第84話『私が居なくても 1』

 夏休みも明け、また忙しい日々が戻ってきたアイドルたち。独自の世界観で人気を高めてきたMarionette Melodyマリオネットメロディーも、学生生活にアイドル業にと、多忙を極めていた。私には少し、気がかりなことがあった。


カメラマン「撮影は以上です。ありがとうございました!」


メルシー「ありがとうございました!」


涼寧すずね「ありがとうございました。」


梅香うめか「はい、ありがとうございました……!」


雑誌のインタビューと撮影を終え、帰路に着くMarionette Melody。


「お疲れ様でした。」


涼寧「どうだった?」


「はい、かなり良い顔で写っていましたよ。」


メルシー「いやぁ、最近はたくさん雑誌にも載っけていただいてますもん!そりゃ上手にもなりますよ!」


「そうですね。あの、涼寧さんとメルシーさん、先に車に乗っていてもらってもいいですか?梅香さん、少しお話が。」


梅香「えっ。」


メルシー「……?」


涼寧「何の話?」


メルシー「まぁまぁ、私たちは聞かなくていいやつだよ、多分。先に車行こ?」


少し不服そうな涼寧さんを連れ、メルシーさんが去った。


梅香「……お話って?」


「梅香さん、体調は大丈夫ですか?夏休みも、ろくにお休みが取れませんでした。」


梅香「え、でも、ちゃんと一週間のお休みはあったし……大丈夫だよ?」


「本当ですか?本調子ではないように見えますが。」


梅香「……そんなことないよぉ。」


少し俯きがちにそう言う梅香さん。


「無理だけはしないでください。梅香さんに何かあっては……」


梅香「ファンのみんなが悲しむ?」


「そうですが、それ以前に、梅香さんの体は一つだけです。一度壊れて、もう二度と直らなくなったら……」


梅香「大丈夫だよ。無理してない。自分のことは、自分が一番よく分かってるもん。」


梅香さんは私から顔を背け、車の方へ歩いていった。

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