7.戦略的ツンデレ 【Side Nanase】

「なんなんですか、先輩は! 十年前と全然違うじゃないですか! もっとこう、異性に対して優しく接するべきです!」


 取り残された社会科準備室で私は一人毒を吐いていた。まあ、出ていった理由は紳士さが滲み出ていて嬉しかったけど。


「んにゃぁぁぁぁっ!」


 そう叫んで、私はご飯を掻き込んだ。


 どうにかして、先輩を振り向かせられないだろうか。


七咲ななさきさん? 大丈夫?」


 廊下からひょこっと顔だけを出してきた先輩の友人。名前は、えっと……。


「あ、円谷尚文ね」


 どうやら察したらしく円谷尚文つぶらやなおふみと名乗った先輩は胸をに手を当て自己紹介してくれた。


「円谷先輩。先輩のタイプってなんですか?」

「えっと、先輩っていうのは雅太まさたのこと?」

「あ、はい」

「うーん」


 顎に手を当てて低く呻いた。しかし、地声が高いので男子高校生の呻き声には聞こえない。


「あ、ツンデレとか?」

「ツンデレ、ですか?」


 あのぶっきらぼうで無愛想な先輩が、ツンデレ好き!? 想像できない……。


「うん。あ、でも雅太本人から聞いたわけじゃないよ? なんていうかさぁ、雅太ってあんなでしょ? だから女の子に免疫ついてないんだよね」

「そうなんですか」

「だから女の子とどう接していいか分からないんだ。だから、わざとツンツンしたりして雅太の気を引かせる。どう?」

「いいですね。ありがとうございます!」


 私は空の弁当箱を持って社会科準備室を後にした。

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