第六九話
闇夜の中、若い猟師は焦燥していた。暗闇の中、必死に山道を進みながら、次第にその表情を絶望の色に染めていく。
どうしようもなかったのだ。確かに近頃妖共による被害が増えているという噂はあった。しかし、だからといって自宅に引きこもる訳にはいかない。既に秋の始まりである。百姓は田畑の実りを収穫せねばならない。行商人にとっては冬篭りする人々に向けての貯蔵品の売買は貴重な収入源で、猟師にとっては秋の肥太る獣共は絶好の獲物である。
人は働かねば食っていけぬ。ましてや今は秋であり、これから冬が来るのだ。危険があろうとも臆病に家の中で竦み上がる訳にはいかないのだ。無論、幾ら妖共に襲われる人々が増えたといっても全体で見れば少数派である。だからこそ多くの者はまさか自分は大丈夫だろうとたかを括って、あるいは恐怖と不安を誤魔化して働くのだ。襲われるのは、食われるのは運が悪い奴だけなのだ、と。
そして、その意味ではその若い猟師は運が悪かった。
何時から術中に嵌まっていたのかは分からない。気が付けば己が道に迷っていた事に猟師は気付いた。今更のように懐に仕舞っていた御守りがへし折れている事に気付く。自覚した時には己がどちらから来てどちらに向かっていたのかすらも分からぬ前後不覚に陥っていた。
慌てて来た筈の道を戻る。朝早く出立し、昼前には気が付いていた。決して深い山ではない筈なのに、日が沈みかけても彼は未だに泊まっていた山小屋にすら辿り着けなかった。
日が完全に沈み切っても尚、必死に彼は進む。進まざるを得ない。背後を振り向く積もりはなかった。その余裕はなかった。いや、それ以上に恐ろしかった。振り向いたら最早戻れないような気がした。
「あぁ、糞………!!」
進む、進む、ひたすらに進み続ける………足が痛くなっても、それに耐えて尚進み続ける。足を止めたら終わりだと本能が、猟師としての第六感が警告していた。
しかし、それも悪足掻きに過ぎない。
「ひっ………!?」
息も絶え絶えに進む猟師は足を止める。止めざるを得ない。眼前にあるのは崖であった。いつの間にか彼は普段足を踏み入れぬような所にまで来てしまっていたようだった。長年山に住まう猟師でも越えるのは難しい険しい崖………逃げ場は完全に失われた。
「ち、畜生………!!」
猟師は震える声で弓を取る。矢を番える。ここで死ぬ積もりはない。死ぬとしてもただ化け物の餌になるのはご免だった。せめて道連れにしてやらなければ気がすまない。
「やってやる………やってやるさ!!来やがれ化物めっ!ぶち殺してその皮を剥いでやる!!」
恐怖を圧し殺し、若い猟師は叫ぶ。己を鼓舞する。奮い立たせる。
そして茂みが揺れるのを確認する。猟師は即座に弓を射る。何度も、何度も射る。矢がなくなるまで幾度となく狂ったように射る。
全ての矢を射ちきった猟師は次の瞬間我に返る。同時に青ざめる。しかし………何も起こらない?
「…………」
懐から懐刀を引き抜いて、猟師は茂みに向かう。そして茂みを揺らす。そして見た。矢が幾本も突き刺さって息絶えた鹿の姿を。
「へっ………?は、はは………化物じゃない?俺の、勘違い、か?」
猟師は思わず脱力する。手元の懐刀を落として、安堵する。もしや、背後からの気配は気のせいであったのだろうか………?狐か狸に化かされたような状況に猟師は思わずぎこちなく笑う。
刹那、激しい突風が吹いた。同時に猟師は脛に走った痛みに「転げた」。
「痛っ………何がっ!?」
斬られたような傷に思わず猟師は足の脛を見る。しかし、そこには傷口も、出血もなかった。あるのはただ、傷もないのに切り裂かれた布地のみで………。
直後、猟師は背後に文字通り「突然現れた」影に気付く。そして振り向いた。
「あっ…………」
最期の瞬間、彼が見た。迫り来る狼の牙の形をした死そのものを。
そして悟る。全ては罠だったのだと。自身を迷わせて疲れ果てさせられた事、此方が安堵して油断した事、全てが狡猾な罠だったのだ。あぁ、分かっていた事ではないか。妖は何処までも卑怯卑劣なのだと。
故に、奴らが人を貶めるために手を組む事だって、何ら可笑しくはないのだ。
直後、グチャリと肉と骨が潰れる音が山に響いた。
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鬼月家が構える屋敷のその広大な敷地の一角がその区画であった。本殿から見て北東部に建てられた小屋や倉庫、鍛冶場、その他様々な加工場の連なり………その一角に建てられた冶金場に俺はいた。土蜘蛛の糸を巻き付けた装着式の手車装置を携えて。
「失礼、下人衆が允職です。呪具衆允は此方に?」
幾人かの職人、呪具師連中から聞き込みをして漸く見つけ出したそこに足を運んだ俺は、戸口を開くと共にその音を聞いた。
それは金属を叩く音であったが俺がすかさず中の者に向けて問い掛けると、直ぐ様その喧しい音は鳴りを潜める。そして俺は視認する。決して明るくない部屋の奥で鉄の延べ棒を片手にその質を吟味している男に。此方を見ずに彼は手招きして命じる。入れ、と。
「では………」
