春の隣

あの道を進むと

朝日が見えるらしい

風邪を引いてしまったからね

三年ぐらい前に


恋をすれば

時間の速さが変わるらしい

きっと春も

三拍子でやってくる


全部冬に置いていくのさ

焚火のはぜる音も

木々の芽吹く香りも

野イチゴの不思議な味も

氷に閉ざして

未来に流して


季節の約束からすれば

ずっと春はそばで待っている

疑うのに疲れた頭で

思い出せるのは

梅の花びらが舞って

光っていたこと


渦巻きが途切れずに

窓の外を埋める

飛び出して走れば

どこまで行けるだろう

ずっとその勇気がないままに

春を迎えられずにいる


せめて恋をする相手がいれば

傷つけ合う相手でもいい

スピーカーでもいい

ビー玉でもいい



春が来ないなんて

知らなかった

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