第8話危険な魅力を持つ魔物

「また会ったね」

前に会った魅惑的な魔物の青年だった。

紅茶色の瞳が美しい。

優等生ルックで、どことなく服装がアンティークっぽい。

この不思議な街で、ぼくは不思議の国のアリスを彷彿させた。

危険だと分かっていながらも、ぼくはその青年に対し、好奇心を抑えられなかった。

「あの…この街どうやったら抜けれるか分かりますか?迷ってしまって…」

ぼくの体調が悪いのか、あの不可思議な道ではないのに、グニャグニャと歪んでいっているように見える。

目の前の青年だけが一定の場所にいた。

青年は悪いことを考えているチシャ猫のようにニヤッと笑う。

ぼくの黒い瞳に青年は気味悪く映った。

「それは後で教えてあげる。今はきみと話がしたい」

明るい紅茶色の瞳が怪しげに揺れた。

「…ぼくと会ったことあるんですか?」

魔物と分かり、とりあえず敬語を使う。

20代前半の見た目だが、実際何年生きてるかわからない。

何十年いや、ヘタしたら何百年かもしれない。

ぼくの考えてることが分かったのか、一瞬不愉快そうな表情をした。

次に青年はニコッと、貼り付けたような笑みを作った。

「思い出して、会ったことあるよ」

低い声が地面から反響する。

青年の後ろで赤い小さな光がポツポツとつき始めた。

ギョッとした。

前に見た、この青年の使い魔らしき魔物の目だった。

それがザワザワと動き、こしょこしょ話のように、ぼくについて話しているようだった。

「俺に見覚えありません?」

美しい青年が再び話す。

ぼくの頭に何かの映像が頭をかすめた。

見惚れて、青年のアーモンドアイに引き込まれそうになった。

不可思議に笑うこの青年は、危険な魅力を放っていた。

自分を保ち、ぼくは流れてくる映像に集中させる。 

目を細め、見えにくいものを見るようにして考えた。

ほとんどテレビの砂漠のようになっている。

何の映像かまったく掴めない。

「何だ…これ」

ぼくは顔を歪める。

青年はニヤッと笑い、パチンッと指を鳴らした。

それを合図に次々と映像が流れてきた。

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