俺が一礼して入室すると、室内に再度カンカンと金属音が鳴り響き始める。それを無視して俺が彼に迫るとこんこん、と今度はすぐ傍らに設けられた机を手の裏で叩き鳴らされる。
俺はその意味を理解すると、お望みのそれを叩かれた机の上に安置させた。そこで漸く彼は此方に視線を向けた。ニヤリと微笑む。俺もまた面越しにそれに応じた。
「どうだい?そいつの具合は?」
「悪くはないですけどね。やっぱり自滅や味方撃ちは怖いですね」
「その糸の切れ味が良過ぎるのが悪いんだよ。此方だって加工するのも一苦労なんだぞ?何度指を切り落としかけたと思っている?」
俺が台座の上に手車……安全のために幾重にも布を巻き付けている……を一瞥すると、職人風の装いの男は全ての作業を中断して肩を竦めて嘯く。掌を見せる。分厚い掌には幾筋かの切り傷の跡が残っていた。
「さて、では具合を見させて貰おうかね?」
そう勿体ぶりながら男は特製の手袋を両腕に嵌めると俺が机の上に置いた手車を、己の作品を慎重に観察し始めた。
………鬼月家呪具衆は、退魔士一族鬼月家の組織した傘下組織の一つであり、多くの鬼月家一族にとっては下人衆よりも遥かに重要な立場にある衆である。
退魔士らとて、流石に着のみ着のままで妖共と戦うのは困難を極める。いや、鬼月の平均的な退魔士であれば小妖程度までならば数にもよるが多分裸一貫でも殴り殺し、蹴り殺せるだろう。しかしそれ以上ともなれば流石に難しい。………多分ゴリラ様なら素手だけでダース単位の大妖を殴り殺せるだろうがあれは例外だ。
そして退魔士の装備する装備の多くが対人ではなく対妖を想定しているがためにその製造も一筋縄ではいかない。特殊な加工を必要とする場合も多いのだ。故に其処らの鍛冶師が打った呪いも掛けていない大量生産された軍刀や槍では中妖までならば兎も角それ以上を相手取るとなれば大変非効率であった。
また朝廷は実態は兎も角、民間の呪具の製造を禁止していた。税収確保と武器類や必需品の統制による反乱防止のためだ。
一応弁護するとすれば闇市場で売買される呪具の質は千差万別であるし、危険なものもあるので完全に誤りではないが………官製の御守りの質も大概なのでその意味ではやはり既得権益ではある。
………民草は兎も角、問題は退魔士達である。官製の規格品の呪具は性能も種類も妖の巣穴に突っ込む彼らには不足する。故に退魔士家は特別に呪具の製造に関して特権状を与えられ、独自に職人を集め、あるいは育成して自分達の装備する、もしくは周辺の村や街に販売するための呪具を生産する技能集団を作り上げた。それが所謂呪具衆の始まりである。
鬼月家呪具衆が允職、
「ふむ、機構は傷んではいないな。やはり素材ってのは大事だな。切れ端の隕鉄と神木があったので使ったが………これなら長期間使っていても壊れまいよ」
手車の部品の損耗具合を確認する久賀。俺が回収した土蜘蛛の糸を何かの装備に使えないか相談した彼は幾つか製作した試作品の内、最終的に手車を使った暗器を最終候補に選び出したが、問題はその素材であった。というか他の案でもそうだが土蜘蛛の糸の切れ味が良過ぎて武器に使おうにも半端な金具や木材では直ぐに壊れてしまうのだ。
幾度か試作して素材を変えて、最終的には鬼月家の者達に献上している武具防具に使う素材、その切れ端や使い残し等を掻き集めてどうにか物を作る事に成功した。そこから何度か実戦で問題点や欠陥を洗い出して、漸くこの武器も本格的に使えそうであった。大妖以上に対してまともに傷を与えられる武器はこれまで短刀くらいのものであったから、使い易さに難があるとは言えこの手車は心強い武器になりそうだった。
「助かりますよ。この手袋も、加工に一苦労でしたでしょう?」
同じく土蜘蛛の吐いた弾性の糸を一本一本手解き、縫い合わせて作り上げた手袋を見せて俺は謝意を示す。此方も目の前の男の作品であり、現状ではこいつ無しでは手車を使う気にはなれない。鉄すら裁断するのだ。ただの手袋では下手しなくても指が落ちかねない。
「おうよ。礼なら形で示してくれよ。お前さんの事だ。持って来ているんだろう、えぇ?」
ニヤリ、と此方に意地の悪い笑みを見せる職人に、俺は同じく面越しに悪巧みするような笑みを浮かべる。そして懐からそれをゆっくりと取り出す。
「おいおい、そいつは………」
「最初は街で清酒でも買おうかと思ったんですが橘商会の一団と途中で合流しましてね。護衛の礼にね、ちょっとしたお土産ですよ」
そういって俺は片手で握れるような硝子瓶を見せびらかす。その中に入っているのは高純度の酒精が含まれる澄みきった液体………即ち、前世にてウオッカと呼称されていた舶来の蒸留酒である。
大麦や小麦を原料として、最後には炭等を利用して濾過して作られるこの舶来酒はそれ故に酒類の中でも特にアルコール濃度が高い事で知られている。扶桑国においては酒と言えば先ずは米を原料とした甘味があるが悪酔いしやすく口当たりの悪い濁酒であり、其処から米粕等を濾した清酒が贅沢品に来る。そしてそのどちらも俺の手中にある舶来物の酒の前では到底酒とは言えないアルコール濃度であった。………いや、実際濃度九〇パーセント以上とか殆どアルコールの塊だよな、これ?
