第238話 脱出

 ごおおおおおおおおおお……



 【リヴイアサン】による作戦の合図からしばらくすると女王の部屋にまで地響きが鳴り渡り、部屋がガタガタと揺れ始めた。


「――くっ! 何だこれは!?」


 流石の女王もこれには動揺が隠せないようで、俺の分身など目もくれずにスマホを持って扉の元迄駆け出した。


「【1】は出払っているし【3】も城外……【2】はまだいるか。地下の水源には……メロウが1匹。監視エリアへの侵入があったにも関わらずこれに知らせがこないなんて……くそ、所詮は人間の作った玩具ということかっ!」


 女王がスマホをぎゅっと握り締めると、バリッというプラスチックの割れるような音が鳴った。


 女王の怒りの具合がよく見てとれる。


 ――ばんっ!


「おい【2】よ! すぐ地下の水源へ向かい、小汚ないメロウ、鼠を1匹殺してこいっ!」

「ですがここの守りは――」

「メロウ1匹殺すのに時間はかからんだろう? 仕事を片したら直ぐ様ここに戻ってこい!」

「了解しました」


 勢い良く開いた扉を遠目に【2】がその場から去った事を確認すると、俺は扉が閉まる前に慌てて『瞬脚』を使った。


 ここを逃せば次に部屋を出られる隙は、外の誰かがここまで攻めてきたとき。

 【1】の強さはメロウの団体だけでどうにか出きる相手とは思えないし、そんな隙はないものと思ったほうがいい。


 だからといって女王が今の俺よりも強いのは明白。

 戦うなんて事は出来ない。


 逃げるチャンスは今しかない。


「――届け」


 女王の扉を閉める手は思いの外遅いが、それでも滑り込めるかギリギリのタイミング。


 俺は祈るように扉の隙間に飛び込んで身体をねじ込んだ。


「――出れ、た」


 地面に肩や膝を強打しながらも、なんとか女王の部屋を抜け出す事に成功した。


 【2】がリヴイアサンの元に向かったのは気がかりだけど、とにかく俺の1番の仕事はこの場からの撤退。


 進化の薬さえ外から持ってくれば、この状況を打破して、シードンを全滅、目的のアイテムの入手も可能になる。



 ――『瞬脚』



 俺はすかさず『瞬脚』を使って城の外を目指した。


 恐らくはメア達が唄で【1】の足止めをしてくれているはず、さっきの地響きによって出来た隙でメア達も上手い事撤退出来ていればいいのだけど……。


『こちらリヴイアサン。そっちの様子はどうだ?』

『女王の部屋からは抜け出せました。あとは外の【1】と【3】さえなんとか出来ればってところです』

『そうか。こっちもなんとかなりそうだ。もう1度……いや、次はもっと派手に仕掛ける。お前はそのタイミングでメロウ達と共に上層へ逃げろ』

『分かりました。でもリヴイアサンはそのあとどうするつもりなんです――』

『今の我ならその状況下で逃げるくらいわけない。安心しろ』

『……健闘を祈ります』

『そっちもな。薬、忘れるんじゃないぞ』


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