アミテロスの魔獣狩り~植物魔法の深淵、蔭《かげ》の世界の旅~
@yasida
1章1話『いつもの崩壊』
3月21日 早朝 アミテロス島にある竹林サピアにて
3月21日、春分の日の早朝。
——カッカッ——
俺がずいぶん集中していないと見みているようだが、当たりだ。
ただし、今回もなんとか
残念ながら、この展開は読まれており、追撃を食らった。
歳のせいか、最近、この稽古オタクについていけなくなり始めている。剣術だけだと、この勝負危うい。
よって、
さて、何を隠そう
ここでは主に、9年前に終結した第三次魔法対戦で孤児になった、ネイチャー———生まれつき高レベルの魔法をつかえる者———を保護している。
普通16歳までのいる前部、その後の課程の後部があり、前部では、学生は使う魔法の分類によって異なる寮で生活している。
そして、
———これこそ、
すかさず、
ちなみにこの稽古、魔法は使わないルールだったのだが・・・。
言うまでもなく、
そんな
あぁ、赤みがかった頬から今日の午後の予定がバレバレですけど・・・。
残念ながら、あずさは量子系の寮、通称白寮のリーダーで生活の場は異なる。なので、このパワーカップルは、ここ、生命系の寮、通称緑寮の
よほど図星だったのだろう。
あらっ・・・。次からは腐った木刀は使わないようにしよう。
たわいもない会話をしていると、ゴーン、ゴーンと2回、鐘の音が北北西にある中央のほうから鳴り響いた。学生召集の鐘である。
中央の魔法学校の社につくと、もうほとんどの学生が集まっていた。そこに汗まみれ土だらけの道着で登場するのだから、目立つ。離れた竹林で稽古をしていたわけだから仕方ないと言えば仕方ない。
ただ、猛者ほかにもいるようで、全身に紫色の液体がついている学生もいる。
何をやっていたんだ?あそこまでいくと、もはや新しいファッションだなぁ。
そうこうしているうちに、カイエン和尚が学生の前にのそのそと登場した。
カイエン「今日集まってもらったのはほかでもない。」
説教を聞くためである。
カイエン「昔、とある人が、人間は人間が多くのことができるようになったと感じるのは、それは人間が優秀だったからではなく、想像力に乏しかったからだといったそうだ・・・。」
案の定。案の定。ほら。案の定。
それから、春分の日の全校集会ということで30分延々と話を聞かされた。学年が小さい学生もいるからという理由で、毎年、同じような話、いや、完全に同じ話を説教される。
7歳から魔法学校にいる
ここからは楽しい。春分の日なので、学校を上げて春の感謝祭を行うことになっている。しかも今年は、各寮の最高学年の学生は来年から後部に移行するから、一つ下の学年の学生が取り仕切ってくれる、食べるだけの感謝祭だ。
とはいっても食べ物は自前なのだ。昼までの間ずっと、魔法学校の全員が中央の社に集まり、餅をついたり赤飯をたいたりして、それを食堂で食べることになっている。
ちなみに、食料は残ったら翌日分に保存するのだが、9年連続で保存量は0。はてさて、今年はどうだろうか。
昼食の時間になって寮ごとに食事をはじめ、
次に、みたらし団子一皿とともに、
二人の会話を邪魔することには慣れている
そして、あずさが続いて、
そういって、
あずさ「そんなに羨ましいの?可哀そうに、誰か紹介してあげてもいいのよ?」
あずさが、仕返しをしてきた。彼女は、相変わらずの容姿端麗で、程よく引き締まった腰元まで届く、濡れ烏の黒髪に、鋭い瞳。その
その日、最高学年の話題は、来春からの進路で持ち切りだった。といっても、生まれつき魔法の才に恵まれたネイチャーの就く職業はある程度しぼられるので進む進路もそれに従う。
とりわけこの三人については、まず、
二人はそれぞれ、アミテロス島の北の大陸にあるラルタロス魔術学校後部、魔物部魔獣科、魔物部魔獣医学科に進学が内定している。
それどころかこの二人、卒業後の進路まで決めていた。共通点は、二人とも魔獣狩りと呼ばれる職業を志していることだ。
人望があり、剣術、魔術に秀でた
あずさは、頭の回転が速く、記憶力も良く、努力家なので(当然のごとく)成績優秀だ。それも、アミテロス魔法学校始まって以来、最も成績優秀な学生の一人らしい。普通なら医学部医学科に入学して医師とかをめざすのだが、彼女は魔獣医師を目指していた。
魔獣医師の専門には人間を治すこともあるのだが、彼女いわく、獣医が犬や猫を治すことと同様に魔獣を治すことも魔獣医師の領分らしい。
というわけで、より具体的に魔物や魔獣狩りの話題になった。
魔物———非人間でありかつ少なくとも超科学的な能力を有する存在———がこの世界には溢れている。その中でも、魔獣と呼ばれるものは、多くが大蛇で、史実に残る限り、人間の脅威となってきた。
さらに9年前、世界規模の魔法大戦起きた。これにより、世界中の殆どの魔法や数々の技術が失われ、魔法の使える人口は元の10分の1未満へ減少。魔獣の進行を抑えることはできず、現在、人間社会は風前の灯である。
しかし、人間も無抵抗であったわけではない。魔獣に対抗するものは魔獣狩りと呼ばれ、魔獣との戦いを生業としてきた。魔獣狩りは、魔法の使える者のなる職業といって相違ない。
つまり、現在魔獣に対抗できる数少ない力の一つである魔法使いのわずかなわずかな生き残り。それが、ネイチャーである。
無論、優遇される。まず、ネイチャーであるというだけで、無試験で医学系以外、ほとんどすべての学科に入学できる。することと言えば、申請用紙を記入するだけ。
あずさ「でさぁ。結局、
あずさ「私にも色々あるのよ。」
あら、そうですか。目標が明確な、かつラブラブなお二方には、俺の心情は理解できないでしょうね!
でも、過去の記憶、魔法学校に保護される以前の記憶さえ戻れば、あるのだろうか。俺にも。何か明確で、これしかないと断言できるような、目標や目的が。
そう。
その後のあずさと
あずさ「もう、
という具合だった。
観察記録によれば、二人は気分がよく盛り上がったときには大抵この調子になり、少なくとも30分は同じ調子だ。おかげでこちらは、
さて、幸せそうな二人はほっておいて進路のことを考えるとしよう。
実は、魔物部か魔法理学部に進学しようと考えがまとまっていたが、そこで止まっていた。
生きていくとすれば、ネイチャーとして生まれた以上、不安定な世界を魔法使い以外として生きていくことは考えられなかった。だから、仕方なく進学することにした。
というのも、高度な魔法や魔法に関する知識の習得には後部に進学するのが必須だったし、ネイチャーの進学率も95%を超えている。
そこからどうして、魔物部か魔法理学部と絞られたかと言えば、次の通りだ。
始めに、一般的な魔法学校の、後部の学部といえば、軍部、(魔法)医学部、(魔法)理学部、(魔法)工学部、政治学部、経済学、文学部、芸術学部、そして、魔物部ぐらいのもの。
そこから、魔法をあまりやらない学部は除外すれば、軍部、(魔法)医学部、(魔法)理学部、(魔法)工学部、魔物部が残る。
次に、協調性のない
つまり、消去法だ。
特権的地位にスポイルされたモナトリアムな皮肉屋には、消極的なことしか思いつかなくて然るべきだなどと考えていたから救いようがない。それは別に構わない。今更変わるものでもないだろう。
ただ、決めないといけないから、
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