AH-project #9 「作戦会議+本番」
作戦提案者ヒラダ
謎の生命体を体に巣食わせる女子高生ウニ
ただの会社の同僚オザキ
その三人が食卓テーブルを囲んで座っていた。
その食卓の真ん中にはナマコみたいな形のブドウが転がっていた。
「…カナタ救出作戦?」
「そう、カナタ君を助けるための計画。」
「ヒラダ、ガチだな~」
オザキが面白おかしそうなに話した。
ヒラダはこそばゆい気持ちを咳払いで晴らしてから話始めた。
「えっとまず”柘植研究所”、どのくらい知ってる?」
二人とも首を振る。
「それじゃあそこから説明するか」
そうするとヒラダはスマホをスッと机の上に出した。
その画面には、柘植研究所の検索画面が出ていた。
「柘植研究所っていうのは化学・物理学・生物学、そして宇宙天文学、それぞれの分野で活躍した日本を誇る科学者たちが集結し、結成された、日本最大規模の科学センターだ。」
「へぇ~俺全然知らなかったけど、最近作られた感じ?」
「いや、創設されてから30年以上は経ってるみたい。」
「結構長いんですね。」
「さらに凄いのが、
「「…国認!?」」
ウニさんとオザキの声がハモった。
国認というは、政府が産業発展への貢献が期待できる企業を手厚くサポートしてくれる特別な権利だ。
官営化などではなく国が認めるということだ。
この権利は確立してから数十年経つが、未だ4社しか獲得できてないとても凄いものだ。
「でも国認だったらって何が出来るんだ?研究費用の負担とかか?」
「…確かウニさん、警察と柘植研究所が繋がってる的な話をしてたと思うんだけど…
研究所が国に協力を呼び掛けて、警察を動かしてるんじゃないかなって…」
「国認ってスゲェんだな~ 」
オザキが頭の後ろで手を組み、伸びをしながら言った。
「いや可能性があるってだけだ、話を作戦に戻す。」
「あのっ ほかに研究所に関する情報ってないんですか?」
「えっと、柘植研究所の内部構造なんだがあの研究所、一階が化学フロア、二階が物理フロア、三階が宇宙・天文学フロア、そして地下一階に生物フロアって感じになっているみたいなんだ。」
「私地下一階の部屋に監禁された…てことは、生物フロアの人間が私のことを狙ってるのか。」
「逆に考えれば、その生物フロアにカナタ君も居そうだな。」
これでみんなの中で大まかな目的地が定まった。
「で、どうやって救出するんだ?」
「やっぱり夜襲が妥当なんじゃないか?
ブドウの力があれば侵入も容易だろうし、研究所って言っても所詮仕事場だ。
夜中になればみんな退勤してほとんどいなくなる。」
三人は目を見合わせて、頷いた。
「いつ決行しますか?」
「早くカナタ君を開放してやりたい、夜中二時に仕掛けよう。
何か質問とか意見あるか?ウニさん、オザキ」
「は~い」
オザキが手を挙げた。
「ウニちゃんはブドウ君で攻撃とか破壊を担当するのは想像出来んだけど、俺とお前の役割って何なんだ?」
「お前には車で待っててもらおうと思ってたんだが?」
「えっ!?それじっしつ不参加じゃん!?」
(なんでショック受けてんだよ…。)
「いや、流石に危険な役は頼めないよ。で俺はカナタ君の捜索とウニさんのサポート」
「…お前戦えるのか?」
「大丈夫大丈夫」
全く根拠は無いが、自信があった。
「ウニさんはなんかある?」
「いえ特には。」
「まとめると、今夜二時に俺とウニさんは研究所地下一階を奇襲し、カナタ君を助け、オザキの元に行き、退散する。これでいいか?」
「OK!」
「わかりました!」
「それじゃあ、それこれにて作戦会議終了!」
怒涛の勢いで説明してしまったが、とりあえずみんな理解してくれたみたいだ。
ーーーーーーーーーーーー
「いや~ さすがに緊張するな~」
とハンドルを握っているオザキは笑顔で言う。
「お前から微塵も緊張感を感じないんだが…」
なんでお前はそんなに緊張感がないんだよ…
スペックが高いとこういう状況でも平然と出来るのか?
それに対して俺は、とても緊張していた。
特攻っていうのは言わば一発勝負。
二回目が来るなんて思わない方がいい。
カナタ君を救出できなかったというのは許されない。
気を引きしていかなくては。
「ウニちゃんは大丈夫?ブドウはしっかりしてる?」
「はい、ブドウはいつも通りです。
私は…とりあえず大丈夫です」
ウニさんは笑顔でそう言ってくれたが、明らかに作り笑いだった。
「大丈夫だよウニさん!俺たちが絶対にカナタ君を助けるから!」
「そうだそうだ!俺は車で待ってるだけだけど、三人が無事戻ってくることを神に祈ってるから!」
俺とオザキはウニさんを必死に励ました。
「でも、もしまたブドウが動かなくなったらって思うと……」
「その時は俺がコイツでぶち破ってやる!」
ヒラダは持っている金属バットをカンカンと手で鳴らした。
多分壁とか壊すのは不可能だろけど、まぁ脅し・攻撃用としてはちょうどいい。
「あっそれとオザキ」
ヒラダはヒソヒソ声で言った。
「もし五時になっても俺たちが戻ってこなかった時は、俺たちを置いてって離れてくれ」
ハッとした表情して横目でこちらを見つめてくる。
が、その後ゆっくりと頷いた。
ナビに従い進んでいくと車は森の中へと入った。
月明かりでかすかに見えていた外の景色が、どんどん闇へと変わっていく。
車のヘッドライトだけが頼りと言っても過言じゃないくらい真っ暗だ。
「…ン?」
「ウニさんどうした?」
「いや、何でもないです…」
「?」
多分、ブドウが脳内に話しかけてきたのだろう。
鬱蒼とした道の途中に、ライトが大きな石を照らし出した。
「あっ!これです!」
ウニさんが指差したその石には『柘植研究所』と彫られていた。
暗くて気付けてなかったが、道が分岐していた。
目的地である。
その道を通ると、目的のものが目に入った。
森の中、素材の分からない白い壁の建物。
森に対して景観ガン無視デザインの”柘植研究所”があった。
「それじゃあここで待つよ」
研究所前で車を停めたオザキが車内から手を振って見送ってくれた。
「それじゃあ…行くか!」
「……はい!」
ヒラダは右手にバット、左手に懐中電灯を握り、ウニさんは右手にブドウを
周りが森っていうのもあるだろうが、夜の研究所は閑静としていた。
自動ドア越しに中を確認するが、照明は付いてない。
「…よし、叩け!」
これを合図にウニさんはブドウを纏った右手で自動ドアのガラスを殴り砕いた。
バリィィン! という激しい音がしたが誰も来ない。
ヒラダの予想通り、研究員は居ないとみえた。
「行くぞ」
ヒラダとウニさんはエントランスホールを通り、地下に続く階段に直行した。
(もしかして楽勝かぁ?)
この時ヒラダは順調に進むプランに少し心浮ついた。
しかしすぐに失せた。
階段を下りた先に白衣を着た大柄な男が立っていた。
(クソ さすがに警備している奴はいるか。
だが連絡される前に倒せば!)
そう考えた瞬間、大柄な男は手を大きく振り始めた。
「よぉ 数日ぶりだな。」
低い声でそう言ってきた。
「…ッ!?」
「ん?ウニさんどうした?」
「あの人…」
「誘拐犯のうちの一人です。」
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