何にせよ、舶来物は値の張るものが多い。そして呪具衆の待遇と境遇を考えればこの小さな瓶は賄賂としては十分な効力を発揮してくれるだろう。
「ほぅ、これは確かに酒精の香りが強いな。どれ一口………成る程、こりゃあ確かに直ぐに酔いそうだ」
コルクを抜いて中身の香りを嗅いで、次いで一舐めして感想を口をする呪具衆允職である。普段飲んでいる酒とはかなり方向性の違う味わいに衝撃を受けているように思える。
「有り難く受け取っておくぜ。………済まねぇな。毎度毎度」
「いえ、此方としても常日頃装備の融通をして貰っている身ですからね。これくらいして繋がりは保って置かないと」
呪具衆の彼にとって俺が任務で遠出した序でに買い付ける土産物でも十分に珍重であった。何せ、呪具衆は外には出られない。退魔士家によって秘術や秘伝も多く、各呪具衆はそれらを考慮し、あるいはそれらを利用して呪具を作成している。彼らの技術と知識そのものが機密なのだ。
故に基本的に呪具衆の外出は許されない。人生の殆どを屋敷の中で過ごし、領内の近場……鬼月家で言えば屋敷から見下ろせる鬼月谷村……程度であれば認可を貰えば目付が連れ添って出られるが、それくらいのものだ。後は主家の上洛時に付き添って都の職人街や朝廷の呪具部門に留学するくらいか。何にせよ命の危険は少ないが自由は少ない。だから俺ごときの用意出来る賄賂でも通用する。
そして、実際その見返りは絶大だ。彼から融通された火薬や呪札がなければ俺は早々にくたばっていた。元々それを狙って近付いた訳でもないが………人生何事も塞翁が馬という事である。
「そういえば、丁度この前に酒に合いそうな支給があってな。えーと………おお、こいつだ。」
ふと、思い出したかのように部屋の一角に設けられた工具用の棚の中をまさぐり始める久賀。そしてその奥、工具類の陰に隠すようにして置いてあった御猪口と小さな麻袋を取り出して、見せつける。
「それは?」
「まぁ、見てみろや」
そういって勿体ぶって麻袋の中身を開ける久賀。中身は独特の臭いで直ぐに分かった、乾物である。酒の肴に使えそうな干し肉と鯣であった。鬼月谷は山奥にあるので干し肉は分かるが………鯣?
