第178話 得意な奴
「「てうーっ!!!」」
「や、ちょ、今は、いっ!!」
アルジャンとルージュが胸に飛び込んでくると、痛みが走った。
心配してくれていたのは分かるし、嬉しいが、今はそおっとして欲しいな。
「「ばがーっ!」」
「っ!! ごめんな。辛い事頼んじゃって……」
俺は2人の頭を撫でながら謝罪の言葉を紡いだ。
「あの後その2人はずっと泣きじゃくって、泣きすぎて疲れたのか今の今まで眠っていたんだけど……もう元気一杯みたいね」
「そうみたいだな。俺だけじゃなくてこっちの分にも世話をかけたみたいで……ありがとう。ごめんな」
「べ、別に相手た部屋で寝かせてただけだから大したことはしていないわ」
「うーん。彼女達は人質の価値があるとかなんとか言い訳しながら、慌ただしく2人に出来るだけ上等な部屋を用意しろとか、アロマを準備しろとか……妾はメアがモンスターペアレントにでもなったのかと思ったぞ」
「ふふっ……」
セレネ様の言葉にくすりと笑うアルジャン達と一緒に部屋に入ってきた女性。
メアはそんな女性に苛立ちを覚えたのか鋭い眼光で睨みつけた。
「す、すみません。それでは私は失礼いたします」
そそくさと退室していった女性だが、後でメアに怒鳴られたりしないといいのだが。
「メア、新しくレベルの高いシーサーペントを与えるのはいいが、それでもレベル上げは時間が掛かるぞ。実は最近レベル上げに適しているフロアに新しくモンスターが住み着いてな……」
「えっ……。それは初めて聞きました。新しいモンスターって……」
「それはだな……まぁ倒せん事はないのだが」
セレナ様は勿体ぶるように食卓に置かれた生肉を見た。
えっ。もしかして……。
「モンスターの名前は『シードン』。こいつらはレベル上げに適したモンスター『シェルプリースト』の生息地にまで生活範囲を広げているのだ」
「『シードン』。私でも初めて聞くモンスター」
「そうだろう。本来妾達よりもより深い階層に居るはずのモンスターで、決して交わらないはずだった。だが、元々の繁殖力が高い所為なのか、それとも種を繁栄に導くような存在が生まれてしまったか……とにかく数を増やしてしまってな」
増えすぎた『シードン』はより安全な浅いフロアに進出し始めたか。
もしこれが続けば、このダンジョンは『シードン』で溢れ、最悪の場合……。
あれこれ、俺達にとっても深刻な事が起こってるんじゃないか?
「それで『シードン』の存在がレベル上げの妨げになるというのは……もしかしてレベル上げに適した、えーっと『シェルプリースト』? を捕食するようなモンスターだからですか?」
「ほう、察しがいいな。まぁ、『シェルプリースト』を捕食するだけなら良かったのだが、それが原因で『シードン』達のレベルが上がり過ぎてな。今はまだ知能で上回る妾達『メロウ』より格下のモンスターなのだが、いつこれが脅威になる事か……」
食物連鎖の構図が今書き換わろうされているらしい。
ここにその肉があるという事は討伐隊などが組まれ、民衆に心配が広がらないように対処してはいるらしいが……。
セレネ様の反応を見るに芳しくはないのだろう。
「しかも『シードン』はタフで獰猛。正直今は上層でコツコツレベル上げをするしかないだろうな」
「そんな……」
メアは申し訳なさそうに俺を見た。
別にそんな風に俺を見なくても、悪いのはメアじゃないだろ。
「それにしてもタフですか。それHPが多いってことですか?」
「いや、防御力が高いだけだ。HPはそこまでではない。奴らは岩のような強靭な筋肉を持っているからな」
防御力が高くてHPが少ないか……。
うーん。それって俺が一番得意な奴なんじゃないか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。