ドライブスルー

客(ちょっと腹減ったな~。お、あそこにドライブスルーのお店がある。行ってみるか)


店員「……」

客(……? 挨拶されない……)

客「あ、あの、すいませーん」


店員からの応答は無い。


客「ちょっといいですかー?」

店員「……」

客「おい! 聞いてんのか!」

店員「は、はい? どうかなさいましたか?」

客「どうかなさいましたか? じゃねえだろ。客が来てんだから反応しろよ!」

店員「あ、はあ。恐れ入りますが、こちらはドライブして眺めながらスルーするタイプの店でございまして」

客「どういうドライブスルーだよ! 何だよ、眺めながらスルーするって。どういう店だよ」

店員「あ、まあ、店の外観を楽しんでいただくという」

客「飲食店じゃねえのかよ。何だよ外観を楽しむって」

店員「お客様、ご存じないのですか?」

客「・・・何をだよ」


店員「近頃は街中でアート展示がされていることってあるじゃないですか。あれと同じなんですよ、この店は」


客「ええ? これ、アートなの? ……どう見てもマクド〇ルドにしか見えないんだけど」

店員「いやいやいや。どう見てもモ〇バーガーでしょ」

客「どっちでもいいよ。ってか、アートって言っといて、自分でそんなこと言っちゃうんだ」

店員「ついでに飲食料販売もしております」

客「そっちが本業だろ! やっぱ飲食店じゃねえか!」

店員「現在おすすめの商品がモスバーガーでございます」


そう言うとメニュー表を取り出し、対象の商品を指さす。


客「ちょ、ネーミング! ダメでしょそれ。

……って蛾じゃねえか! モス入っちゃってんじゃねーか!」

店員「はい、ネーミング通り、モス入りのハンバーガーとなっております。今ならキャンペーンでモスラのストラップがついてきます」

客「俺が頼みたいのはハッピーセットじゃないんだけど」

店員「お客様、大変申し訳ないのですが、後ろのお客様が大変お待ちしておりまして……」

客「お前のせいだろ! ……もう普通のハンバーガーセットでいいよ」

店員「かしこまりました。ハンバーガーセット入りま~す」

客「やっとだよ、まったく」

店員「お待たせしました」

客「おう。腹減ったよ、ほんと」


~店を過ぎて袋から取り出す~


客は袋から取り出したハンバーガーを見る。

パンで芋虫(ガの幼虫)が挟みこんであり、愕然とした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る