2.3日目「だいがくの講義」
あの日。
俺こと、
理由なんて、おかしくて摩訶不思議。これを俺の友達に言ってしまえば、息を吐くように笑われるような変なものだし、俺自身信じないのだろう。
でも、高校二年生の夏休みは——
退屈な日々を重ねる俺にとって、楽しくて、悲しくて、嬉しくて……色濃く映った綺麗な毎日だった。
そう、俺は————野生の巨乳ロリに出会ったのだ。
―――――――――――――――――――――――——————————————
「あ、あの……」
「——ん、どうかしたぁ?」
いやはや、心苦しいものだ。
札幌の国立大学と言えばすぐ出てくるかもしれないが一応、言わないようにしようと思う。
そして、その大きな講義室、数百人の大学生がいるこの場所で。どうして高校二年生の俺がこんなにも声を震わしているのか——その理由は一時間前まで遡れば説明できるだろうか……。
☆☆
「今日はどこか行くんですか?」
夏休みが始まって七日目。
そろそろ真音さんが居る生活に慣れてきた頃だった。初めて、彼女が外に出る準備を始めていた。普段はあまり見ない露出度が高い服を着ていて——といっても、まだ出会って七日目だが……まあいいだろう。
とにかく普段はあまり見ないような肩に穴の開いた変な服を着て、かなりチャラめなダメージジーンズを履いていた。
「……ん?」
「いや、だっていつも見ないような服着てるなーって」
というか、一体いつ服なんて持ってきたんだ?
買ったのかな……ただ、どちらでも俺には関係ないか。
「あぁ、今日からね大学行かないといけないんだよね……」
「え、そうなんですか? てっきり、真音さんも夏休みなのかなって思ってましたが」
「あーべつに、そうじゃないんだよ? あれだよあれ、なんかその……私さ、まだ大学二年生だから集中講義って言うのがあるんだよね」
「集中講義……?」
初めて聞く言葉に俺は首を傾げた。
「えっと、なんて言えばいいかな? ……んと、夏期講習的な感じ?」
「夏期講習……あの忌々しいやつですか」
「な、なんでそんな顔……そこまでかなっ」
「え、いやまぁ……休みなのに学校とか拷問なので」
「あははは……すっごい殺気だね。でもあれだよ? 一応、それやれば単位もらえるからこっちからしたら結構嬉しいんだよ?」
「学校行って嬉しいんですか……ビックリです」
「いやぁ……そこまで嫌いな方がびっくりだよ。部活もよく行ってるようだけど……もしかしていきたくない?」
「部活は行きたいですよ? でも授業は、ねぇ……」
「そ、そうか……」
あまり理解できないような表情で苦笑いをする真音さんだが、きっと勉強が好きな人種なのだろう。俺とは分かり合えないような人間だ。大体、国立大学に行ける時点でそりゃそうというか——自明の理か……。
「それで、あれかな、行きたいなら来る?」
「え?」
「ほら、来年受験でしょ? キャンパス……というか授業見に行くのもありじゃない? オーキャンもありだけど、こっちの方が分かりやすいだろうしさっ」
「俺、高校生ですよ?」
「だいじょぶだいじょぶっ! 私服だし、バレないよ!」
「え、でも——」
「つべこべ言わないで行ってみよう! ね、ほら、着替えてぇ~~!」
「うわっ、ちょ——やめっ⁉」
☆☆
——と言ったところだ。
俺の気持ちなんて考えないで連れてくるんだから、親に首根っこ噛まれて連れていかれる猫の気持ちだったぞ。
それにしても——
「何言ってるか、分からないんですが……」
「そりゃそうだっ! これ、ドイツ語だし?」
「なんで……せめて、僕理系なのでそっちの授業にしてくださいよ!」
「私、文系だもんっ」
「そんな……これじゃあまったく、退屈ですよ……」
二人で言い合っていると、周りから視線を感じる。
「あ」「え」
どうやら、教授さんが手を止めてこちらににらみを利かせていた。外国人の方のようだったが、さすが、イケメンで眼力も強い。高校生の俺からしたら怖いったらありゃしない。
「……Guten Morgen?」
一瞬、頭が硬直する。
しかし、直後にハッとして俺は答えた。
「……h,Hallo?」
俺が言って息を飲むと、真音さんが笑い出した。
「な、なんで——」
どうやら、その笑いは教授へいき、次には講義を受けている100人以上の生徒へ移り……俺のたった一言で講義室は笑いの渦に飲まれていった。
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