第20話 ウブドツアー①

ゆっくりした日々を過ごす毎日。


ぷらぷらと地元の食堂に入り、箸もスプーンも出てこない店で、現地の人と同様手でご飯を食べたり。


こういうガイドブックに載らないような、直にその国の文化を味わえる瞬間はとても楽しい。


なかなか腰の上がらなくなるような居心地のいいウブド。


今日はそんなウブドを満喫する、以前から楽しみにしていた周辺を巡るツアーに、トマさん、リンさんと参加した。


宿の従業員でもあるナイスガイ、ジョニーが今回ツアーのアテンド役だ。


彼の運転する四駆の車に乗り、出発。


まず初めに訪れたのはゴアガジャという、ヒンドゥー教の神様が祀られている洞窟へ。

ここも神聖とされる場所で、以前祭りに参加した時のように入場するには正装が求められる。


入り口でサロンと呼ばれる腰巻きを巻いて、なんとなくそれっぽい雰囲気に。

各所で供えられてるものも、豚肉やもち米といったいつもより豪華な物が置かれてある。


今はちょうどお祭りの時期ということもあり、周りでは多くの人が準備に追われている。


その後はぺジョンの月という遺跡へ。


あんまりピンと来なかったが、さぞかし古い歴史があるのだろう。


そして聖なる水が湧き出ていると言われるティルタエンプル寺院へ。


ティルタは水を、エンプルは聖なるを意味する言葉。


人々が皆その湧き出る聖水を浴びながら、沐浴をし、体を清めている光景。


寺院内はガムランの演奏が行われて、雰囲気もお祭りのよう。


しかし神聖な雰囲気は私のような旅行者にも十分感じられ、熱心な信者のみが訪れることができる崇高な感じがした。

日本ではなかなか見ることのできない、宗教感を間近に見て、気が引き締まる。


そのあとは、おそらく他の日本人から入れ知恵が入ったのであろう、ジョニーが口に出すたびにウケを狙ってくる、キンタマーニへ。


高原に当たる場所だが、名前とは想像つかないぐらい、景色が素晴らしい。


遠くに広がる田園風景、大きな湖、ここの景色はバリ島屈指の観光スポットにもなっている。

ここのレストランで昼食をとりながら休憩。

インドネシア料理をみんなで食べたが、最高にうまい。


涼しい気候も重なって、とても気持ちがいい。


ゆっくり休んだ後は、しばらくドライブを続け、ブサキ寺院に到着。


ここはバリヒンドゥーの総本山ともされている神聖な場所。

バリの数ある寺院の中でも、最も大きく、遠くにそびえ立つ数々のメルと呼ばれる塔が立ち並ぶ。


予想以上の素晴らしさがあった。


とても自分の表現力では表せないほど、肌に荘厳さが伝わり、古来からの神秘的な雰囲気を感じる。


日本では考えられないが、自分の信じる神様の為に、土地を売り、食物を捧げ、身を捧げる。


バリヒンドゥー教の偉大さを改めて感じた。


そしてこの寺院入場に伴って雇ったジョニーとは別の専門ガイドに倣い、私たちもお祈りをする事に。


それぞれに渡されたお供えの花が私だけ汚く、なんでやねんとついツッコんでしまった。


そこは気にせず、教えられるがままお祈りを始めると、体から何か抜けるような、不思議な気分になった。


何か深いものを感じた。他の祈ってる人は何を祈ってるのだろう、神はそれに対して何を与えてくれるのか?


色々な疑問が頭を駆け巡る中、宇宙の神秘さが、胸の中に広がった。


本当に一瞬だけだったけれど、バリヒンドゥーの神様の存在を感じ、挨拶ができた一瞬だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る