「儀式の使い残しを頂戴してな」
「あぁ、成る程………」
鯣は意外な事に儀式の供え物等に多用される食材の一つだ。恐らくこれは供え物の残り、もしくは古くなって回収した供え物そのものといった所か。
「どうだ、一杯やるか?」
安物の御猪口を見せつけて煽る呪具師。魅力的な提案ではあったが、残念ながらそれには乗れない。
「あんたなら兎も角、俺は昼間から酒臭い息なんかしてられないですよ。………乾物だけ貰います」
そういって袋の中から裂いた鯣を一つ頂く。鬼月谷は内陸部にあるので川魚は食えるとしても海産物と言えば乾物ばかりであり、それだって俺達下人にとっては贅沢品だ。鯣自体は海産物の干物の中では値の張らない格下であるが、それでも口にするのは久し振りだった。うん、旨ぇ。
「連れねぇなぁ。まぁ、その分此方は多く飲めるか」
俺の返答に肩を竦めつつも安い御猪口に舶来酒を注いで呷る久賀猿次郎。そのまま空いた片手は麻袋に伸びて、塩味の利いた鹿の干し肉を摘まむ。俺もまたそれに続いて肉を頂き、そのまま俺達二人は詰まらない世間話に興じていた。
尤も、それも長くは続かない。少ししてこの細やかな楽しみは終わりを告げる。戸口を叩く音と共に聞き覚えのある声が俺に向けて入室を求める。俺はこの部屋の主人に視線を向ける。
「おう、構わんよ」
「恩に着ます。良いぞ、入れ」
部屋の主人の認可を受けて俺が入室を認めると、恭しく黒衣に面を着けた青年………下人が小屋に入ってくる。声質からして恐らくは朽弥であった。彼は俺と、次いで久賀に一礼した後口を開く。
「允職、伝言を御伝えに参りました」
「伝言?………頭殿からか?」
一瞬ゴリラ様からの呼びつけかと思ったが彼女なら白辺りをパシリにするだろう事に気付く。となれば態態俺を呼びつけるとなれば直属の上司たる頭職や助職くらいのものであり、可能性としては前者の可能性が高かった。
「はっ、頭殿より執務室に参上するようにとの事です」
「………了解した。直ぐに向かう。退室しろ」
「はっ!」
一瞬の沈黙の後に俺は部下に場を去るように命じる。気味の良い声と共に命令を受諾した朽弥は一礼した後立ち去った。
「仕事か?」
「恐らくは。近頃は妖の活動が活発ですからね」
呪具衆允の声に俺は答える。鬼月家に限らないが北土から東土にかけて妖による事件が緩やかに、しかし確実に増加の一途を辿っていた。個々の案件自体は小妖や中妖によるものであるが数が重なれば不覚を取る事もある。ノベル版ではより事細かく描写されているがどの家も散発する妖退治によって最初に下人衆や隠行衆に犠牲者が出始め、次いでその穴を埋めるために多忙となった退魔士達から不覚をとっての負傷者が出始めるのだ。
「という事はまた外勤か。何か入り用はあるか?」
「そうですね………」
俺は前世の記憶を、より正確には原作ゲームとその派生作品の設定を掘り起こしていく。そしてこの辺りで蠢く化け物の親玉の事を思い返すと念のために幾つか注文する。
「構わんが………また珍妙なものを発注するものだなお前さんは。そういう所は雑人だった頃と変わらねぇな。えぇ?」
怪訝な表情を浮かべてから、呆れたように呪具衆の允職は指摘する。俺は誤魔化すような苦笑いでそれに応じる。
雑人時代、俺は雛や鬼月家の他の面子に取り入るために前世の知識を総動員した。そして気付いたのだ。………一般的な現代人の持つ知識なんて役に立たなくね?と。
いや、現代人が全員無能とか、現代の教育制度が無意味と言いたい訳ではない。しかし何事も需要と供給なのだ。現代社会で必要な知識と教養が別の時代に、あるいは別の世界でも十全に役立つとは限らないのだ。
考えて見れば当たり前の話である。都会で暮らす現代人が畑仕事の仕方とか山菜の見つけ方なぞ学ぶ意味はない。義務教育の家庭科だってこの世界には電動ミシンも電気洗濯機もコンロすらないので何処まで役に立つかと言えば怪しい所、読み書きは公家に生まれたなら兎も角、農民なぞ小学生の中等レベルでも良いのだ。………いやまぁ、そのレベルすら怪しい奴も寒村ではかなりいたんだけど。おい代官、年貢の徴収量誤魔化して差分懐に入れようとするのやめーや。
困り果てた俺であるが、それでも幾つかは有益なアイデアを捻り出した。娯楽関係で。
ありとあらゆる娯楽に満ちていた前世は兎も角、この時代は娯楽も原始的だ。そこに俺の狙い目があった。
前世の記憶を基に幾つか玩具や娯楽、遊びを提案した。提案するだけでは意味がないので当時呪具師の見習いであった彼に暇潰しにそれらのアイデアを幾つか実際に作って貰った。雛の後ろ楯も利用して道具等の作成を依頼して、何なら彼個人の工夫も取り入れて造ったそれらの玩具類は期待以上の物であり、当時の俺の鬼月家への取り入りのための貴重なネタとなった。………まぁ、今となっては全部ぱぁなんだけどさ?
「まぁいいさ。俺もそのお陰で上に良い顔繋ぎも出来たし、中々役得もあったからな。今では雛の姫様の推薦で允職と来たもんさ」
くくく、と小さく笑い………しかし、その笑いを止めて呪具師は此方を見据える。
「俺はあの件についちゃあ詳しくは知らねぇ。だがよ、姫さんがお前を允職に推したのは事実なんだろう?だったら………」
久賀が言葉を止めたのは俺が手でそれを制したからだ。彼は若干憮然とした表情を浮かべる。
「裏切れなんざ言わんさ。だが、少しは歩み寄ってやった方が良いと思ったんだがな」
「姫様は別に贔屓で選んだ訳じゃないですよ。貴方だってご縁で選ばれたなんて思いたくないでしょう?」
「当たり前だ」
実際俺は知っている。彼が允職にあるのは原作でもそうだった。そして俺もまた………原作の彼女もまた、道理を通す人物だった。誰にでも平等だった。己の私情を堪える事が出来た人物だった。人格者だった。寧ろ、そんな彼女だからこそ俺なんぞでも允職に選んだのだろう。
「では………」
俺は自身の罪を、やらかしを振り払い部屋の戸口に向かう。呼ばれた以上は早く行かねばならなかった。しかし、背後からの声が今一度響くと俺は足を止めて踵を返す。背後を振り向く。
「ほれ、半分くらい持っていけ。干物なら幾分日持ちするからな」
職人は心底仕方なさそうな物言いで、麻袋の中身を巾着に移しかえるとそれを投げつける。俺は長年の妖退治で培った動体視力でそれを認め、受け取ると謝意を示すように一礼する。俺はそのまま再度戸口に向かい取っ手に触れて、しかしそこで彼の狙いを読み取ると、去り際に踵を返してこう問い掛けたのだった。
「それで?今度は土産に何を御所望で?」と………。
ーーーーーーーーーーーーーー
呪具師允の職場を立ち去り、俺は真っ直ぐにそこを訪れた。
「下人衆允、只今参上致しました」
俺は見慣れた下人衆頭の執務室に入室すると同時に膝を床についてそう答える。眼前には畳の上で筆を手に書き物を淡々とこなす男がいた。下人衆頭、鬼月思水………。
「……………」
「……………」
俺の言葉を無視するように暫しの間、頭は黙々と書類仕事を執り続ける。そして俺もまた微動だにせずに無言を貫く。思水はただただ文を読み取り、筆で署名をし、判子を押していく。そんな静けさの満ちた室内で俺は面の下から周囲を窺う。あの性格のきつい助職は今は不在のようであった。好都合だった。彼女がいると煩いし、話が無駄に面倒になるからだ。
「……………」
「……………さて、こんなものか?」
どれだけ経過しただろうか?幾分かしてから漸く思水は作業に節目がついたのか、その手を止め此方に視線を向けた。
左右で色合いの違う魔の瞳が俺を映し出す。それは同時に俺が彼に文字通り命を握られている事を示している。他の退魔士を相手するのも命懸けではあるが、やはりこの男は別格だ。予備動作もない。彼に視認される事は額に銃口を向けられるも同然で、少しでもその意思があれば俺は無残に死に絶える。………自身の命を握られている感触は何時まで経っても慣れるものではないな。
「やぁ、突然呼び出して済まないね。確か呪具衆の所にいたのだったかな?用事があったのなら邪魔をしたね」
「いえ、そのような事は御座いません」
思水の謝罪に対して俺は恭しく謙遜する。否、それは謝罪に見せかけた警告であった。恐らく思水は俺が呪具衆の一部から道具を受け取っている事に気づいている。ここで断罪しないのはあくまでもそれが鬼月家の益に繋がっているからに過ぎない。彼とて下人衆の人手不足も、俺の行動がその緩和に繋がっている事も承知しているのだろう。
………無論、これがあからさまに私利私欲のための行動であったら今頃俺は首を捻切られていた事であろう。
「ふむ、………さて、本題に入ろうか。允職に来て貰った理由は他でもない。新しい任のために備えて欲しいと思ってね」
「はっ、して内容は?」
「近頃妖被害が頻発しているからね。各地の退魔士家を動員して広範囲での駆除を行う事になる。取り敢えずは東西南北で四隊を用意して欲しい。それぞれに長たる一族の退魔士を一人、補助に一族の若手か家人を一人置く。そこにその他の要員を加えて編成する予定だ。下人衆は一班を宛てがう事になる。つまり計四班を用意してくれ」
内容は俺の想定の範囲内であった。そして同時に確信する。原作の始まりはもう目の前である事を。恐らくこれは原作にて壊滅した主人公の村に現れて、主人公を回収する鬼月家の率いる集団であった。
(確か、そこで雛と接触するのだったか?)
強い妖の気配を察知した雛が地獄のようになった村に現れる。そしてそこで主人公が妖共を打ち倒すまさにその瞬間を目撃する事になるのだ。
(ならば場合によっては介入も可能か?いや待て、落ち着け。下手な介入して失敗したら目も当てられねぇ)
一瞬原作介入を考えるが直ぐに案を保留する。
これまでのイレギュラーたる俺の行動が原作にどのような変化をもたらしたのか読みきれない。好きで介入したものばかりではないし、介入せねば自分がその場で死ぬ案件も多かったのも事実であるが、それでも不用意な介入と言われても仕方のないものもある。それ以前に無自覚に致命的な原作改変をしてしまっている可能性もあった。今は先ず堪えろ………!
「はっ。承知致しました」
兎も角、俺は思水の命を受諾する。深々と頭を下げる。そして思考は冷徹に今後の方針を構想していた。
(そうだな、先ずは情報を集めようか)
今ならば多少深掘りして聞き込みしたり人を動かしても然程不審には思われない筈だ。班の編成のための情報収集とでも言い訳出来る。
「あぁ。そうだ、君自身にも動いて貰うよ。隠行衆頭殿が長を務める予定の東討隊に編入する予定だ。各隊の編成はそれを考慮して行うように」
「……………」
おう。初っぱなから予定の大幅変更だな、こりゃ。………糞っ垂れが!!
新たな任を受けた俺が最初に足を運ぶのは下人衆の教練場でなければ詰所でもなかった。
いや、本来ならば部下達に真っ先に事を伝えて、必要な費用や物資の準備に各班の予定を確認して人員の選抜をするべきではあったのだが………残念ながらそれら実務的な仕事の前にやらねばならぬ事が俺にはあった。
対の内の人手は少ない。原作よりは丸くはなっているとは言え、それは比較した場合である。根本的に他人を信用せず、蔑んでいる。故に檜垣と切懸で囲まれた広い対の中は、調度によって絢爛豪華であるものの極端に人気は少なかった。特別な事がなければ内部にいるのは必要な最低限の人数で、仕事の大半は簡易式で代用する。
「姫様に面会をしたい。急ぎ取り次いでくれ」
門を潜った先、丁度渡殿で床や柱を雑巾拭きしていた人形の簡易式に向けて俺は声を掛ける。真っ黒で表情どころか顔すらなく、当然感情も自意識すらない人形は、その癖俺の言葉に生き生きとしたように頷いてそそくさと一旦その場を立ち去る。そして暫ししてから戻ってきてくいくいと俺を招き寄せた。
恐らくは「迷い家」とは別に独自に空間をねじ曲げているのだろう、明らかに敷地に比べて広い対の中を幾度も角を曲がって、談笑の声が漏れる障子の前に呼び寄せられる。障子の傍らには女中も雑人もいない。故に俺は自らそれを知らせる。
「姫様、下人衆允で御座います。お目通りを御願いしたく存じます」
恭しく礼をして、俺が申し出の言葉を口にするとピタリ、と障子の向こう側からの会話は途絶える。数瞬の沈黙………そして刹那の事だった。
「お入りなさい」
「うおっ!?」
その命と同時であった。突如として勢い良く引かれる障子、そして俺の身体は見えない力に引き摺られるようにして部屋の中へと跳びこむ。いや、飛び込む。
「きゃっ!?」
「危っ………!?」
幼い声音に、俺は自身が飛び込む先に小さな人影がある事に気付く。慌ててどうにかしようとするが空中で、しかも見えない力に引き寄せられているともなれば対応のしようもない。俺に出来るのは受け身の姿勢をとる事くらいで………。
「何をやっているの『澄影』。遊ばないの」
凍えるような殺気を乗せた言葉は呟くようで、しかし室内に嫌な程強く響いた。あるいはそれは一種の言霊術であったのかも知れない。何にせよ、それが俺を人か畳に突っ込む運命から掬い上げた。
『…………』
まるで無重力空間にいるかのように空中で固定されるように漂う俺は、しかし次の瞬間はっと壁に掛けられていた単が見えざる力にて床に敷かれると、万有引力によって木から落下する林檎の如くその上に叩き落とされる。顔面から床に突っ込む。
「うわっ………!?」
落下の衝撃で前後不覚になる俺は、頭を押さえながらゆっくりと上半身を起き上がらせる。甘い香りが鼻を擽る。香の薫りであった。桃のような甘い薫り………。
「あらあら、随分と皺が寄ったこと。これじゃあ使い物にならないわね」
「へっ………?」
直ぐ目の前で宣われる尊大な声音に俺は視線を向ける。目の前にいたのは桃色の髪の、幾重にも着込んだ着物の上からでも分かる肉感的な体つきの美少女であった。尊大で傲慢で高慢な笑みを浮かべる、俺の主人。地雷マシマシのゴリラ様。鬼月葵………。
「…………」
俺は先ず唖然として、次いで下を見る。敷かれていたのは絹地を桜の紋様で鮮やかに彩られた表着………当然ながらそれには滅茶苦茶に皺がよっていた。何なら少し唾でもついているかも知れない。
「…………」
俺は再度顔をあげる。鬼月の二の姫と視線が合う。にこりと微笑まれる。面の下では血の気の引いた青い顔をしていた事であろう。
「知ってるかしら?それ、三十両したのよ?」
余りにも残酷過ぎる宣言、当然ながら高貴な生まれの彼女が値段について口にする事は本来ならば非常に少なかった。それを口にする時は一つしかない。即ち………嫌がらせだ。
「………はは、冗談でしょう?」
思わず漏れた俺の言葉への返礼は、何処までも冷たく嗜虐的な笑みであった。獣が獲物に向ける笑顔であった。ははは、笑えねぇ………。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「いけないわねぇ。この紋様見てみなさいな。鮮やかでしょう?私の冬着なのよ。去年の春に橘の商会に注文して漸く来たの。絹糸に金糸に銀糸、実に美しいものよねぇ?」
そう宣いながら桃色の姫君は床に広がる装束を踏みつける。立ち上がった状態で、装束から太股まで見える裸足を覗かせて、俺の目の前で皺が出来る程に足の指で弄ぶ。
