二話目 




 “俺がなんとかしてやる!”


 な〜んて言ったけど俺の総統室の机には机いっぱいの書類の山。見てるだけで頭痛がする。これを終わらせなくてはならない。書記官にしばかれるから。書記官エドワード・エリックに「我が旧友であるニコライを助けたい!今回は見逃してくれ!!」と言ったがやはり気難しいエドワードはそうも行かず「手伝いますのでやってください!」と言った。これは普段なら優しい方。しかし今なら鬼畜生。ぐぬぬ…と歯を食いしばり書類を前にする。

 早く終わらせよう。


 

 俺は知っていた。片脚を失った外交官ニコライ・トリビアは車椅子でも剣を振るっていること。彼自身も諦めきれないのだろう。そんな痛々しい背中を見つめることしか出来ない俺が俺は嫌いだった。溜め息をつく。俺はインカムの通話ボタンを押し、とある男に連絡を入れた。





「え!?俺ですかぁ!?」


 廊下に響く情けない俺の声。目の前の煙草を吸ってる情報管理部隊長クライ・クローバーは「うん。」と言った。

 部隊長は俺にC連邦国の偵察に行くように言うのだ。でもC連邦国ってあの、怖い国?偵察に行く理由は聞くまでもない。C連邦国は技術開発国。つまりニコライさんに用意する義足技師の偵察。しかしそんな理由でのこのこ偵察にいく訳にはいかない。一度戦争を行った国だし、Y帝国からきました。技師くださいなんて喧嘩売ってるのと同じこと。

 しかも、幹部の中で一番後輩の俺に頼んでるの?

「行ってこいよ、ビル・ガードナー?」

 わざわざフルネーム。俺は不貞腐れそっぽを向いて頬を膨らませた。腕を組んだ。

「ビルで結構です。」

「てことは?」

 てことは?って何だよ。

「行かせていただきます…。」

「そう来なくっちゃ!!!」

 面倒事がなくなり喜んでいる部隊長。くっそぉ…。書記官に訴えて書類増やしてやる。

「では、先輩俺の分の書類よろしくお願いします。一週間後提出なので。」

「えぇぇーー!!??」

 と叫ぶ部隊長を笑いながら支度した。書記官にチクってから出るとしよう。



 体は今だに痛い。背中とか痛い。脚はもう何も感じない。それが悔しくて仕方なかった。車椅子がギイギイ音を立てながら進む。仕方ない。書類をまとめるか。書記官の部屋に行って手伝うと伝えた。

「有り難い。よろしく頼むわぁ〜。ニコライ君は優秀だからね。ミスが少なくて助かるよ。」

 アハハと笑った。きっと愛想笑いだと気づかれただろう。仕方ない、そう割り切って書類を前にした。しかし諦めきれずあまり手が進まなかった。



 空はゾッとする程青く美しかった。


 

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