。危ないじゃないか!」


わかってます。

いや、違う。

噴水の上が危ないとは思っていますけど、どうして、ここにいるかわからないんです!


「とにかく降りるんだ。話がある」


オズワルド様は、私を両手で持ち上げ、足がふわっと浮くと、思わずオズワルド様の左右の肩を両手で掴んでしまった。


「あの…すみません…」

「…」


オズワルド様は、無言のまま私を降ろさず、抱き締められてしまった。


「あっ、あの、私っ、婚約者がっ、!?」

「婚約したのはいつだ?」


はぁ?

それを聞いてどうする!?


「オズワルド様、どうしたのですか?」

「…リディア、よく聞くんだ」

「先に降ろして下さい!レオン様が見たら大変です!」


その時、きゃあ!と黄色い声が聞こえた。


声の方を振り向くと、シェリー様達が私達を見て黄色い声を上げていた。


「リディア様ったらいつの間に!」

「ち、違うんです!これはっ、!私っ、婚約者が!」


しまった!レオン様にバレたら何と言われるか!

婚約破棄の理由が私の不貞をでっち上げられるかも!?


焦りパニックになっていた。

そして、シェリー様の一言で固まってしまった。


「リディア様、婚約者が出来たんですの?早く言って下さい」


はぁ??


婚約したの知ってますよね??


「ブラッドフォード公爵様、早く言って下さったら、すぐにお祝いをしましたのに」


益々はぁ???となってしまった。


「後日正式に発表しようと思ってました。先に見つかってしまいましたね」


笑顔で言わないで!?

こいつはこいつで何を言っているのかしら!?


そして、気付いてしまった。

まだ、あんまり目立たないけど。

シェリー様のお腹に!


「あの、シェリー様。お子は?」

「ええ、先程占いで元気な男の子を授かると言われました」


それは、半年前ですよね??

確か、レオン様のパーティーの数日前に産まれてますよね?

いや、この立派な噴水に庭は確かに見覚えのあるシェリー様のお邸だ。


オズワルド様を見ると、なんとも言えない表情で目が合った。


「まあ、見つめ合うなんて、お二人ともいつの間に」


見つめ合ってません!

というか、降ろして下さい。

皆様、ニコニコと見てますよ。


「オズワルド様、降ろして下さい」


降ろして、というのにオズワルド様は全く離してくれない。


「リディアが少し疲れたようなので、申し訳ありませんが今日は連れて帰ります」

「まあ、そうだったのですか」


そう言うと、オズワルド様は、失礼、と言い私を抱えたままシェリー様の邸を後にした。



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