03 シフォンちゃん
あの日、妹は帰ってこなかった。
お金持ちの子供を狙った誘拐事件として捜査されたが、調査にあたった騎士が見つけたのは妹の亡骸だけだった。
あの時、妹が馬車の外に私を突き飛ばした後、男に殴られたのが原因らしい。
即死だったのだろう。
馬車に乗っていた男達は、使い物にならなくなった商品をめったに人が通らない街道で、ゴミの様に捨てた。
少しでも元をとろうと思ったのか、妹の衣服をはぎとり、持っていた物を盗んだ後にだ。
亡骸がどんな姿をしていたのかは、お父様やお母様にも見せてもらえなかったらしい。
私はユフィの死を知った後、三日三晩涙を流して、何の気力もわかなかった。
姉である私がしっかりしていなかったから、ユフィは死んだのだ。
あの時私が、ユフィを突き飛ばしていたら、ユフィは助かっていたかもしれないのに。
落ち込んでいた私は、誰にも会いたくなかったし、誰とも口をききたくなかった。
だから、部屋にずっと閉じこもっていた。
でも、ある時から、窓辺に一羽の鳩がとまるようになった。
窓をコツコツくちばしで叩く。
音が気になって、カーテンを開けてみたら、そこに純白の鳩がいる事に気が付いたのだ。
「はと? どうして?」
鳩の足には手紙がくっついている。
窓を開けると、鳩が部屋の中に飛び込んできて、室内を飛び回った。
鳩から抜けた羽がふわふわとまって、なぜだか幻想的な光景に見えた。
その後、大人しくなった鳩から手紙をうけとった私は、そこにかかれていた文字を読んでみた。
そこには、へたくそな字で〈おそらく覚えたてなのだろう〉こう書かれていた。
おかねもちのおじょうさまへ。
げんきだせよ ばかやろう。
ともだちから はげましのことばを おしえてもらったので かいてみたぞ。
おまえたちは このへんとかあのへんの かんりをまかされてるんだろ。
げんきがないと みんながおちこむんだ。
だから はやく よくなってくれ。
しふぉんより
とりあえず手紙の贈り主である彼女、(名前からして女の子だと思うが)に言葉を教えた友達とは縁を切った方がいいと思った。
そこまで思った所で私は、つたない文字で書かれたその手紙を見て、自分が笑っている事に気が付いた。
そうだ、落ち込んでなんていられない。
死んでしまったユフィの為にも、精一杯生きないといけないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます