-圏内デス-
大橋博倖
本庁編
ログ 1
第1話 ログ 1-1
この異界でこのまま朽ちるか、私と命に縋って永えるか、今、選べ。
若気の至り、もちろんそうした事はある。
そう表現するに、まださしたる蓄積は無いのだが、それでも。
僅か数年、高校在学当時の
この平和国家日本に幸運にも産まれ落ちておきながら、どうして死線を潜るような日常を、人生を選択するに至ったというのか、つまりそれが、若気の至り、という事なのだろう、と、今の私が私について語ると、やはりそうした表現となる。
それより今だ! 、全く。
そう、また、若気の至りで人生の選択を誤った者が出現した、直ちに保護確保に迎え、との緊急通報だ。
非番の私がようやく手に入れたその可処分時間を注いでフェアキル、フェアリー・キングダム、ヘビー系ソロ専スマゲ、
そうだよゲーマーだよでなけりゃ『ウェンクエ』トラップにそもそも掛からないって、イベ消化のまま寝落ちしていたのを情け容赦無く叩き起こした直属上司。
「遅い」
遅いも何も。
一応精一杯の抵抗を試みる、人生ネバギブの精神だ。
「えー非番なんですけど、これでも二週間ぶりの休日なんですけど」
判ってる。
うん、公安に労基なんてない、知ってた、少なくともキクにないのは就業当初から職務規定で通達されてる。
「取り消しだ、後日補填する、直ちに現地に向かえ、私も移動中だ」
「
当然の様に通話中のコム、職員官給のコミュニケータ、フィジカルもスペックも市販のスマホとダンチのお化け装備、のモニタにグーグルマップがポップアップ、現場情報が割り込み告知された。
「今の時間、この座標なら確実にお前が先に現着するな、仕損じるなよ」
にっ、と綾香さんが笑う気配、なんで? 。
「喜べ、保護対象はウェントラナードじゃない、現役女子高生だぞ、男を挙げる好機だろ、ああなんて部下想いな上司なんだ、感謝しろ」
いや、休暇の方がいいかな。
3Dめんどい。
ウェントラナードのJK、腐ってるんじゃ? 。
会話というか命令はそこまで、既に一方的にアウト。
フェアキルはスタミナ切れで周回止まってた、まあキリがいいか。
YES/NOで云えばセンパー全員YesYesYes!!と力強く認証する汚部屋、収納スペースの為に存在するベッドに敷きっぱフトン、趣味実用、スクラッチ未了のモデルやリセマラ型落ちスマホ等、ガジェット群に占拠され辛うじてキーボとモニタが置かれた機能不全のデスク。
寝起きの頭脳に2本程のヤニを与え、ぱっと見ただの皮ジャンの戦闘服を着込み、階下で控える相棒、スズキの軽に向かって駆け降りた。
当夜、自分も見た。
いや、見なかった、見えなかった、自分には、何も。
公称、RSN(事案)、Rainy season night case。
一晩で、世界は変わってしまった。
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