第2話 狂話

 この窓をガタガタと賑やかに揺らす霙は、僕に何を訴えているのだろう。

 自然の焦燥が家の中にまで伝わってきて、僕は少したじろいだ。


 僕は春が一番好きで秋が一番嫌いだと言ったが、冬は春の次に好きだ。その理由は、次に来る春が少しずつ近づいてくるのを感じられるから。

 冬なのに暖かい日は最高だ。


 だからそんなに苛立ちを顕わにせず、こちらに寄り添ってくれればいいのに。


 昔はよく、学校からの帰り道に毛糸の手袋で雪を丸めて雪玉を作り、友達と雪合戦をしながら帰ったものだ。

 毛糸の手袋は雪を触ると、雪がそのままくっついてだんだん手が大きな丸になってくる。

 そして溶けた冷たい水が沁みてきて、霜焼けになってしまうことがよくあった。


 毛糸の手袋に雪をくっつけて帰ると、母はいつも

「またこんなに雪つけて! 早く脱ぎなさい、霜焼けになるから!」

と僕から手袋を奪い、ストーブの前に置いた雪かき用の長靴置き場に手袋を置いて、乾かしてくれたものだ。


 さすがに大人になってからはそんな遊びはしなくなってしまったから、それで冬が怒っているのかもしれない。


 そんなに怒らなくても、僕は冬を忘れないし、春の次に好きな気持ちも変わらない。


 さぁ、冬さん。

 すぐそこまで来ているのはわかっているよ。

 

 ──冬さんこちら、てのなるほうへ──


 曇った窓ガラスがはまった窓を開けて、手を叩くと、冬が嬉しそうに静かになり、

「またボクと遊んでくれるの?」

と言ったように聞こえた。


 そんな冬の声なんて、大人になってからは聞くことがなかったけれど、子供の頃はよく聞いていたような気がする。


 それからしばらく、僕は冬と会話をしていた。

 いよいよ僕は頭がおかしくなってしまっただろうか。


 それでもいいや、と思った。

 少しくらいおかしい方が面白い文章を書けるし、僕に常識を求める友達などいないのだから。

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