01 数年前の出来事



 王都リヴァイバルは、人の流れが盛んだ。


 多くの人が、通りを行きかう。


 それは、リバイバルを挟むように、巨大な国家が存在しているためだ。


 地図を見ると、大きな国が三つ仲良く並んでいるように見える。


 子供でも分かりやすくて覚えやすかったから、頭の中に入っていたのだ。


 私は、そんな王都の大通りを歩いていた。


 妹の手を引きながら。


「ユフィ、はぐれちゃだめよ。こんなに人がいるんだから」

「じゃあ、お姉ちゃん。手をつないで歩こ!」


 妹のユフィと私フィアは、双子の姉妹だ。


 双子が珍しいこの世界で、親や護衛もなく通りを歩くのはちょっと危ない。


 しかも、貴族のお嬢様だからなおさら。


 なのに、今の私達は二人きり。


 揃いの顔に、揃いの赤く輝く瞳、日の光をうけてきらめく金糸の様な髪。


 ただでさえ目立つ双子が、保護者もいない状態で歩いているのだから、良からぬ輩の目に留まらないはずがなかった。


「もうお母様にお父様ったら、どうしてはぐれちゃったの?」

「お姉ちゃん、私達お家に帰れるのかな?」

「大丈夫よ。泣かないでユフィ」


 泣きだした妹を励ましていると、ニヤニヤ笑いながら男が近づいてきた。


「そこのお嬢さんがた、ひょっとしてお父さんとお母さんの事を探しているのかい?」


 私は一目でそいつの事が怪しいと分かった。


 怪しい人と喋ってはいけないと言われていたので、無言で妹の手を引いて、その場から去ろうとする。


 だが、男は方向を変えた私達の前に回り込んできた。


「大丈夫。あやしい人間じゃないからさ。おいで、お兄さんがお父さんとお母さんに会わせてあげるよ。二人の事を探していたよ」


 その言葉を妹は信じたのだろう。


「本当に?」


 嬉しそうな声で、目の前の怪しい男に話しかけた。


「ああ、本当だとも」


 怪しそうな男はにんまりと笑いながら、私達を先導するように歩いた。


 私はどうすべきか迷ったけれど、妹があまりにも嬉しそうにするから、結局男について行く事にした。


 それが、間違いだと気づかずに。


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