異世界で猫になった公爵令嬢は王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます。

友坂 悠

第1話 気がついたら異世界でした。

 気がついたら異世界だった。


 そんな話があるなんて信じて居なかったのに。ほんと、びっくりだ。




 あたしはさっきまで携帯ゲーム機で遊んでたはずだった。


 普段ゲームなんて興味があんまり持てなかったあたしがこのゲーム機には一目惚れをして、なんとかかんとか手に入れたんだよね。


 色はターコイズメタル。ちょっと薄い緑と青が混ざったような色。


 なかなか品薄で店頭に並ばないっていう希少品。お値段が高くって手に入らないんじゃなくて、お値段はお手頃ではっきり言ってお安いんじゃ無いかって思うくらいの人気なお品。


 そんな中でもこのターコイズメタルの機種はほんと人気で。


 うっすいグレーとかイエローとかピンクとか他にも色はあったけど、あたしはこのターコイズがどうしても欲しくって。




 ネットではどうしたら買えるのかって情報もいっぱい出てたからそれを参考にしていろいろお店を探したけどやっぱりなくって。


 たまたま入ったゲームも扱ってる本屋さんの片隅で「抽選販売」の文字を見つけて衝動的に申し込んでた。


 で、一週間後の今日、無事当選して手に入れたそのゲーム機。起動して登録して、買ってきた友人お勧めの乙女ゲームをやり始めたばっかりだったはずなのに。



 どうしてこうなっちゃったんだろう?






 ☆☆☆



 ああ、これはやっぱり夢? だよね?


 だいたいさ、こんなの現実じゃありえない、もん。



 目の前にはビクトリア王朝もかくやという雰囲気な真っ赤なベルベットの敷物に絹のような光沢のやっぱり真っ赤なカーテンが部屋中に広がったそんな部屋。


 天蓋付きのふかふかなベッドにちょこんと収まっているあたしは、どうやら猫?


 手も足も、尻尾ももふもふ。


 耳の裏をカリカリっと後ろ足でかいてみる。ぺろっと掌を舐めてみると、そこには自由に伸び縮みできる爪もぷよぷよピンクなにくきゅうもある。


 みた感じ全身クリーム色なふさふさな身体っぽいかな。


 うーん。鏡があれば全身が見えるんだけど。


 そう思ってベッドの上から降りようとしてみたところでかちゃんと扉が開いて部屋に人が入ってきた。


 緑がベースのロココ調なドレス。


 フワッとした腰回りがすすすっと滑るように動いてあたしの前まできたそのまさしく貴族の奥様って感じの女性。


 ふわふわな金髪をアップにし、その髪には宝石をちりばめた髪飾りがよく似合う。


 そんな高貴な方って感じな女性がベッドの前まで来て、あたしのことを抱きしめて言ったのだ。


 あたしに頬擦りをして。愛おしそうなそんな声で。


「ああ。マリアンヌ。可哀想な娘。どうして貴女は猫になってしまったのでしょう……」


 って、えー?


 ほんとどういうこと?

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