二章 愛媛で喫茶店開こうか
第30話 未来は明るいぜっ!!
「休みだー!! けど休みじゃなーーい!!」
俺は家の床に寝っ転がりながら叫んだ。
会社は休み。というか元々土曜日だけど。
今月もあと2日で終わり、俺はもう出社しない。
大学卒業後ずっと欠かさず続けてきた出社ということをしないだけで、俺は謎のソワソワを感じてしまう。
「みゃーん」
俺がゴロゴロ転がっていると、飼い猫のイークアが肩辺りに乗っかってくる。
「おぉ、イークア引っ越しだぞ引っ越し。」
俺は起き上がって彼を持ち上げて言う。
猫には少し難しいのかイークアはきょとんとした目で自分の体をかき出した。
引っ越しって言ってもまだ引越し先が決まってないんだよなあ。
この家もあと2日で契約が切れるけど、すぐには居住人が見つからないからって大家さんのご厚意で、ちゃんと引越し先が見つかるまでは居させてもらえることになった。
でも甘えてばっかではいけないので、俺も新天地を探さなければならない。
「条件は、田舎っ!!! そこそこ便利!! そして土地が安い!!」
俺はビシッと指を空に向けて叫ぶ。
そんな好都合な土地があるのかと思うが、まあそこは日本は広いし、探せばどこかは見つかるだろう。
「やっぱ本州からは出てみたいよな。北海道……は寒いし。九州……は暑そう。沖縄は台風怖いし。ってなると残るはここだよな。」
俺はテーブルの上に手に持っていたとある雑誌を置く。
少し大きめのその雑誌には大きく、『四国』と書かれていた。
そう、四国。四国ってなんか良くない?
消去法で決めたし、その消去法も適当なイメージだからなんとも言えないけど、俺は昔から四国に悪いイメージを抱いたことがない。
まあ影は薄めだなとは思うけど。中国・四国地方でまとめられちゃってるし。近くに近畿あるし。
「四国は香川と高知と徳島。そして、愛媛っ!!」
どの地方かを適当に決めたんだ、県だって適当に選んでやらぁ。
愛媛、香川、高知、徳島
こう四県を並べていちばんカッコよくておしゃれなやつを選んだら、愛媛になった。
だってかっこよくね?
瀬戸内海のイメージもあるし、みかんとか美味しそうだし。本州に橋で行けるし。
「県までは正直どうでもいいんだよ。肝心なのはここから。」
俺はそう言いながらパソコンで愛媛の地図を開いた。
県は気候的なところは関係するけど、それ以外は正直どうでもいいんだ。
だって東京でも多摩は田舎だし。地方でも県庁所在地はそこそこに都会だから。
そう、肝心なのはここから。愛媛の中でどの地域を選ぶのか。
地域によって田舎さも都会さも変わるし、高低や人口密度。近くにスーパーがあるかなどなど。本当に暮らしに直結するのだ!!
だから俺は今回こそはちゃんと綿密に考えてしっかりくっきりや……………
……………りませーーーん!!!!
愛媛県の地図を見つめた俺はふと目を閉じて、
「ほぉいっ」
そんな軽い掛け声とともに適当に指を振りかざした。
『適当』その単語には適切にや適したという意味がある。しかし、今回俺が使ったのはそれとは真逆、チョーテキトーの方の適当だ。
そう。つまるところ本当に運任せ。気分で指を振り下ろした。
「さぁ、どうなったかなぁ」
俺はドキドキした気分で、目を開ける。
この地図は触ったところに黄色い色がつき、その市の詳細が浮かんでくるタイプ。
だからひと目見ただけで俺がどの市を選択したのかわかるわけだ。
「
伊予市………。
なるほど。
俺の指に指されていたのは、愛媛県の本州よりの真ん中らへんにある伊予市だった。
「名前的にはみかん美味しそうで良きだけど、どれ詳細見てみるか」
俺はどんなところなのかドキドキしながら、詳細のページを開く。
『伊予市。面積約200km²で、人口約30000人。削り節が有名で、国内シェアの6割を占めている。海水浴場などの伊予灘を観光資源としている。』
なるほど。上から見た地図を見る感じ、なかなかに良いところではないか。
都会過ぎず。かといって不便なほどに田舎ではない。
海も近いし夕日もキレイらしいし。うん気に入った。
「よしっ!!伊予市に決定!!」
俺は大きく頷いて、手に持った手帳に大きく『伊予』と記入する。
「よぉし、引越し先も決まったし、行くか。」
眠たげなイークアを持ち上げてベッドまで連れていきながら言う。
そう、決めて終わりではないのだ。
実際にそこに住んで喫茶店を開くのがゴール。
そこまでの道のりは短いようで長い。
まず伊予市に行き、物件を探す。いい感じのが見つかったら見学して、オッケーなら契約。その場所をある程度整えて喫茶店を開けるようにして、開店。
それ以外にも運転免許証取って車買わないとだし。あとは、喫茶店開くのなら最低限コーヒーを淹れるようになりたいし……。
何より結婚したい。お嫁さんほしい。幸せな家庭築いてみたい。
こうあげてみればきりがないほどにはやることが沢山なのだ。
ずっと大家さんに甘えてるわけにも行かないし、まずは行かないとだよな。
「そうと決まれば行くしかない! いざゆかん!!」
俺はイークアを起こさないように小さめの声でそう叫んだ。
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