何ならその装束は未だに俺の敷物になっていた。どきようもなかった。慌てて退こうとしたら動くなと命じられてしまえば、それを翻すのは自殺行為に他ならない。故に俺は目と鼻の先で露わとなった彼女の裸足が嫌味のように装束をくしゃくしゃにする様を見せつけられていた。この足が次の瞬間俺の眼前に迫れば間違いなく俺の頭蓋骨は蹴鞠になるだろう。あるいはサッカーボールという方が適切かも知れない。
「……………」
「ふふふ、良い子ねぇ。私が命じていないから話さないのね?正解よ。許可してないのにあれこれ言い訳する馬鹿も多いから。それよりかは遥かに賢明よ?」
俺の沈黙の意味を見抜いてゴリラ様は俺をお褒めになられる。完全な皮肉であった。彼女の裸足が持ち上がり、俺の肩に添えられる。五本の足の指が、のたうつように俺の肩に食い込む。
「…………っ」
若干強い押しに、しかし俺は尚も無言を貫く。これは俺を試して遊んでいるのだと、長年の経験から理解していたから。下手に抵抗したり弁明して不興を買うのが一番危険だ。今の彼女がひょいと足を叩き落とせばそれだけで俺の肩は切り落とされる。あるいは横に振るわれて俺の頭は汚ねぇ花火になって壁に飛び散る。何にせよ、酷い死に方をする。落ち着け………落ち着け…………。
「貴方が何を考えているかくらい分かるわよ?今必死に考えているのでしょうねぇ、この状況をどうするべきか。どうやって私の機嫌を取れば良いのか、そうでしょう?」
すぅ、と足が更に上がる。肩を登って俺の首筋に添えられる。透き通る程に白い温かい少女の素足の、弾力のある触感はしかし、俺にとっては首筋に短刀を添えられているのと変わらなかった。いや、それよりも悪いだろう。
「………良いわよ。お口を開きなさいな。三十両を台無しにした言い訳、面白ければ許してあげる。但し、面白くなかったら………分かるわよね?」
ニチャリ、と艶かしい口元を歪ませて、ゴリラ様は仰る。獲物を狙う肉食獣の眼光だった。はてさて、どういうべきかね………。
「……………」
ちらり、と俺は視線だけを横に向ける。そわそわとしていて客人相手の貝合わせを命じられている白狐の少女は、しかし状況が状況なので全く遊びに身が入らないように思える。そしてそれは客人も同様だろう。誰が好き好んで人が肉団子になる姿が見たいものか。ましてや直見で。
「……………」
「っ………!」
俺が意識を外している事に勘づいて、ゴリラ様の素足が首元から俺の面に乗り換える。鼠径部が見えそうな位に足が上がった。足の爪で軽く俺の面を上から下に流す。足の癖に甘い香りがした。くすり、と姫君は笑う。
「さぁ、早く仰いなさいな」
「……………爪、伸びておりますよ?」
彼女の催促に、暫しの沈黙の後、取り敢えず俺は超至近から彼女の裸足を見た率直な感想を述べていた。
周囲を満たしたのは静寂であった。何処か気の抜けた雰囲気………視線を移す。目の前の姫君は何とも言えない表情を浮かべていた。期待外れ、しかし想定はしてなかったといった態度だ。
「………やっぱり貴方、才能がないわね?」
「いや、何の才能ですかね?」
「………道化?」
「何故疑問形なので?」
そんな会話をしている内に、いつの間にか眼前の娘から放たれる殺気は霧散していた。くすり、と再び笑う。今度は圧迫感はなかった。どちらかと言うと悪戯を終えた子供のようだった。
「まぁ良いわ。今回は『澄影』のがさつな仕事も悪いものね。………ふふふ、感謝なさい。私が慈悲深くなかったらどうなっていたのか分からないわよ?」
そう嘯き、俺の肩から裸足をどかす鬼月の二の姫。漸く俺は主人に命を握られた状態で行われるお小言から解放される。何処までも恩着せがましい言葉を添えて。
(雰囲気の微細な差異からして、十中八九は読んでいたが………)
おふざけであるとは分かっていたが、やはり生きた心地がしないな。新米だった頃なら失禁して、何なら失神してしまっていただろう。やっぱりパワハラは良くねぇわ。
「あぁ、『澄影』。貴方は後でお仕置きよ。覚悟しなさいな?」
何もない空間に向けて頬杖したゴリラ様は冷たい微笑みと共に嘯く。微かにクルクルクルという特徴的な唸り声が鳴り響いた。威嚇というよりかは怯えて竦みあがるような響きであった。
(あぁ、成る程。先程のはあいつか………)
ここに来てゴリラ様の言葉とここまで生じた事象、原作の知識、そして心の余裕から、漸く俺はこの事態を引き起こした犯人を断定する。
鬼月葵の従える三体の本道式が一体、不可視の幻妖である避役、与えられし名は『澄影』………その「舌」が俺を引き摺りこんだものの正体だ。
原作にて人の忠誠心を信用していない鬼月葵が潜入や情報収集、そして暗殺のために飼い慣らしていた大陸産のその怪物は高度な隠行術を使いこなし周囲の風景に完全に溶け込み、五感すらも欺く。その実力は下位の凶妖では気付けない程だ。作中ではルートによってゴリラ様の命で主人公を捕らえる役だったり、後ろから雛や御意見番、赤穂家の末娘を舌で突き殺す役回りを演じる。
………まぁ、御意見番の場合はいつの間にか式神にすり変わっているし、雛に至っては普通にそのまま復活して焼き殺されるのだが。赤穂の娘?あぁ、普通に死ぬよ?
「有り難き幸せです、姫様」
「そう思うのなら今後とも努力しなさいな。私の期待を裏切っちゃ駄目よ?」
色々理不尽を感じるものの、身分と立場の差から反発は不可能なので、俺は取り敢えず感謝の意を示す。ふっ、とそんな俺に小さく笑いながら鬼月の二の姫は鷹揚にそれを受け入れた。………まぁ、何処ぞの地雷しかない碧鬼の相手するよりはまだマシだわな。
「それで?何の用かしら?まさか私が恋しくてここを訪れた訳でもないのでしょう?」
「先程、下人衆頭殿より新たな命を受けました。近日中に出立する事になりますのでその御許しを頂きたく参った次第です」
「ふぅん、そう」
そう、俺がここに来たのは彼女の、ゴリラ様の認可を受けるためである。その辺りの指揮系統は結構怪しいのだが………俺は彼女の子飼いであるし、原作の彼女の性格からして伝えなければ何があるか知れたものではないので迅速に報告するに越した事はない。
「宇右衛門の叔父上が率いるのかしら?」
「はっ、良くご存知で………」
「私がそう促したもの」
「……………」
お前かい!!
「残念だけど私は留守居よ。去年の河童の騒動で御意見番に色々言われてしまったわ。代わりに貴方を何処に置くのかくらいは口出しさせて貰ったわよ?」
(おう、だからデ………宇右衛門と?嫌がらせかな?)
東西南北、其々に一隊を派遣される事は思水から聞いていた。その面子もだ。その派遣される遠征隊の中で一番の外れ枠に捩じ込まれた事自体は運が悪かったのだろうと思い諦めていたのだが………いや、待て。まさかお前が指名してたんかい!
待てやこら。絶対これ虐めだろ?謀ったな?謀ったんだな?俺に生まれの不幸でも呪っていろと?何ならこの世界に転生してから碌な目に遭ってないんだけど?生まれどころかずっと不幸なんだけど?何で人の不幸後押しするのかなぁ!!?
「あ、あの………旦那様がまたお出になられるのですか?」
俺が内心で罵りの言葉を吐いて嘆いていた刹那、背後からおどおどとしたそんな声が響く。
恐らくはそれは俺ではなくゴリラ様に向けてのものであったのだろう。しかし俺は思わず背後を振り向いていた。彼女が普通に接する分には比較的安全な人物だと分かっていたから。
そこにいたのは俺がこの部屋に連れ込まれる際に突っ込みかけた少女であった。俺がゴリラ様に弄ばれている間、暇潰しとして白と貝合わせに興じていた小さな姫君………。
彼女の名前は鬼月宇右衛門が夫人、鬼月小鼓。あるいは小鼓姫とも実家の家名から萩舟小鼓とも呼ばれる黒髪に黄金色の瞳をした碧い単を着込んだ幼い少女である。
………いや、原作プレイヤーからすれば「薬茶漬けロリ妻」や「NTR趣味転向器」、あるいは「お薬が切れたら自刎しちゃう人妻」、「プレイヤーの脳を破壊するNTRれ幼妻」とでも呼ぶべきだろうか。
ん?あぁ。ひょっとしなくてもこれらの物騒過ぎる異名の数々からして色々お察しの事であろう。鬼月小鼓、彼女はまさに何処ぞの赤穂家の末娘宜しく、プレイヤーを曇らせるためだけに創造されたような「闇夜の蛍」の不憫枠キャラクターであったのだから…………。
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